あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

りんごの木を植えて

2023-12-27 16:51:18 | 

 私のオヤジはステージ4の胃がんに対して積極的な治療はしませんでした。母もステージ3~4の肺がんでしたが、彼女はそれまで元気一杯だったため、抗がん剤治療をしましたが、副作用の下痢に苦しんでいました。ふたりとも80代後半でしたが、対照的な晩年でした。

 さて、本書の主人公の小学校5年生のみずほは二世帯住宅で祖父母と一緒に住んでいます。彼女が大好きなおじいちゃんは今年で80歳を迎えます。しかし、体調が悪そうだなぁと家族が感じていたら、5年前のガンの再発が原因でした。家族のみんなは元気になってもらいたい、もっと長生きしてもらいたいと思っていますが、積極的な治療はせず、今まで通り、家族や友だちと過ごし、自分の残りの時間を有効に使いたいと宣言します。おじいちゃんの死生観は

 「死は生きることの終わりやなくて、つづき。」「死んでも、残った人の心の中にいっしょに過ごした思い出が残る」「自分らしい生きかたして、柿の実がぽとりと落ちるように、自然にまかせて終わりたい」

であり、彼の周囲の人たちと楽しい時間を共有します。80歳の誕生日を迎えて、まもなく亡くなりますが、どういう終末を過ごすかは本当に大切ですね。本書は児童書ですが、大人が読んでも死について考える素敵な1冊です。

『りんごの木を植えて』(大谷美和子著、白石ゆか/絵、ポプラ社、本体価格1,500円、税込価格1,650円)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする