goo blog サービス終了のお知らせ 

見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

都路華香展/東京国立近代美術館

2007-01-23 23:42:08 | 行ったもの(美術館・見仏)
○東京国立近代美術館 『都路華香(つじ・かこう)展』

http://www.momat.go.jp/

 年末に近美の『揺らぐ近代-日本画と洋画のはざまに』を見に行ったとき、京都の近代美術館で開かれていた『都路華香展』のポスターを見た。いま、近美のサイトに上がっている、ぽわ~とした達磨大師の図である。全く知らない名前だったので、かえって印象に残った。そのあと、立ち読みした『芸術新潮』に「京都画壇の隠しダマ」(?)と評されていて、なるほど、と思った。

 近美のサイトによれば、都路華香(つじ・かこう、1871-1931)は京都画壇を代表する作家でありながら、「今や知る人ぞ知る存在」だという。理由の1つには、「主要な作品が散逸し各所に秘蔵されていたという事情」があるそうだ。でも、なぜ散逸したり、秘蔵されるものが多かったのかについては説明がない。ただ、海外で愛され、アメリカに多くの作品が所蔵されているというのは、実物を見ると、分かる気がする。

 華香には、ひろびろした空間を描いた作品が多い。有名な「緑波」「良夜」など。「吉野の桜」や「松の月」も、桜や松を描いているように見せて、実は作者と景物の間にひろがる、すがすがしい空間が画題なのではないかと思う。「良夜」2幅は手前に広い川面を、遠景に長い石橋を描いた作品。はじめ、近代の鉄橋かと思ったら、そうではなくて、衣冠を整えた官人が馬に乗って渡っていく姿があった。古代中国の光景らしい。

 「春雪図」「雪中水禽図」の水鳥の愛らしさ、「祇園祭礼図」の大胆な構図などは、すぐに京都琳派の神坂雪佳を思い出させる。昭和の「水牛図」は、はっきりした色合いがステンシル絵本みたいだ。

 朝鮮旅行に取材した「萬年台の夕」「東莱里の朝」「金剛門」、それから「閑庭春興図」は私のお気に入りになった。高い精神性と平易な装飾性が融合した姿は、同時代のイギリス絵画に通じるように思う。いや、もっと卑近な表現をすると、古さと新しさの同居を、私は「大正っぽいなあ」と感ずるのである。

 会場で興味深かったのは、完成作品のほかに、多数の写生帖が展示されていたこと。引き出し式の展示ケースでは、20冊余りの写生帖を見ることができ、その中の1つに長沢蘆雪の(落款の)模写を見つけたときは、ちょっと嬉しかった。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする