カルテ番号 よ・６（4）
不便なのは、移動だ。
バスは時間が空きすぎるし、その都度タクシーを使うわけにもいかない。
免許はあるが、自家用車はなかった。
店の車で製品を運ぶのに使う事があったからだ。
レンタカーを長期で借りるのも不経済すぎる。
そんな頃、時々様子を見に雇い主の親戚が来て、車を置いていってくれた。
急かせはしないが、やはり百合の抜けた穴は痛手のようだ。
雇い主の親戚は、百合がいなくなって気づいた事がある。
百合は静かに仕事をしているだけだったが、雰囲気が優しかった。
百合がいただけで、職場の雰囲気が良かったのだ。
いなくなって、仕事場が何となく荒れている。
意見の違いなどで、ぶつかり合う事も幾度もある。
何も言わない百合の存在は、仕事場として大きかったのだ。
百合も優しいが、百合には優しくしたくなる。
控えめに振る舞っているが、他の人には楽だったのだ。
親も気づかない百合の大きさ。
親戚は、改めて百合が早く復帰して欲しいと願った。
同時に、百合の将来も考え始めた。
このまま仕事だけをさせるわけにはいかない。
（登場する人物・組織・その他はフィックションです）
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