「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

良質の製品を生む時代背景

2022年04月01日 | オーディオ談義

普段からあまり意識したことはないものの、改めて我が家のオーディオを眺めてみると音の入り口のCDシステムやDACを除いて、真空管アンプやスピーカーなどは古い年代のものばかり。

これでは「懐古趣味」といわれても仕方がない(笑)。


いつぞやに読んだ「クラシックの核心」(片山 杜秀著)の13頁に「音楽というのは記憶と刷り込み」という記述があって、小さい頃に音楽を聴いたときの環境による印象が大人になっても持続するとあったが、まったくその通りで「サウンドだって記憶と刷り込み」なので幼い頃に親しんだ当時の音がいまだに耳(脳)に焼き付いて離れない。

「三つ子の魂百までも」で瑞々しい感覚の思い出は無意識のうちにずっと根を張りながら育っていく、となると良くも悪くも真空管アンプと英国製のスピーカーの組み合わせになってしまう・・。


で、肝心なのは現代の製品に比べて音がいいかどうか。

こればかりは好き好きなので何とも言えないが、我が家にたびたび試聴にお見えになるオーディオ仲間が一番気に入っているのがスピーカーではグッドマンの「AXIOM80」。

彼に言わせると、
「このSPで聴くとホッとして何だか故郷に戻ったような気がします。どうして科学技術が進展した現代においてAXIOM80のようなスピーカーが作れないんでしょう?」

「それは本気で作る気になればできるんでしょうが、まずもって採算に合わないでしょうよ。残念なことにオーディオ人口が減るばかりですからね。需要がないのに意気込んで作っても空回りするだけでしょう」

やはり、いい製品が出てくるにはそれなりの時代背景が必要のようでして~。

たとえば、
1920年代のアメリカを覗いてみよう。ネットから引用させてもらうと、

「第一次世界大戦の特需にアメリカは大いに沸いた。アメリカ経済は空前の大繁栄をとげ、戦前の債務国から世界最大の債権国に発展した。世界経済の中心はロンドンからニューヨークのウォール街に移った。大衆の生活は大量生産・大量消費の生活様式が確立する。

一般には<黄金の20年代>と呼ばれ自家用車やラジオ、洗濯機、冷蔵庫等の家電製品が普及した。1920年には女性への参政権が与えられるようになった。ベーブルースによる野球人気やチャップリンの映画、黒人音楽のジャズなどのアメリカ的な文化が開花した。一方で1919年に制定された禁酒法によってアル・カポネなどのギャングが夜の帝王として街を支配するようになった。」と、ある。

1929年になるとあの有名な「大恐慌」が起きるので「うたかたの夢」だったろうが、アメリカにとっては現代のように諸外国との軋轢もないし、テロの不安もないし「1920年代」が一番良き時代だったのかもしれない。

ちなみに戦争特需の効果はとても大きいみたいで、日本だって朝鮮戦争の特需のおかげで経済が目覚ましい復興を遂げたのだから戦争には別の側面があることに気付かされる。

このたびのウクライナ侵攻も古くなった兵器の処理と軍の近代化、軍需産業の振興といった側面があるやもしれない。


さて、当時の活況を呈した時代において家電製品のキーデバイスとなるのが真空管だった。したがって、その需要に応じて雨後の竹の子のように製造メーカーが乱立し、激しく覇権を争った事は想像に難くない。良質の製品はこういう厳しい競争の中から生まれていく。

したがって、1920年代から1940年代にかけて作られた真空管が音がいいとされているのもむべなるかな。


結局、真空管にしろスピーカーにしろ良質の製品を生むにはそれなりの「時代背景」が必要のようだと思うが、どうなんだろう・・。


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