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権利保障の具体化課題に 政府がアイヌ新法案衆院提出 にじむ観光重視

2019-02-17 | アイヌ民族関連
北海道新聞 02/16 09:10
 15日に政府が閣議決定したアイヌ新法案は、2020年の東京五輪・パラリンピックを見据え、「共生社会の実現」を掲げる官邸主導で急速に進んだ。ただ、観光重視も透ける政府の方針には「本当に権利回復につながるのか」と憂慮する声も。日本の先住民族政策の遅れは国連などでも指摘されており、新法案で検討される施策をどのように先住民族の権利に結びつけられるのか、国会での論議が注目される。
 「未来志向のアイヌ政策という観点から地域振興、産業振興、観光振興を含めた総合的な政策を推進していく」。15日の閣議決定後、記者会見した菅義偉官房長官は、法案の意義をこう強調した。
 法案策定に向けた議論で政府がこだわったのが、観光振興につながるアイヌ文化の発信だ。「先住民族への関心が高い訪日外国人へのアピール効果は大きい」(政府高官)からだ。
■ウポポイ最優先
 政府は、新法案にも位置づけられ、胆振管内白老町に20年4月開設する「民族共生象徴空間」(ウポポイ)の五輪前開業にこだわった。昨年12月の段階では24年としていた「年間来場者100万人」の目標達成年も、15日の閣議で一気に五輪年の20年への前倒しを決めた。ただ、目標達成への具体的方策は見えず、実現を不安視する関係者も多い。
 新法案はアイヌ民族を初めて先住民族と明記し、産業振興などに向けた交付金制度の創設を盛り込んだ。北海道アイヌ協会のある幹部は「官邸の力なしにここまでの法案は実現しなかった」。担当の石井啓一国土交通相は15日の閣議後会見で、新千歳空港から白老にかけて国道36号の拡幅などアクセス整備も明言した。
■「初めの一歩に」
 ただ、アイヌ民族の中には「アイヌを利用して観光振興をしたいだけでは」との見方も。特例措置が設けられたサケの捕獲も、文化伝承に限った上で「適切な配慮をする」との表現にとどめており、現行の道の特別採捕許可制度から何が変わるのか議論が必要だ。
 紋別アイヌ協会の畠山敏会長(77)は「かつてアイヌから奪った権利を保障するという政府の姿勢が見えない」と憤る。サケ捕獲についても「上限を決めるなど資源保護への配慮をした上で、先住民族の権利として自由な捕獲を保障するところまで踏み込んでほしい」と訴える。
 先住民族の権利保障は、国際的な流れでもある。07年に国連総会が採択した「先住民族の権利に関する国連宣言」は、先住民族が収奪された土地の原状回復や補償(土地権)、独自の教育制度などの確立(教育権)、自決権などが盛り込まれており、日本も賛成票を投じた。
 宣言を受け、日本では08年に衆参両院で「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が全会一致で採択された。さらに民族共生象徴空間の整備計画が具体化。16年に政府のアイヌ政策推進会議が新法を検討する方針を決め、議論が一気に進んだ。
 ただ先住民族の言語を公用語化し、独自の大学や議会を設けているノルウェーや、土地回復や自治の確立などを保障する米国などに比べ、アイヌ新法案は先住民族の権利保障が曖昧だ。国連の人種差別撤廃委員会も日本政府に対し、昨年8月まで数回、権利の保障を求める勧告を出した。
 北海道アイヌ協会の阿部一司副理事長(71)は「新法案は初めの一歩だ」と強調。その上で「交付金や特例措置を具体的にどのように権利回復につなげ、将来的に国際レベルの先住民族政策に高めていくか議論に期待したい」と話した。(斉藤千絵、古田夏也)
■先住民族明記に意義 北大アイヌ・先住民研究センター常本照樹センター長(法学)の話
 法案の概要を見た限りではあるが、アイヌ民族の文化振興や生活の向上などこれまで論点となってきた事項に具体的な一定の方向性を示したと言える。
 アイヌ民族を法律の中で先住民族と位置づけたこと自体に大きなメッセージ性がある。ただ支援の対象となるアイヌ民族の特定は、現段階で技術的に容易ではない。またアイヌ民族とそうでない人々が共生している現状が前提にある中、アイヌ民族の地位を改善するために地域全体を豊かにするという交付金制度は現実的なアプローチだろう。
 今後、アイヌ民族が先住民族であるという認識を社会に広げ、民族共生を実現するには政府や道、市町村、アイヌ民族自身がこの新法をどのように運用できるかについて共に知恵を絞ることが欠かせない。
■歴史や現状に触れず 恵泉女学園大上村英明教授(国際人権法)の話
 新法案はアイヌ民族の誇りの尊重を掲げながら、実質的には民族共生象徴空間の運営や特別措置の見直しなど行政上の段取りを示す「手続き法」に終始していると言わざるを得ない。
 政府は1997年のアイヌ文化振興法以降、支援対象を決める個人認定は難しいとの立場をとってきた。その結果、対象を特定しない文化活動を前提にせざるを得ず、回りくどい政策に終始している。新法案も、国の責務はあくまで「アイヌ文化振興・環境整備」であり、サケの捕獲を文化伝承に限っている点でもその域を出ていない。
 そもそも法案は、新法が必要な「理由」とも言える歴史的経緯やアイヌ民族の現状に触れておらず、政府にはあらためて説明を求めたい。その上で、権利回復のあり方を国民一人一人が再考する契機にしたい。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/277345

