西村一朗の地域居住談義

住居・住環境の工夫や課題そして興味あることの談義

Harvard for JAPANシンポジュウムより

2011-06-08 | 時論、雑感
テレビ(再放送)で、「ハーバードからのメッセージー東日本大震災から何を学ぶのかー」を見た。「遠く」離れた所からのシンポジュウム(4月22日)で少し物足りない点もなきにしもあらずだったが勉強になった。

最近、日本でも「白熱教室」でおなじみの政治哲学のマイケル・サンデル教授が基調講義とまとめ、二部のシンポジュウムでは日本近代史のゴードン教授の司会で、災害医療のロズボロウ医師(女性)、元IAEA事務次長のハイノネン博士(IAEA日本支部に勤務経験あり)、防災都市計画のミホ・マゼレウ(講師、日系人、女性)が発現した。

ここではマイケル・サンデル教授の発言で気にとまったところをメモしておく。

・アダム・スミスは『道徳感情論』で「…遥か遠い中国で大地震が起きて国民全体が飲み込まれたとしたら、ヨーロッパの人達は、どう考えどう行動するか」という問を立て、初めは同情し、哀悼の意を述べ、頑張って立ち直って欲しい、と述べた後で、それで「満足して」さっさと日常のビジネスに戻り、その日もぐっすり眠ったしまうだろう。(つまり、ヨーロッパ人にとってはアジアの大不幸は一過性の出来ごとで、すぐ忘れてしまうものだ、と述べたようだ。)
(それに比べ一人のヨーロッパ人が小指を不幸にも切断したとしたら、痛く、心配で夜も眠れないであろう、とも言っているようだ。)

・1755年にポルトガルのリスボンを襲った大地震、大津波で多大な災害を受け多数の死傷者も出たが、これに対してフランスのルソーやドイツのカントらが、この大災害をどうみるか、でキリスト教的な黙示録のように「天罰だ」という見方に対して、大地震、大津波は自然現象で、やがてはそれらの発生メカニズムは明らかになるだろう、と言った啓蒙主義的な見方を対置し、これが大きな啓蒙主義、まあ大きくは科学主義の幕開けになった、と言う。

・で、今度の日本の大震災は、何かの変化、何かの幕開けになるだろうか、と問うている。

この問いに対して、私は、底の浅い「科学主義」の克服、サンデル教授が言う「最近世界的に不調な民主主義」に対して新たな前進を目指すきっかけになるに違いない、と答えたい。

サンデル教授は、特に後者に期待したい、と最後に述べていた。

(これを聞いて、先日、ドイツの脱原発を決める前に、結構奥の深い原発維持推進派と脱原発自然エネルギー派の10時間に及ぶ公開討論を思い出した。こういうやり方も多様な重層的な民主主義の一方法であろう。日本でも議会以外の国民民主主義をも発展させるべきであろう。)