16日の午前10時45分ごろ、大分県九重町の鳴子川渓谷にかかる「九重”夢”大吊橋」から男性が手すりを乗り越えて飛び降りてしまった。初めての自殺者である。
同吊橋は全長390m、川床からの高さ173mと歩行者専用としては日本一で昨年10月の開通以来訪れた観光客は50万人を超え関係者にとっては予想以上の大盛況で喜びもひとしおといったところに、やや水をさされた感じである。自殺の名所なんかで有名になるのは是非避けたいところだ。
同吊橋の建設者である九重町は隣接する町との合併を県の強力な指導にもかかわらず頑強に拒み通し、周囲の冷たい視線のもとで財源の捻出に苦労しながらやっとの思いで完成にこぎつけた経緯がある。
自殺防止用の新たな対策などはハードの面からはまず不可能だろう。当面、16日の営業は中止、17日から再開して橋の上を巡回するスタッフの増強で対処する方針のようである。
自殺するのはご本人の自由なのだが、何も遠くから来てよりによって何故こんなところでと思っていたところ、17日付の地元新聞の朝刊で自殺者の身元が判明した。
近隣のO市の52歳の高校教諭で、「学校に行く」と家族に言い残して家を出たそうで、病気のため昨年12月から6ヶ月間の休暇届を出していたという。学校とはまるっきり方向の違う場所なのでよほど思いつめての行動のようだ。
どういう事情があるか詳細は不明だが、自殺者が生徒に物事を正しく教える立場にある学校の先生ということが気にかかる。そういえば近年、ノイローゼになる先生が増加傾向にあるそうだ。また、ストレス発散のためか不祥事も多い。
校長、教頭などからの強圧的な指導、同僚との摩擦、聞分けのない生徒達、何でも学校の責任にする父兄、PTAなどが四つ重なれば文字通りの四面楚歌である。これに家庭の不和などが加われば先生といえどもひとたまりもあるまい。
先生に限らず、人間には意外ともろい面があるのでいざというときの拠り所が必要な気がする。伸びきったゴムが用を足さないことで分かるように、日ごろから心のゆとりを持つ工夫が大切だ。
その意味で、何でもいいから熱中できる趣味を見つけておくことは遠回りのようだが最後には大きな味方となって役に立ってくれるので決して無駄な投資ではないと思う。