秋は忙しい。しかも今年は特別だ。天皇御在位20周年を記念して大規模な特別展が目白押しに加えて、西国三十三所のご開帳もある。この週末は関西に出かけ、昨日(土曜日)は和歌山県立博物館と大阪の『道教の美術』を見て、今日は札所めぐりに専念した。
■西国第二十番 西山宮門跡 善峯寺(京都市西京区)
前日は大阪泊。大阪~京都間に位置する善峯寺には、絶好のアクセスと思われた。ところが、JR向日町駅から出ている善峯寺行きの阪急バスは、9:14が始発(日曜ダイヤ)。これだと善峯寺に着くのが10時近くになってしまう。拝観は8時からOKなのに…。そこで、往路のみ、JR向日町駅からタクシーを利用(20分、約1800円)。
まだ参拝客の少ない朝のお堂をゆっくり参拝。中央のお厨子におさめられたご本尊は、全身が淡い金色に輝く千手観音。丸みを帯びたお顔に優しい微笑を浮かべている。腰から下は物陰に隠れていたが、上半身はよく見えて、まあ満足。ふと見ると、左右の鴨居の上に風神・雷神の姿が。ということは、お厨子のまわりを囲んでいるのは二十八部衆か。脇侍は毘沙門天と不動明王。
やや手前の左右にも、2つのお厨子が据えられており、左は未敷蓮華を手にした細身の聖観音。右は本尊と同じ千手観音立像で、開山の源算上人自刻と伝える。ご本尊が華やかで親しみやすいお顔立ちなのに比べて、こちらはスマートで静謐な印象。黒い木目のご本体と金色の宝冠・光背の対比が美しい。
寺宝館(文殊堂、9:00~)では、期待していた『大元帥明王図』は見られなかったが、富岡鉄斎の金地彩色屏風や、京焼(古清水)が楽しめた。始発バスで到着した参拝客の集団と入れ替わりに、次の札所へ。
■西国第二十一番 菩提山穴太寺(あなおじ=あのうじ)(京都府亀岡市)
向日町駅→京都経由→亀岡駅。バスで穴太寺へ(アクセス詳細)。ここは、慶雲年間、大伴古麻呂創建と伝える古刹である。大伴古麻呂といえば、唐の朝廷において、日本の席次が「西の二番」だったものを「東の一番」に変えさせたエピソードで知られる(続日本紀)。
本堂には、中央の鏡(!)を挟んで、左にご本尊、右に御前立ち(どちらも聖観音)のお厨子。しかし、正面は垂れ幕でガードされていて、ほとんど何も見えない。信仰は信仰として、これで特別拝観料500円(庭園込み)を取るかなあ。逆U字型の切れ込みから垣間見た限りでは、ご本尊も御前立ちも、比較的新しそうだった。Wikiで調べたら、鎌倉時代の木造聖観音立像(重要文化財)は「1968年11月に盗難に遭い、未発見である」とのこと。これがもとのご本尊だったのだろうか。
本堂右手奥の薄暗い一角には、布団をかけてもらって、気持ちよさそうな寝釈迦(釈迦涅槃像)がいらっしゃる。参拝者が近づくと自動的に明かりが点るのだが、リアルにお休みのところを邪魔したようで、ハッとする。病気平癒を願う者は、わざわざ布団をめくって、釈迦像のお体に触れるというのも可笑しい。
■西国第十四番 長等山園城寺(三井寺)(滋賀県大津市)
穴太寺のご開帳が今ひとつ納得できなかったので、このまま帰るのも惜しいと思い、もう1ヵ所、寄っていくことにした。亀岡→二条→地下鉄東西線~京阪乗入れを利用して大津へ。京都も便利になったものだ。
特別拝観の入口には、ご本尊・如意輪観音の等身大(?)写真が貼られていた。ええ~、これはまた大胆…アイドル扱いだなあ。200円払って奥に進むと、まさにその如意輪観音にお会いすることができる。垂れ幕で適度に隠されているが、お顔はきちんと見えるので満足。膝を立てた足の先が、ちょうど幕の間から見えるのが、妙に色っぽかったりする。このご本尊には、サントリー美術館の『国宝 三井寺展』でお会いしているはずなのだが、本当に同じものか、自信がもてなくて、お寺の方にお聞きしてみた。「そうです、出陳されてます」という答えをいただいて、やっと安心した。あのときは、美術品として前後左右からじっくり鑑賞させていただいたが、こうやって「仏」と「参拝者」として向き合うと、また違った趣きがある。
3つ目となる浄土の鳥「鸚鵡」をGET。近江の札所はあと3ヵ所。
↓左:鸚鵡(三井寺)、孔雀(石山寺)、舎利(竹生島)。
※おまけ:『観音霊験記:三国三十三所』(国際日本文化研究センター)