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アイヌ新法案 政策推進を民族主体で

2019-02-17 | アイヌ民族関連
北海道新聞 02/16 05:06
 政府はアイヌ民族の誇りを尊重し、共生社会を目指すアイヌ民族に関する新法案を閣議決定した。
 アイヌ民族を先住民族と法律で初めて明記した意義は大きい。
 福祉や文化振興が中心だったアイヌ政策に、林産物採取やサケの捕獲などの特例措置や、交付金制度の創設などを加えた総合的な政策に転換する節目となろう。
 肝心なのは、アイヌ民族が政策推進に主体的に関与できる仕組みをつくることだ。
 国会は、新法案を練り上げ、権利回復に道筋をつけられるよう審議を尽くさなければならない。
 2008年、国会決議を受け、政府はアイヌ民族を先住民族と認め、16年から立法化の議論を本格化させた。
 新法案は、アイヌ文化の振興や啓発などの施策の実施を国や自治体の責務と定め、施策は「アイヌの人々の自発的意思」を尊重して推進するとしている。
 自発的意思をどう担保するのか、具体化する必要がある。
 法案は20年に胆振管内白老町に開設する「民族共生象徴空間(ウポポイ)」を「アイヌ文化の振興などの拠点」と位置づけた。
 明治以降、政府は同化政策を進めた。アイヌ民族の暮らしの糧を奪い、困窮を強いてきた歴史を振り返れば、民族の権利と尊厳を発信する場として、復権活動を息長く後押しする責任がある。
 一方で、アイヌ民族の関係団体が強く求めてきた生活・教育支援は盛り込まれなかった。
 アイヌ民族だけが対象の支援策を講じると、憲法14条の法の下の平等に抵触するとの理由からだ。
 しかし、14条は社会的・経済的弱者を厚く保護して格差を是正する「実質的な平等」を求めているとされる。
 法案は、アイヌ民族に対する差別や権利侵害を禁じたものの、アイヌ新法が必要とされた歴史的経緯や、差別や格差を生んだ国の責任に触れていない。
 これでは「アイヌ民族にだけ特権を与えている」との偏見につながる恐れがある。政府は、国民に丁寧に説明すべきだ。
 そもそも日本の先住民族政策は遅れている。昨年も国連人種差別撤廃委員会から「アイヌ民族の土地や自然資源への権利を十分保障すべきだ」と勧告された。
 海外では、先住民族の議会を設けたり、言語が公用語化されるといった例もある。
 国会はこうした動きも踏まえ、議論を活発化させてほしい。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/277267

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象徴空間に高まる期待/生活支援なし 落胆も アイヌ新法案

2019-02-17 | アイヌ民族関連
北海道新聞 02/16 17:17 更新
 アイヌ民族の「誇りの尊重」を掲げ、15日に閣議決定されたアイヌ新法案を、道内外のアイヌ民族はさまざまな思いで受け止めた。アイヌ文化の継承と発信の拠点として、法案に位置づけられ、2020年に胆振管内白老町に開設される民族共生象徴空間(ウポポイ)への期待が高まる一方、教育や土地など先住民族の具体的な権利には踏み込まなかったとして落胆する声も。「異なる民族が共に生きる社会の形を一人一人が考えて」。交錯する思いの中、そんな願いが広がる。
 「先人から受け継いできた文化を、アイヌ民族が主体となって発信する場になれば」。ウポポイの運営を盛り込んだアイヌ新法案が閣議決定され、地元・白老アイヌ協会の新井田幹夫会長(67)は強く願う。
 法案がウポポイの運営主体と規定するアイヌ民族文化財団(札幌)の前身でもある白老町のアイヌ民族博物館で35年以上、チセ(家)の維持管理などに携わってきた。文化復興の拠点開設に期待する一方、協会が要望してきた生活支援は盛り込まれず、「法案が掲げる『民族としての誇り』は名ばかりか」と複雑な思いをのぞかせる。
■地域振興に交付金
 ウポポイを拠点に道内のアイヌ文化の周遊ルートづくりに取り組む阿寒アイヌ協会の広野洋会長(54)は「ここからがスタート」と意気込む。
 法案は、アイヌ文化を生かした地域、産業振興に新交付金を適用するとしており「アイヌが主体的に関わり、地域を一緒に盛り上げることが権利回復への次の一歩につながる」。
 法案は、サケ捕獲の規制も文化伝承に限り緩和する。アイヌ民族が生活の糧としてきたのに、明治政府の禁漁などにより奪われた権利の一つだ。サケの伝統漁法の復活を目指す千歳アイヌ協会の中村吉雄会長(69)は「水産関係者と共存できるよう、議論を深めてほしい」と期待する。
 道内のアイヌ民族でつくる少数民族懇談会の清水裕二会長(77)は、今も続く差別や生活格差につながった歴史的経緯、アイヌ民族の現状に触れていない新法案を憂慮する。「『アイヌが利権を得ている』という偏見につながりかねない」
 道内で学校教諭として働いていた時、他の教員からの差別に悩んだ。「今も状況は変わらない」。法案に対し、アイヌ民族は先住民族ではない、差別は存在しないなどとする反動的な主張も目立つ。清水さんは「失われた権利を回復する必要性を国が率直に語ることが国民の理解につながる」と強調する。
■未来の形 議論して
 「文化振興に偏っており、権利を保障する認識が不十分。民族共生を絵に描いた餅で終わらせないでほしい」。首都圏のアイヌ民族でつくる「東京ウタリ会」(現・関東ウタリ会)創設に尽力した宇梶静江さん(85)=日高管内浦河町出身、埼玉県在住=は訴える。
 法案はアイヌ民族を先住民族としながら、北欧やカナダなどでは認められている土地や教育の権利回復は盛り込まれなかった。民族の違いを超えた仲間と長年、権利回復を求めてきた宇梶さんは願う。「今を一緒に生きる自分たちの問題として、アイヌ民族もそうでない人も真剣に未来の形を議論してほしい」(斉藤千絵、金子文太郎)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/277309

