このところ滅法、心地よい風が吹きわたっていく。
9月の時季に野を分けて吹く強い風を「野分」(のわき)というが、先日、彼岸での母の墓参りの折、道中でススキの茂った野原を強い風が吹き抜けていくのを見ていて、つい「疾風に勁草(けいそう)を知る」という言葉を思いだした。勁草というのは「(風になびかない)強い草」のこと。(そういえば勁草書房という老舗の本屋さんがある)
興味のある方は意味をググってもらうとして、これまで、疾風に出会うと立ち向かうどころか、むしろ“しり込み”するタイプなので、秋風とともに自分の情けなさが骨身に沁みてくる(笑)。
さて、ようやく本格的な「音楽&オーディオ」にいそしむ季節がやってきたようで、人の往来も活発になってきた。23日(火)と25日(木)と相次いでお客さんが試聴にお見えになったのでその顛末を記してみよう。
☆ 9月23日(火)
市内のYさんがお見えになった。クルマで10分程度の距離ということもあって、電話1本でその日の段取りが決められるのですこぶる快感。この日もそうだった。
Yさんはフルートに堪能な方で日頃から生の楽器で耳を鍛えてあるので、どういうご意見が伺えるのか興味津々。それにお見えになる都度、いつも珍しいCDを持参される。前回は「藍川由美」さんの唱歌集だったが、今回は次のとおり。
どうやらYさんは女性ボーカルがお好きなようで、仰るには「人間は胎内にいるときに母親の声を聴いて育つので本質的に女性ボーカルを好むようです。実際に知り合いのオーディオマニアはすべてと言っていいほど女性ボーカルが好きなのもその辺に理由があると思いますよ」。
成る程!その伝でいけば、人間は胎児の頃に母親の子宮の中で羊水に浸って育つので、大人になってもそういう素地でもって「水遊びが基本的に好きだ」という説を聞いたことがある。
それはさておき、YさんがボーカルのCDを頻繁に持ってこられるのは、もうひとつ理由があってそれは我が家の「AXIOM80」がボーカルの再生を得意としているからだと秘かに睨んでいる(笑)。
「有山麻衣子」さんの可憐なボーカルを聴きながら例によってアンプのテストを行い、順に「PX25・シングル」、「71Aシングル」そして「刻印付き2A3シングル」と進めた。音声コードとSPケーブルの付け外しの手間もあってWE300Bアンプの試聴は時間切れとなり次の機会へ。
「アンプによって随分音が変わりますね~」と仰ったが、アンプの順位付けは遠慮されたようで取り立ててコメントなし(笑)。
最後にJBL3ウェイマルチシステムを聴いてもらったところ、さすがに専用のスコーカー(JBL375)とツィーター(JBL075)が付いているだけあってスケール感と躍動感には一目置かれたようだ。
図体が大きくて場所もかなりの部分を占めているので、それなりの音を出してくれないと困るわなあ(笑)。
☆ 9月25日
先日(14日)に開催された「クラシック音楽会」で偶然お会いしたOさん(大分市)。たしか我が家にお見えになったのは2年ほど前のこと。
「お宅で聴かせてもらったAXIOM80の音がいまだに忘れられません。これまでいろんなお宅で音を聴かせてもらいましたが、単体のユニットでは一番いい音ですね。ことボーカルとヴァイオリンの再生にかけては右に出るユニットはありませんよ。」と、Oさん。
「そうですか。1年ほど前にAXIOM80のオリジナルボックスを手に入れましたので、よろしかったらいつでもどうぞ。」と申し上げておいたところ、ようやく実現の運びとなった。
実はOさんが感心された「AXIOM80」の音というのは、当時「タンノイ・ウェストミンスター」のエンクロージャーに収納していた時の話だった。
当時「盲目蛇に怖じず」で、SPユニットの背圧の処理なんかまったく考えもせずに単純に「大きな箱に入れれば、いい音が出るのでは」と「AXIOM80」に補助バッフルを付けてウェストミンスターに取りつけていたのだが、ソースによっては絶大な威力を発揮することがあって、そのときの音がOさんの耳にこびりついているようだ。
ただし、ほかにも「あのときのAXIOM80の音が忘れられない」という方も別に居て、オーディオでは常に平均点の獲得に終始する「優等生」がいいのか、音楽ソースによっては100点もあれば0点もある「やんちゃ坊主」がいいのか、ちょっと考えさせられる。
何といっても人の印象にずっと残るのは100点のときだからねえ(笑)。
この日は「当時のシステムとは随分違いますが」と、最初にお断りしてからOさんが持参されたヴァイオリンのCDをソースに次々とアンプを切り替えながら聴いていただいた。
結局、4台のアンプの中で一番気に入っていただいたのは「71Aシングル」。何とダントツだそうで~。
実はこれにはちょっとした秘密があって、今回挿していた出力管は型番を固く口止め(?)されている“とっておき”の「〇〇71A」(笑)。それに整流管もヘタっていると全体的に音がナマルので新品に差し換えていたものだった。
試聴の途中で興味深いことを言われていた。
「真空管アンプからトランジスターアンプに切り替えたときは、音質の劣化がそれほど目立たないのに、今度はトランジスターアンプから真空管アンプに切り替えたときは目を見張るほどいい音になるのに気付きますね。」
どうやら我が家の場合も効果的な観点からアンプの試聴の順番を考えた方が良さそうだ(笑)。
最後にJBL3ウェイシステムを聴いていただいてお開きとなったが、「いいバランスで鳴ってますよ。これは“おおらかさ”を楽しむシステムですね。」と好評だった。
2時間半ほど試聴していただいて、ラッシュアワーにかかる前の16時半ごろに帰途につかれたが、Oさんの繊細な耳の感覚は相変わらずだと感心したことだった。