http://www.nichibun.ac.jp/graphicversion/dbase/reikenki/saigoku/
■西国第二十番 西山宮門跡 善峯寺(京都市西京区)
前日は大阪泊。大阪~京都間に位置する善峯寺には、絶好のアクセスと思われた。ところが、JR向日町駅から出ている善峯寺行きの阪急バスは、9:14が始発(日曜ダイヤ)。これだと善峯寺に着くのが10時近くになってしまう。拝観は8時からOKなのに…。そこで、往路のみ、JR向日町駅からタクシーを利用(20分、約1800円)。
まだ参拝客の少ない朝のお堂をゆっくり参拝。中央のお厨子におさめられたご本尊は、全身が淡い金色に輝く千手観音。丸みを帯びたお顔に優しい微笑を浮かべている。腰から下は物陰に隠れていたが、上半身はよく見えて、まあ満足。ふと見ると、左右の鴨居の上に風神・雷神の姿が。ということは、お厨子のまわりを囲んでいるのは二十八部衆か。脇侍は毘沙門天と不動明王。
やや手前の左右にも、2つのお厨子が据えられており、左は未敷蓮華を手にした細身の聖観音。右は本尊と同じ千手観音立像で、開山の源算上人自刻と伝える。ご本尊が華やかで親しみやすいお顔立ちなのに比べて、こちらはスマートで静謐な印象。黒い木目のご本体と金色の宝冠・光背の対比が美しい。
寺宝館(文殊堂、9:00~)では、期待していた『大元帥明王図』は見られなかったが、富岡鉄斎の金地彩色屏風や、京焼(古清水)が楽しめた。始発バスで到着した参拝客の集団と入れ替わりに、次の札所へ。
■西国第二十一番 菩提山穴太寺(あなおじ=あのうじ)(京都府亀岡市)
向日町駅→京都経由→亀岡駅。バスで穴太寺へ(アクセス詳細)。ここは、慶雲年間、大伴古麻呂創建と伝える古刹である。大伴古麻呂といえば、唐の朝廷において、日本の席次が「西の二番」だったものを「東の一番」に変えさせたエピソードで知られる(続日本紀)。
本堂には、中央の鏡(!)を挟んで、左にご本尊、右に御前立ち(どちらも聖観音)のお厨子。しかし、正面は垂れ幕でガードされていて、ほとんど何も見えない。信仰は信仰として、これで特別拝観料500円(庭園込み)を取るかなあ。逆U字型の切れ込みから垣間見た限りでは、ご本尊も御前立ちも、比較的新しそうだった。Wikiで調べたら、鎌倉時代の木造聖観音立像(重要文化財)は「1968年11月に盗難に遭い、未発見である」とのこと。これがもとのご本尊だったのだろうか。
本堂右手奥の薄暗い一角には、布団をかけてもらって、気持ちよさそうな寝釈迦(釈迦涅槃像)がいらっしゃる。参拝者が近づくと自動的に明かりが点るのだが、リアルにお休みのところを邪魔したようで、ハッとする。病気平癒を願う者は、わざわざ布団をめくって、釈迦像のお体に触れるというのも可笑しい。
■西国第十四番 長等山園城寺(三井寺)(滋賀県大津市)
穴太寺のご開帳が今ひとつ納得できなかったので、このまま帰るのも惜しいと思い、もう1ヵ所、寄っていくことにした。亀岡→二条→地下鉄東西線~京阪乗入れを利用して大津へ。京都も便利になったものだ。
特別拝観の入口には、ご本尊・如意輪観音の等身大(?)写真が貼られていた。ええ~、これはまた大胆…アイドル扱いだなあ。200円払って奥に進むと、まさにその如意輪観音にお会いすることができる。垂れ幕で適度に隠されているが、お顔はきちんと見えるので満足。膝を立てた足の先が、ちょうど幕の間から見えるのが、妙に色っぽかったりする。このご本尊には、サントリー美術館の『国宝 三井寺展』でお会いしているはずなのだが、本当に同じものか、自信がもてなくて、お寺の方にお聞きしてみた。「そうです、出陳されてます」という答えをいただいて、やっと安心した。あのときは、美術品として前後左右からじっくり鑑賞させていただいたが、こうやって「仏」と「参拝者」として向き合うと、また違った趣きがある。
3つ目となる浄土の鳥「鸚鵡」をGET。近江の札所はあと3ヵ所。
↓左:鸚鵡(三井寺)、孔雀(石山寺)、舎利(竹生島)。
※おまけ:『観音霊験記:三国三十三所』(国際日本文化研究センター)
http://www.nichibun.ac.jp/graphicversion/dbase/reikenki/saigoku/