goo blog サービス終了のお知らせ 

見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

新春の寿ぎ/三井記念美術館

2007-01-21 21:41:18 | 行ったもの(美術館・見仏)
○三井記念美術館 企画展『新春の寿ぎ-国宝 雪松図・卯花墻を中心に-』

http://www.mitsui-museum.jp/index2.html

 三井家旧蔵の名品で寿ぐお正月。本展の「見もの」国宝2点は、2005年10月の開館記念特別展にも出品されていたはずだが、そのときは見逃してしまったので、今回が初見になる。

 第1展示室は、例によって茶道具から。私はこの美術館の茶道具コレクションがわりと好きだ。素人にも分かりやすいものが多いように思う。今回、気に入ったのは「織部分銅香合」。つややかな深緑がいいなあ。それから「十二支腰霰平丸釜」。たっぷり餡のつまった大福みたいな茶釜である。光悦作の黒楽茶碗「雨雲」を見るのは3度目。黒茶碗と言いながら、周囲は釉薬を無造作に刷いた程度で、灰色の素地が広く覗いている。特に口のまわりはゴツゴツした岩肌のようだ。垂直に近い側面、スパッと切り落としたような口が魅力的である。

 国宝の志野茶碗「銘・卯花墻(うのはながき)」は、別室にこの1件だけ、特別待遇で飾られていた。ぽってりした厚手の地。ゆがみが大きいので、展示ケースのまわりを一回りしてみると、いろいろに姿を変える(ホントは手の中で回して鑑賞するのだろうけど)。全体に白砂糖のような釉が掛けられていて、焦げ目のような濃茶の線がアクセントになっている。なんだか、”美味しそう”な茶碗だと思った。

 応挙の「雪松図」には、あまり感心しなかった。昨年『応挙と蘆雪』展で、たくさん彼の傑作を見てしまったせいかもしれない。それから、明治大正の工芸を楽しみ(アールヌーボーふうの薩摩焼「色絵瓜形鉢」とか)、新収資料の「放屁合戦絵巻」(室町時代)に驚く。「鳥獣戯画」にもこんな場面があったし、「福富草紙」の例もあるし、日本人ってよほど放屁譚が好きだったんだなあ。本村町三井家からの寄贈だそうだ。

 最後に、2003~2005年に制作された、楽吉左衛門氏と永楽善五郎氏の作品が、つつましやかに並んでいた。かたや2006年秋の『赤と黒の芸術-楽茶碗』で取り上げられた楽家の御当代、かたや同年春の『京焼の名工~永楽保全・和全~』で取り上げられた永楽家の御当代である。私は、永楽善五郎氏の「交趾竹水指」が気に入った。鮮やかな緑と群青の竹を配した円筒型の水指である。三井家って、過去の「豪商」「財閥」時代だけでなく、今なお、こうした芸術家や工芸家のパトロン(いい意味で)なんだなあ、と思い、感心してしまった。金を稼ぐだけの企業が増えても、社会は豊かになりませんね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする