見もの・読みもの日記

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近江巡礼と若冲の旅(2):岩間寺、大津市歴史博物館

2009-10-19 19:57:30 | 行ったもの(美術館・見仏)
■西国第十二番 岩間山正法寺(岩間寺)(滋賀県大津市)

 そもそも、この週末(10/17-18)の札所めぐりを思い立ったのは、京都在住の友人から、毎月17日(ご縁日)に限り、岩間山行きの直通バスが運行される、と聞き及んだからである。私と同様、この情報に動かされて東京から出てきた友人と、石山駅前で合流、ほぼ満員のバスに乗車。長い山道を上がって、門前に到着した。

 本堂は、緑の山を背景に、昼下がりの通り雨に濡れた檜皮葺きの屋根が、つややかに黒光りして美しい。内陣に入ると、三重の入れ子になったお厨子の扉が全て開いている。中央には、わずか15センチほどのご本尊(千手観音)。幔幕やお供え物で隠したりしないところが良心的だが、とにかく小さいので、正面ににじり寄っても、印象がはっきりしない。隣りに置かれた拡大写真と見比べて、なんとか納得する。

 ところで、私はこの岩間寺で、近江(滋賀県内)の西国札所6ヶ所を参拝完了。近江札所限定の「土鈴・浄土の鳥」もコンプリートになるはずだった。ところが、どこにも見当たらないので、お守り授受所のおばちゃんに「あの、浄土の鳥は…?」と聞いてみたら、「ごめんね!今日、ぜんぶ売り切れちゃったの。2、3日すれば入るから、また来てね」と笑顔でおっしゃる。えええ~、私、関東人なんですよぉ。「いつまで、あるんですか?」とお訊ねしたら、「たぶん12月までは…。そのあとは、他のお寺さんと相談してみないと分からないから…」とのこと。友人とふたり、肩を落として「もう帰ろうか…」ということで、予定より1台早い下山バスに乗り込む。

※左より、迦陵頻伽(長命寺)、鸚鵡(園城寺)、孔雀(石山寺)、舎利(宝厳寺)、共命之鳥(観音正寺)。


大津市歴史博物館 第50回企画展『湖都大津 社寺の名宝』(2009年10月10日~11月23日)

 バスの車中で、もうひとり、東京から来ている友人とめぐり会い、気を取り直して3人で大津市歴史博物館に向かう。以前から気になっていた博物館だが、訪ねるのは初めて。現在の企画展は、超有名寺院の延暦寺や園城寺から、知る人ぞ知る古刹まで、大津の社寺の名宝を一堂に集めたもので、バラエティに富み、見応えがあった。特によかったのは仏画。園城寺(三井寺)の『仏涅槃図』(室町時代)は、大津絵みたいなユーモアが感じられた。西教寺の『迅雲阿弥陀来迎図』(鎌倉時代)は、「迅雲」の名に恥じず、スピード感にあふれる。延暦寺の『普賢延命像』(室町時代)は、四頭一身の背の高い白象が凛々しくてカッコいい! 蓮華座に乗った普賢菩薩は、茫洋として、中国の皇帝みたいな顔つき。

 仏像では、いま、山を下ってきたばかりの正法寺(岩間寺)から、ほぼ等身大の『婆藪仙人立像』が出陳されていた。午前中の観音正寺で、千手観音の脇侍に婆藪仙人と吉祥天を配するのは、ほかに岩間寺など、という話を聞いたのに、岩間寺の本堂にお姿がなかったので、おかしいなあ、と思っていたのだ。園城寺の『訶梨帝母倚像』は、何度か見ているが、母性を写実的に表現した名品。一方、『陶製宇賀神像』は、なんだこれは…という珍品で、とぐろを巻く蛇の胴体に老人の顔が載っている。水木しげるの世界みたいだ。建部大社所蔵の女神像・男神像もいい。

 ちなみに、この展覧会は「湖信会」(大津の神社と寺院が観光面で協力しあう団体)の結成50周年を祝う企画でもあるそうだ。観光社寺、侮るべからず。ハンディな展示図録『湖都大津 社寺の名宝』には、湖信会十社寺の観光案内も載っている。この図録と、会場内のパネルのイラストは誰が描いたのかなあ。かわいくて、分かりやすくて、とってもいい。

 近江八幡の駅前で、3人で夕食。そのあと、それぞれのホテルに散った(さらに続く)。
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