函館新聞2024.07.30
貴重な蝦夷錦などが並ぶ企画展
函館・道南に伝わる蝦夷錦などと時代背景を紹介する市立函館博物館の今年度企画展「北東アジアのシルクロード―北方交易と蝦夷錦―」が10月13日まで、同館第2展示室で開かれている。
蝦夷錦は絹製で龍の文様が織り込まれた清朝の官服。中国から樺太、アムール川流域を経てアイヌ民族に渡った。このサンタン交易のルートが「北東アジアのシルクロード」と呼ばれる。蝦夷と交易をしていた松前藩がアイヌの人々から入手し、贈答品などとして幕府や各地に伝わった。
同館では1879(明治12)年の開館時、幅218センチ、高さ145センチの蝦夷錦が函館区の初代区議会議長、杉浦嘉七から寄贈され、今展で展示。上質で五爪の龍が華麗に施されている。このほか道南に来てからリメークされた打ち敷なども展示し、蝦夷錦が交易資源として果たした役割を感じさせている。放射性炭素年代測定や蛍光X線分析など、最新の技術で判明した資料の時代なども来館者が興味深く見入っている。
また、間宮林蔵がアムール川下流の地理や、諸民族が清国と交易する状況などを調査した「東韃(とうだつ)地方紀行」や、松前藩が繁栄した時代のびょうぶ絵などがあり、交易の様子を文献や絵図でも伝えている。このほか、タマサイ(首飾り)でガラス玉の大きさや色の変化が、馬場・児玉コレクションから見比べることができる。
同館の大矢京右学芸員は「博物館が所蔵する蝦夷錦などを市民に知ってもらい、新しい調査結果と合わせて展示物と歴史的背景を注目してほしい」と来館を呼び掛ける。展示は8月29日から一部入れ替し、蝦夷錦は全期間で約20点を展示する。
料金は一般300円、大学・高校生200円、小・中学生100円(市内に居住、または市内の学校に在学する児童生徒は無料)。開館時間は午前9時~午後5時(入館は同4時半まで)。毎週月曜と8月11、27、28日、9月17、22日休館。
■8月17日午後1時半から函館市中央図書館視聴覚ホールで、研究者が最新の研究成果を紹介するシンポジウム「北方先住民族の交易と産物」(事前申し込み不要)を開く。