今やオーディオには欠かせない存在ともいえる「ネットオークション」だがいつも「うまくいく」とは限らない。
言い方は悪いが、海のものとも山のものとも知れない出品者が相手だし、品物だって直接手に取って観察できるわけでもないからハズレがあったとしてもちっともおかしくない。
今回はそういう中での失敗談を2件述べてみよう。
そういえば、人の成功談には興味を示さないものの失敗談ともなると目が輝く人が多いそうだ(笑)。
まず1件目は先月末(1月)の話だが、「細い単線、長さ不明」のタイトルものもとに次のような線材が出品されていた。何しろ価格が100円スタートなのが大いに自分の好みだ(笑)。
どなたかのご質問で「線材の直径はどのくらいですか?」に対して「1mm程度です」との回答があった。
我が家のSPコードは「単線」を専ら愛用しており音質も大いに気に入っているが現用中の直径「1.2mm」だと、少々太すぎるようで硬くて扱いづらいので丁度「1mm」も試してみたいと思っていたところだった。
お値段も格安だしと、すぐに飛びついて若干の競争があったものの結局「2600円」で落札。しめしめ、これだけの長さがあればいろんな用途に使えると、ほくそえんでいたところ3日後に無事到着。
さっそく線材の芯を剥いたところ何と「単線」ではなく「撚線」だった。これにはガックリきたと同時に表示ミスに腹が立ったので、すぐに出品者の「オーディオ・ユニオン」に連絡した。
「品物到着しましたが、商品表示では「細い単線」とありましたが、調べてみると「撚線」でした。いい加減な表示はやめてください!返品しますので、代金(送料込みで3939円)を返却してください。」
ちょっとストレートすぎる内容かな(笑)。
すると、すぐに次のような回答が戻ってきた。
「1本の線なので単線と書いただけで材質などには触れてません。」ですって!
もうあきまへん(笑)。単線に対する認識の違いというわけだが、オーディオにはズブの素人としか思えない相手とやりとりしてもエネルギーと時間の無駄になりそうだ。あっけなく戦闘意欲喪失。
老舗の「オーディオユニオン」という看板を背負っているんだから、もっと真摯に対応してくれるかと思っていたが残念。
後日、我が家に試聴にお見えになった仲間たちにこの件を話したところ「それは明らかに表示の方が悪い。常識から考えて撚線と表示すべきだ。」と、一緒になって憤慨してくれた。
しかし、金額も大したことはなかったし、ま、いっか(笑)。
次は「意地の悪い入札者」としか思えない話に移ろう。長いオークション生活でもこういう経験は初めてである。
1週間ほど前にリサイクル専門の業者が真空管「E180CC」を12本まとめて出品していた。それも同じ12本が2回に分けて2日間隔で出品されている。したがって計24本だ。
ブランドは名門「ヴァルボ」(ドイツ)なので申し分なし。
「E180CC」は「μ(ミュー)=増幅率」が50前後と、たいへん使いやすいので現用中のプリアンプに6本使っており、音質もとても気に入っている。スペアが7本ばかりあるが、プリアンプは周知のとおり電源を入れる時間が長いので、真空管の消耗も半端ではなくスペアは多ければ多いに越したことはない。
オークションにもめったに出ない希少管なので「北国の真空管博士」にも海外のオークションで調達をお願いしているが、同博士によると「この真空管はオランダフィリップスが本家本元でパテントを持っています。パソコン用の真空管としてとても質の良いカソードが特徴です。極めて優秀な真空管ですよ。見かけたらご連絡しましょう。」
したがって今回のオークションは12本まとめて手に入れる絶好のチャンスである。価格はリサイクル業者のならいで1000円スタートだし、超安い。入札価格もずっと2500円程度で終始していた。
おそらくこの真空管をご存知の方も少ないだろうから一気に「22000円」で入札し、これなら大丈夫だろうと落札当日は早々に白川夜船だったが、翌朝、パソコンを開けてみるとなんと誰かがわずかに上回る金額で落札していた。
これは実に意外だった!
仕方がないので2回目のオークションにかけてみることにした。前述したようにこれもヴァルボの12本がまとめて出品してある。
今度は慎重を期して「52000円」と飛び切りの価格で入札し、これなら絶対落札だろうと安心して就寝。翌朝、悠々とパソコンを開いたところ、目に飛び込んできたのは「高値更新」のつれない文字だった(笑)。
信じられない!
こんな珍しい球を24本もどう使おうというのだろうか。もう意図的に邪魔しているとしか思えないが(笑)、相手もちゃんと身銭を切っているのだからこればかりは仕方がない。
潔く諦めることにして、方向転換することにした。
そもそも現用のプリアンプ(ジャデスの基盤回路)は「12AX7」(μ=100前後)の6本仕様になっているので、μが低くなる分は差支えないだろうからいろんな球が使えるはずと踏んだ。
そこで「E180CC」に拘ることなく、「E80CC」(μ=30前後)は使えないかと差し替えてみた。お値段の方は前者の2倍以上はするほどの球だが10本くらい持っているのでうまくいけば真空管の枯渇の不安は一気に解消する。
ハラハラドキドキだったが「E180CC」に負けず劣らずの音が出てくれて、立派に代用が務まることが判明した。
ああ、よかった! 危うく不要なお金を5万円も突っ込むところだった。
やっぱりオークションは熱くなってはダメだなあ(笑)。