見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

浄土庭園も見どころ/曼荼羅展(金沢文庫)

2008-05-23 19:10:02 | 行ったもの(美術館・見仏)
○神奈川県立金沢文庫 特別展『曼荼羅(まんだら)~つどうほとけたち~』

http://www.planet.pref.kanagawa.jp/city/kanazawa.htm

 曼荼羅とは、密教経典の記述に従ってほとけを配置し、ほとけの世界を可視的にしたもの。金沢文庫に隣接する称名寺は真言律宗のお寺であるから、当然、曼荼羅とは縁が深い。本展は、金沢文庫に伝わる密教図像集や関連文書と、近隣寺院に伝わる各種の曼荼羅を展示するもの。一時期、神奈川県民だった私には、旧知の寺院の名が多かった。

 1階には、同じ京急沿線の弘明寺から、鉈彫りの十一面観音がおいでになっていた。童子のような、平べったい顔。作為なく、ちょっと首をかしげたような感じが愛らしい。周りの展示ケースは暗幕で目隠しされていたが、照明の消えたケースの中に、ここ金沢文庫(称名寺)で見慣れた宋風の十一面観音が蔵されていたのに、ちょっとびっくり。

 2階が曼荼羅展。ほとけの姿を並べた金剛界・胎蔵界の「両界曼荼羅」のほか、「三昧耶曼荼羅」(さまやまんだら、諸仏の姿を法輪や金剛杵などのシンボルで表したもの)、「種字曼荼羅」(諸仏の姿を梵字一字で表したもの)などがあることを知った。さらに「別尊曼荼羅」というのは、大日如来以外の一尊を抽出し、中心に据えたもの。私は「仏画」と呼んでいたが、密教的には一尊でも「曼荼羅」なのだな。逗子の神武寺の『大威徳明王図』を久しぶりに見た。黒ずんでおどろおどろしい鎌倉時代の古本と、明快な色彩の江戸時代の摸本がある。

 めずらしかったのは、象頭人身がいっぱい集合した『歓喜天曼荼羅』(南北朝時代→つくづく変な時代!!)。『五秘密菩薩』(鎌倉時代)は、金剛薩埵を中央に、4人いや4尊が、記念写真よろしく寄り添ったもの。変な構図だと思ったが、タネ本(密教の図像抄)のとおりなのである。この2件と『両界曼荼羅』(鎌倉時代)の計3件は、神奈川県立近代美術館からの出陳。何故に近代美術館が?不思議だ…。

 もうひとつ驚いたのは、称名寺の庭園の池に架かっていた反橋(太鼓橋)が撤去されていたこと。記憶をたどると、むかしはこの橋、開園時間内なら渡れたと思う。いつの頃からか老朽化して渡れなくなり、目を楽しませるため、朱塗りの派手な姿になった。それが、何があったのか、スポンと無くなっていたのだ。代わりに、山門側から池の中央に向かって、平たい桟橋が突き出しているが、向こう岸には届いていない。橋による分断がなくなった池は、急にひろびろして、浄土庭園の面影がよみがえった気もする。新緑に映える黄菖蒲が美しかった。
コメント (1)
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