昨年7月(2017年)の筑後地方の大雨災害以降、ずっと音信不通だったオーディオ仲間のKさん(福岡)。
古典管収集の熱心さにかけては人後に落ちない方だが、「もしかしてひどく落胆されているのではあるまいか」と、ずっと遠慮していたが半年以上にもなると流石に心配になったので「お元気にされてますか?」と一報を入れたところ「水に浸ったクルマの修理や腰痛などでたいへんでしたがようやく一段落です。幸い古典管の被害はありませんでした。オーディオの方は相変わらずです。」とのことでひと安心。
Kさんとの交流はブログが取り持つ縁で始まったが、貴重な古典管の情報を山ほどお持ちの方なのでたいへん重宝させてもらい、それにお互いに「AXIOM80」の大の愛好家というのが接点となった経緯がある。
この度も希少管を手に入れられたと伺って、「それはぜひ聴かせてください」ということになり、去る9日(金)、久しぶりに遠路我が家に試聴にお見えになることになった。
我が家のシステムは、いつものことながらこの半年余りで激変しているので、どういうご感想を漏らされるかたいへん興味深い(笑)。
お見えになった日はあれほど厳しかった寒さもようやく和らぎ、春の足音がそこはかとなく近づいてくるような見事な快晴に恵まれた絶好のドライブ日和だった。
当日は4時間半ほどにわたってみっちり聴いていただいたが、結果からいえば今回の試聴のポイントは次のようなものだった。
☆ 出力管「ヨーロッパ製の300B」と「WE300B」(1951年製)との聴き比べ
☆ 整流管「STCの4300A」と「シルヴァニアの274B」との聴き比べ
☆ 我が家の4系統のスピーカーの品定め
☆ 往年の女流ヴァイオリニスト「ジョコンダ・デ・ヴィート」の名演を聴く
最初に聴いていただいたシステムは我が家のベストともいえる「PP5/400シングルアンプ」と「AXIOM80」(最初期版)との組み合わせだった。
「AXIOM80」の独特の音質についてはもう言わずもがなだが、Kさんともども「聴けば聴くほど深みにはまってしまいます。汲めども汲めども尽きせぬ泉のような魅力を放ちますね。オーディオ人生をかけるのにふさわしいスピーカーですよ。」と、完全に意見が一致。
しかし、「じゃじゃ馬」という噂がある通り、鳴らし方が難しくて下手すると高音域がやたらにキャンキャンするなど、家庭で単なる飾り物になっているケースも多いと聞く。実にもったいない限り(笑)。
Kさん曰く「長いことAXIOM80を弄ってきましたが、さすがにウッドホーンに容れることには気が付きませんでしたよ。」
「はい、これだとバッフルにネジ止め(4か所)しなくて済むので、ユニットのフレームの歪みから完全に解放されますからね。」
音質にも十分ご満足していただいたようでまずは無難な滑り出し(笑)。
次に「WE300Bシングル」アンプの試聴に移った。
このアンプのインターステージトランスには「北国の真空管博士」が絶賛される「UTCのHA-106」(アメリカ)が使われているが、このアンプと「AXIOM80」との相性が良くないことは先月(1月)のブログ「オーディオ愛好家のご来訪~2018・1・8~」で、述べた通り。
そこで、スピーカーを我が家で唯一の3ウェイシステムに変更した。このほど完成したばかりで、先日他のオーディオ仲間たちから絶賛を浴びたシステムである。
Kさんはすぐに中音域に使っているドイツ製の楕円形ユニットが「イソフォン」製だと気づかれた。
「これはまぎれもなくイソフォンの音ですね。我が家にも3セットありますが、とてもクリヤーでいい響きです。それにしても3ウェイでこんなにバランスがいい音を聴くのは久しぶりです。ブログをずっと読んでいましたが、想像した以上にいい音ですよ。」と、これまたOK。
そして、いよいよKさんが持参された「ヨーロッパ製の300B」(以下、「ヨーロッパ管」)との比較試聴に移った。
さあ、我が家の「WE300B(1951年製)」と「ヨーロッパ管」との一騎打ちである。
ちなみに、300B真空管はメチャ人気がある球なので本家本元のWE(ウェスタン)以外にも、とても種類が多く、中国製、ロシア製、チェコ製、ドイツ製とあり、しかも国ごとにブランドが分立しているので枚挙にいとまがないほどだ。
えっ、「ドイツ製の300Bって、そんなのあったかな?」
それがあるんですよ!これについては、Kさんから耳よりの情報が入ったのでのちほど詳述しよう。
なお、今回の試聴の対象となったヨーロッパ管は、巷でもとても評判が良くて従前からWE300Bの音質にもっとも近いと噂されている真空管である。
お値段は10万円に届かない金額なので、オリジナルのWE300B(1951年製の相場は程度にもよるが50万円前後)に比べれば、少々音質が劣ったとしてもお買い得感は抜群だ。
はたして両者の音質の差はどの程度のものなのか、言い換えるとこのヨーロッパ管がオリジナルにどのくらい肉薄できるのか、二人とも興味津々で耳を傾けた。
以下続く。