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高橋知事自民・青山氏発言を批判 「本当のアイヌ2割」 /北海道

2019-02-17 | アイヌ民族関連
会員限定有料記事 毎日新聞2019年2月16日 地方版
 自民党の青山繁晴参院議員(比例代表)が今月、北海道アイヌ協会(加藤忠理事長)の構成員について「本当にアイヌの血を引く方は2割くらいしかいない」と発言し、高橋はるみ知事は15日の記者会見で、「誤解も甚だしい」と批判した。
 高橋氏は「事実を把握して発言すべき問題にもかかわらず、軽々しい発言をされたのは…
この記事は有料記事です。
残り125文字(全文275文字)
https://mainichi.jp/articles/20190216/ddl/k01/010/057000c

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松浦武四郎 松阪で生誕200年記念講座最終回 元県史編さん専門委員・小玉さん語る /三重

2019-02-17 | アイヌ民族関連
会員限定有料記事 毎日新聞2019年2月16日 地方版
 北海道の名付け親として知られる松阪市出身の探検家・松浦武四郎の生誕200年を記念し昨年3月から開かれてきた記念講座の最終回が10日、同市小野江町の松浦武四郎記念館で開かれ、11月に「近代初期の松浦武四郎」を出版した元三重県史編さん専門委員の小玉道明さんが講演した。
 北海道と命名した武四郎が、開拓方針を巡って明治政府と対立して以降の動きを時系列でまとめ、書簡などから読み解いた武四郎の人柄や交友、古物収集の趣味なども、時代背景とともに紹介。県内外か…
この記事は有料記事です。
残り339文字(全文564文字)
https://mainichi.jp/articles/20190216/ddl/k24/040/182000c

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アイヌ語のイランカラプテ(こんにちは)には…

2019-02-17 | アイヌ民族関連
毎日新聞2019年2月17日 東京朝刊
 アイヌ語のイランカラプテ(こんにちは)には「あなたの心にそっと触れさせていただきます」という美しい意味がある。そういう説明を聞いたことがあるかもしれないが、言語学的には正確でないようだ▲アイヌ初の国会議員だった萱野(かやの)茂氏が自ら編んだ辞典で示した独自の解釈を、政府や北海道が2020年東京五輪の宣伝に、事情を承知で広めているらしい。開会式では多文化共生の象徴として、アイヌ民族舞踊の披露が計画されている▲萱野氏は1997年のアイヌ文化振興法制定後、政界を退いた。狩猟民族の子らしく「人は足元が暗くなる前に故郷へ帰るものだ」と言い残した。明治の開拓政策で悪名高い北海道旧土人保護法は廃止されたが、奪われた土地や漁業・狩猟の権利は戻らなかった▲国会が「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」を行ったのは08年。日本も賛成した「先住民族の権利に関する国連宣言」を受け、「法的には等しく国民でありながらも差別され」た歴史に向き合うよう政府に求めた▲15日閣議決定されたアイヌ支援法案は、初めて法律に「先住民族」と明記する。だが、柱はアイヌ文化事業・観光向けの自治体交付金だ。文化を担うための生活改善を求めた人々は落胆を隠さない▲来年は北海道白老(しらおい)町にアイヌ文化を体感する新国立施設もできる。五輪に向け民族文化活用の準備は着々と進む。その足元でアイヌの人々の生活保護受給率が居住市町村の平均を上回るという現実は変わらない。
https://mainichi.jp/articles/20190217/ddm/001/070/119000c

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