クーリエ1/4(木) 22:55配信
アマゾン先住民の人々と接触をはかってきた冒険家、シドニー・ポスエロ(中央)
現代社会から隔絶された世界で、独自の生活を守り続ける人々がアマゾンの森にいる。そんな人々と接触をはかり続けて60年の探検家、シドニー・ポスエロにイスラエル紙「ハアレツ」がインタビューした。
【画像】性と匂いと死と─アマゾン先住民と60年間関わり続けた探検家が「得たもの」
ときに命の危険にさらされつつも、伝統的な暮らしを送る部族たちを「現代文明の侵略」から守るために活動してきたポスエロ。人生の大半をアマゾンに捧げている彼が見聞きしてきたものとは。
「まずはファスナー下げて見せて」
ブラジル、アマゾン地域の孤立した部族のメンバーたちは、初対面のとき、シドニー・ポスエロという「奇妙な白い生き物」の正体を確かめようとしたという。
「自分たちと同じ生き物なのかを彼らは確かめたがっていたのです」とポスエロは微笑みながら思い出を語る。
「私に口を開けさせて中をのぞき、顔や髭を触りました。部族の女性たちはファスナーを下げさせると、私のペニスを見て、夫を呼んで彼にも見せていましたね。そして女性の調査メンバーがいた場合、男性たちが胸と腰を触り、本当に女なのか確かめました」
「とある部族の男性は、調査チームの黒人メンバーの手を取ると、色を落とそうと皮膚をこすっていたこともあります。最終的にはそういう肌の色なのだと理解していました」
彼がいなければ、多くの部族が消えていた
私の目の前に座る、80歳の素晴らしい冒険家──彼ほど危険を厭わずアマゾンの部族に人生をささげた人間は他にいない。
60年に渡るキャリアのなか、ブラジル生まれのポスエロは、それまで一度も白人と接触したことがなかった7つの部族とコンタクトを取り、ブラジル領土の約15%を先住民コミュニティの特別保護区として区画させることに成功した。そしてその後は逆に、彼らの保護のために「接触を避ける」という画期的な方針を取っている。
マチェテ(山刀)を手に、学位なき彼は民族学者となり、先住民とともに幾年もジャングルで過ごしたのだ。
ポスエロは長年、ブラジル、国立先住民保護財団(FUNAI)の「孤立したインディオ局(Department for Isolated Indians)」の局長を務めた。その努力によって彼は同分野一の権威となり、アマゾン地域の先住民部族のスポークスマン、そして世界で最も尊敬され多くの賞を受ける活動家となった。
彼がいなければ、数十の部族が絶滅していただろう。
死と隣り合わせの接触
1978年、それまで一度も白人を見たことのなかった人間とはじめて出会ったときのことを、ポスエロはよく覚えている。
「出会ったのはジャバリ谷に住むマイア族です。あそこはボートでしか辿り着けないんですよ」とポスエロは言う。
「違法伐採者が彼らに会ったと聞き、気になって探しに行きました。しかし向かう途中で川が氾濫したんです。結局ボートは捨てて洪水した森を歩きました。そこで突然、先住民をひとり見たのです」
「贈り物として、彼にマチェテを渡しました。どこに向かうのかもわかりませんでしたが、歩きだしたので後をついていったんです。すると、小さな小屋につきました」
「そこにいたのは私と、調査に協力してくれていた先住民4人、そして出会ったマイア族の2人です。先住民はだいたいが2~3種の言語を話しますが、私たちが会った人たちは、チームのメンバーが知るどの言葉もしゃべれませんでした」
「夜になり、私たちは小屋で身を寄せ合って眠りました。白い肌の人間は私だけ。そして白人の所業に関して噂を耳にしていたため、彼らは私を恐れているようでした」
ポスエロは続ける。
「日が昇ると外に出て体を伸ばし、次にどうなるか待っていると、部族の他のメンバーがもうすぐ来るのだとジェスチャーで分かりました。暴力的な状況になるのか、私たちには分かりません。その時は彼らのことを理解できなかったし、彼らも私たちを理解できなかったのです」
「チームには、もし何かが起こったら宙に向かって発砲しようと言いました。孤立した部族と会った場合、2つの可能性があることを、先住民メンバーは私よりもよく分かっていたのです。仲良くなるか、そうでなければ殺されるということを」
Ayelet Vardi
https://news.yahoo.co.jp/articles/c7f3604cbcc003a813845391bafdf3f07f41a009