「今日の1時過ぎにお伺いしたいのですがご都合いかがですか?Mさんと一緒ですが・・・。」と、Nさんからご連絡があったのは、粉雪が舞う2月3日(土)のことだった。
「ハイ、結構ですよ~。丁度新しく3ウェイシステムを組み立てたばかりで、ぜひ聴いていただきたいと思ってたところです。」
奇しくも、1年前のこの日はNさんと一緒になって、下記の画像のワーフェデールが入っている箱(黒色)を二人で作った日だった。音響効果を考えてネジを1本も使わず接着剤(ボンド)だけで張り合わせており、板厚も1.5cmと薄めのものを使って箱を共振させる方向で作っている。
また、バッフルは鬼目ナットにより簡単に入れ替えができるようにしているのでとても便利がいい。JBLの「D123」(16Ω:グレイ)、グッドマンの「AXIOM150マークⅡ」と、いずれも口径30センチのユニットが控えている。
今のところ、水彩画の趣があるワーフェデール(赤帯マグネット)の魅力にはまっているので変えるつもりはない。
その新しい3ウェイシステムだが(構成は前回のブログで述べたので省略)持ち主が言うのも何だがまったく惚れ惚れするような音で、どこと言ってケチのつけようがなく、初めからこれほど完成度の高い音はわが家のオーディオの歴史上きわめて珍しいことである。
普通、どんなに「いい音」が出ても少し経つと、どこかしら不満な点が出てくるものだがこのシステムに限ってはますます「ほんとにええ音やなあ。」と感嘆することしきりで、思わずブログの更新を忘れるほどだった(笑)。
個人の家庭でクラシック音楽を楽しむのならこれで十分だと思うが、とはいえ、自分だけ悦に入っても所詮は当事者であり外部の審判員がどう判断するかは興味のあるところで、できるだけたくさんの人に聴いてもらい冷静な評価を待ちたいところ。
そういう意味で今回の試聴会は願ってもないチャンスになるが、いつも遠慮なくずけずけと辛口に終始する仲間たちなので半分は警戒心、残りの半分は期待感で胸が弾む(笑)。
そういえばNさんとMさんは、つい先日「オーディオ訪問記~2018・1・25~」でお伺いしたばかりの方たちで、それぞれ「アルテックのA5」と「タンノイ・オートグラフ」を愛用されており、いずれもレコードの再生にこだわりながらご自宅の音にひとかたならぬ自信を持っておられる。
我が家にお見えになるたびにシステムのどこかが変わっているので「実に熱心ですねえ!」と、皮肉とも感嘆ともつかない言葉を漏らされるが、今回もそうだった。
そこで、素直に真に受けて「ハイ、才能は無いんですけど熱意だけは誰にも負けないつもりです。」と返答しておいた(笑)。
今回試聴していただいたアンプは順番に次のとおり。
☆ 「WE300B」シングルアンプ(モノ×2台)
前段管の一次「E80CC」(フィリップス)、前段管の二次「MH4」(メッシュプレート:マルコーニ)、出力管「WE300B」(1988年製)、整流管「VT-244」(レイセオン)
☆ 「PP5/400」シングルアンプ
前段管「GSX-112」(トリタンフィラメント)、出力管「PP5/400」(最初期版)、整流管「378」(ムラード:直熱管仕様)
☆ 「WE300B」シングルアンプ
前段管「171」(トリタンフィラメント)、出力管「WE300B」(1951年製)、整流管「274B」(シルヴァニア)、厚さ2.5㎜の銅板シャーシ
持ち主が言うのも何だが(今回はこのフレーズが多い~笑~)、古典管に詳しい方ならお分かりのとおり、まず滅多なことでは手に入らない超「希少管」ばかりである。
「古典管のいったいどこがいいのか、近代管では悪いのか。」と、色をなして詰め寄られても困るが、結局、音の品位とか、雰囲気感や音色の艶など主観的かつ抽象的な部分に繋がるわけで、これはもう「わかる人にはわかる」としか言いようがない。
同じブロガーとして他人のオーディオブログを拝見することがよくあるが、スピーカーにはたいへん凝って豪勢なものを使っておられる反面、真空管の選択ともなると実に「おざなり」で「もったいない」と思うケースが多々ある。
ただし、自分も4年前ぐらいはそうだったのであまり大きなことは言えない。こればかりは古典管に詳しい人と仲良くなって教えを請うしかない。
なお、これらアンプの中で回路の中にインターステージトランスが入ってないのは最初に挙げた「WE300B」シングル(1988年製)アンプだけだが、以前「北国の真空管博士」に相談してみたところ、
「WE300Bを出力管に使うときはインターステージトランスに何を使うかで勝負が決まります。極めて重要な部品ですから変なものを使うぐらいなら、厳選した質のいい前段管を使う方がよっぽどいいですよ。そのうちピッタリ合うものを探しておきますので待っておいてください。」
アンプの話になるとつい夢中になるが、これは脇に置いておくとして肝心の今回の試聴会だが結果から先に言えばこれまでにない「絶賛の嵐」だった!
自分がいいと思った音を仲間も手放しで賛同してくれるのは、さすがにうれしい(笑)。
ご意見をアトランダムに挙げてみよう。
☆ ウッドホーンがとても緻密なツクリで驚きました。音質に物凄く利いてますよ。大好きなアナログみたいな鳴り方です。ドイツ製のユニットはほんとにクリヤでいい音がしますねえ!
翌日(4日)にお見えになったYさんもまったく同意見だったが「ドイツ語の独特の発音とかしゃべり方がSPユニットにも反映してメリハリがはっきりしたサウンドづくりになるんじゃないでしょうか。」とのことだった。う~ん、そうかもしれない。
☆ 低音域から高音域まで3つのユニットが実にうまくハモってます。それぞれ国籍が違うのにまったく違和感がありませんよ。レンジも広いしとても良くバランスが取れています。
☆ 3台のアンプともいい面を発揮してます。最初のは低音の量感がたっぷりとしてますし、2番目は微細な表現力のもとでほのかな色香がそこはかとなく漂って、もう振るいつきたくなるような音はこういう音を言うんでしょう。3台目のアンプは音響空間の広さの表現力にかけては一番ですね。
かいつまむと、以上のとおりだったがお客さんたちに凄く満足していただいて何も言うこと無しの試聴会だった。
この3ウェイシステムに続いて定番の「AXIOM80」をぜひ聴いていただきたかったのだが、Mさんに緊急連絡が入った。
Mさんは旅館(大分市内中心部)を経営されており、翌日(4日)が「別府大分毎日マラソン大会」とあって、宿泊客が殺到しているので「至急帰ってきてください。」とのこと。
そりゃ、たいへん!オーディオどころではありませんぞ(笑)。
お見送りした後で、我が家のフラッグシップモデル「AXIOM80」と、この3ウェイシステムとはいったいどちらが上なんだろうかと、しばし沈思黙考したことだった(笑)。