このところ、たびたび我が家にオーディオの試聴にお見えになるお客さんたち。
それぞれのご意見が実にありがたくいつも参考にさせてもらっているが、まったくの“鵜呑み”というわけにもいかず最終的な取捨選択はひとえに自分にかかっている。
揺るがぬ信念のもとに的確な判断が出来るといいのだが、現実にはそうもいかない(笑)。
本音を言わせてもらうと、昔からあまり自分の耳に絶大の信頼を置いているわけではない。そういう意味では永遠に「ストレイ シープ」なのである。そういうときに日頃から頼りにしているのが常用しているオーディオ機器の「ブランド」。
どなたにも衣食住の全般にわたって、「これさえ使っていればひとまず安心」という「信頼のブランド」が何かあるに違いないが、趣味のオーディオもその例に漏れない。端的に言えば性能と精神安定剤が両立したようなものかな。
自分が長年にわたって使ってきた中でタンノイとかJBLとかの有名ブランドは別にして、比較的小物とされる真空管などを含めて強く印象に残っているものといえば、イギリス勢では「グッドマン」「STC」「GEC」「ムラード」でこれらの銘柄はすべてハズレがなくて満足のいくものばかりだった。そういえば、いずれも相当古い年代のものばかり!
アメリカ勢では言わずと知れた「WE」(ウェスタン)、「RCA」がそう。
そしてドイツ勢では「シーメンス」と「テレフンケン」。「テレフンケン」は有名ブランドのため贋作が多く真空管では「ダイヤ<>マーク」と言われる管底の刻印があれば間違いは無いようだ。刻印なしのやたらに綺麗なプリントは逆に怪しいらしい。
ほかにも自分が知らないだけで沢山信頼のブランドがあるのだろうが、現時点では以上に尽きる。
さて、そのうちドイツの「シーメンス」だが2年半ほど前に病院で心臓の画像診断を受けたときに現代科学の粋を極めた最新鋭の巨大な撮影機器の正面に誇らしげに「SIEMENS」のエンブレムがあったのを思い出す。
ウィキペディアによると、
シーメンス(Siemens AG )は、ドイツのバイエルン州ミュンヘンに本社を置く多国籍企業。06年の連結売上高は873億ユーロ、約14兆円。連結純利益は303億ユーロ、約5000億円。もともと電信、電車、電子機器の製造会社から発展し、現在では情報通信、電力関連、交通、医療、防衛、生産設備、家電製品等の分野で製造、およびシステム・ソリューション事業を幅広く手がけるコングロマリットである。
強いて言えば日本における東芝(連結売上高6兆円)と日立(同9兆円)を合わせたような存在といえようか。
このシーメンス製の真空管やコンデンサーだが、これまでのところまったく期待を裏切られたことがない。他のブランドと比べて段違いに性能が飛び抜けているというわけでもないが、最後はこれにしてホットひと息つくパターンが非常に多い。
もちろん「無事これ名馬」という丈夫さと長寿命の側面も持っている。ちなみに現在使っているプリやパワーアンプの「12AT7」「12AU7」の電圧増幅管はすべてシーメンス製。
そして、このほどシーメンス・ブランドとして新たに購入したのが次のコンデンサー。
左側がこれまで使ってきたスプラグのビタミンQで、右側が該当のシーメンスのメタライズされたコンデンサー。数値はいずれも「0.22μF(マイクロ・ファラッド)」で、我が家ではプリアンプ用の「カップリング・コンデンサー」としてずっと使っている。
「カップリング・コンデンサー」とは、一言でいえば「直流電圧をカットして信号交流電圧を伝える役目」を持っている。
その性能によってアンプの音質が大きく左右されるほどのもっとも重要なコンデンサーなので銘柄をいろいろ交換して試しやすいように我が家のプリアンプでは、写真のように該当の回路部分を特別に外側へとわざわざ引っ張り出してもらっている。こんなことをするとハム音が心配だがどうやら無事通過。Mさん(奈良)、いつも“ありがとうさん”です~!
こういうところは、まさに真空管アンプならではの愉しみ方である。
さて、これまでは極小値のマイカコンデンサーにスプラグの「ビタミンQ」をパラって噛ませてきたが、音質にまったく不満はなかったものの、そこはそれ、マニアの常で「もっといい音を」と冒険心を出して、今回お気に入りのシーメンスを新たに購入して「ビタミンQ」と入れ替えたところこれが大成功!
まったく違和感のない自然な音とでもいえばいいのだろうか。明らかに音の佇まいが向上している。
あまりにも気に入ったものだから、さらにオークションで2セット(4本)追加購入してしまった。急がないと品切れにでもなったら大変。
今度はネットワーク用として、第二システム及び第三システムのJBL075(ツィーター)をローカットするために他のコンデンサーと併せて追加挿入しているがこれも大満足。音の鮮度が一段と上がった気がする。
とにかく性能に満足すると憑りついたように執念深く追いかけて使い切るのが自分のクセだが、この場合安価なので、ま、いっか(笑)。