今夏は、初夏の豪雨の後、雨天と好天が暫く繰り返し、地球全体が温暖化したせいか、7月の半ばを過ぎてから酷暑の日々にみまわれ、太陽光線も異常な程の強烈な日射となって降り注ぎ、お盆を過ぎてからも全く秋の気配が漂わず、その後も残暑が続き9月も月末となった。
今月は中旬に発生し、日本海に延びていた停滞前線が本州を横切り、太平洋の東北沖に抜けてもまだ残暑が続いて、ずっと蒸し暑かったものの、23日の彼岸を境に、伊勢地方にもようやく秋の気流が流れ込み、朝夕はひんやりとした秋風と共に、天空には巻雲(すじ雲)や巻積雲(うろこ雲)が広がり、ようやく秋らしくなった。
今夏は、趣味の水石探しには殆ど出向かずに過ごし、氾濫後の五十鈴川の川原と二見浦の海浜に行き、何度か見回ったきりで、あっと言う間に3ヶ月が経った。
その間にしていた事と言えば、所蔵の水石の再吟味と、余技作品として手がけた幾つかの「石細工品」の製作である。
日本国内の全国各地には、地方色豊かな石細工や石の工芸品などが色々と見られ、かつてそれらの生産地を訪ねた事があり、各地の各々の石製品についてはブログにも何度か書かせて頂いてきた。
三重県では、熊野地方で多産する「那智黒石」(黒色珪質頁岩や粘板岩)の加工が、昔から原産地で盛んに行われ来ているが、三重県下で工芸品用の石材として採石されているのは、この「那智黒石」だけである。
他には、度会郡の七保村(現在は大紀町永会)辺りで産する「七華石」(縞状の混色石灰岩)を研磨した水石や美石が、昭和の半ば頃に一時的に出回り、タイピンやカフスボタン、帯留めなどに試・製作されたことがあったが、昭和の水石ブームの終焉と共に消えて行った。
石製品のルーツと言えば、人類の祖先が最初に使用した道具としての古代の石器類に行きつくが、その後の文明の開花に至ってからは、古墳時代の勾玉や管玉など各種の鉱物・岩石を加工研磨した装飾品があげられる。 そしてその原産地では、地場産業の一つとして、今も石細工が続けられている。
その主な生産地をあげると、北海道各地の瑪瑙・玉髄と、十勝地方の黒曜石。 青森県津軽地方の錦石(瑪瑙・玉髄・蛋白石・碧玉・赤玉石など)。 岩手県久慈市の琥珀。 福島県宝坂の蛋白石。 新潟県糸魚川市の翡翠と、佐渡の赤玉石・その他。 山梨県の水晶・その他。 福井県小浜の瑪瑙(現在は外来の原石を加工)。 島根県玉造の碧玉(青玉石)と、隠岐の黒曜石。 香川県屋島付近のカンカン石(磬石 ~ 安山岩の一種)等が列挙される。
以上の他、全国各地の観光鍾乳洞では、みやげ物品に必ずと言ってよい程、鍾乳石や大理石、石灰岩を使った石の工芸品や置き物などの調度品が製作され、みやげ物店の店頭に並べられている。 これらの原石は、付近の無名の鍾乳洞などからの採掘品であると思って間違いがないが、無尽蔵ではないので、外来の原石もかなり使用されていると思われる。
最後になってしまったが、今夏に製作を試みた余技製作の石細工品を、幾つか掲載して本稿を締め括ろう。 使用した岩石は水石の切断端石のスライス・カット片や、形状良いの手頃なサイズの転石などである。
この作業も、熱中すると時間を忘れ、ハマってしまう程楽しいし、出来栄えによっては座右に飾っておいたり、販売してみたい気分になってしまう。
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