見もの・読みもの日記

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力を抜いて/前略仲正先生、ご相談があります

2006-12-14 23:06:37 | 読んだもの(書籍)
○仲正昌樹『前略仲正先生、ご相談があります』 イプシロン出版企画 2007.1

 元ネタは、雑誌「ダ・カーポ」に連載された「時事相談」というコラム(知らなかったけど)。憲法改正、小泉改革、格差社会などの政治問題から、細木数子はなぜ怒ってばかりいるのか?、みのもんたは引退を考えないのか?などの芸能ネタまで、読者からの質問をベースに、インタビューアー(ライター)に著者が答えたものである。

 仲正先生、売れてるなあ。ジャーナリズム的には、右とも左ともつかないスタンスが使いやすいのかなあ、と思う。でも、ちゃんとした学者なんですよね。前作『ラディカリズムの果てに』で、新書やエッセイばかり読んでいるようでは駄目だ、自分の著作でも、本当に読んで欲しいのは『モデルネの葛藤』(御茶の水書房 2001)のような専門書である、という趣旨のことを書いていらして、なかなか硬派な発言をするな、と思った。でも、結局、著者が「読んで欲しい」という本は敷居が高くて、結局、こういう軽いエッセイにばかり手を出してしまうのである。ごめんなさい。

 著者は「あとがき」で、この本は「気を抜いた仕事」であると述べ、かつ「気を抜いた仕事」が持つ意義(エクリチュールからの疎外を回避する)を、哲学者らしく解説している。

 しかし、冒頭の「護憲」と「愛国心」の問題とか、「A級戦犯」という用語が引きこす誤解についての解説を読むと、気は抜いていても、手は抜いていない。事実の上に、明晰な分析を施していて、読み得である。ちなみに、戦犯には、A級=平和に対する罪、B級=通常戦争犯罪、C級=人道に対する罪があるが、これはカテゴリー分類であって、等級ではない。中国や韓国の反日デモ参加者は、心情的には、通常戦争犯罪=残虐行為を憤っているはずで、A級戦犯合祀を云々することには論理的齟齬がある由。なるほど。恥ずかしながら、知りませんでした。
コメント
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