伊勢すずめのすずろある記

伊勢雀の漫歩…。
 伊勢の山々から志摩の海までの、自然史スポット&とっておき情報など…。
  感性の趣くままに-。

2016年「弥生」最後の日に、藤川を遡る

2016年03月31日 | 奥伊勢の自然と風物

西の瀬橋から眺めた藤川と「西の瀬小公園」の桜

 弥生(3月)も今日一日となった。朝から薄雲が広がるものの、高気圧におおわれていて、春らしい暖かい穏やかな日和である。咲き遅れていた伊勢市の市街地の桜も、花盛りとまではいかなくても、どうやら見頃となった。

 今月の上旬は、寒・暖の繰り返しが続き、殆ど遠出をせずに閉じ籠り勝ちであったが、中旬の半ばになって、春の彼岸を前にシキビ(しきみ・樒に同じ)採りやら、墓の掃除やらで体を酷使した上、次の日は度会町内の荒れた林道に車を入れる為に、倒木や崩れ落ちた岩塊の撤去で半日を費やした。

 そして、午後になって数年ほど治まっていた腰痛が再発し、丸1週間唸っていた。十日程経ってどうにか動けるようになったが、朝晩の寝起きと用便、そして靴下の履き脱ぎに痛みが走る。湿布薬を貼り痛み止めを飲み、2週間が過ぎてようやく歩行も楽になった。まだ少し背中に張りがあるので重たい物は持てないが、3月最後の一日だし、天気も良いので外に出てみようと、暫く行っていない藤川の散策を思い立った。


野添大橋から眺めた、宮川に合流する藤川の河口


 自宅から車で約40分程走って、藤川の河口付近に架かる「野添大橋」(のぞえおおはし)に至る。ここからは交番のある信号交差点を左折し、藤川の左岸を遡る県道38号線に入る。川の対岸には旧道もあるが、七保小学校の前を通り過ぎ、金輪、藤を経て木屋(こや)へと約10km程続くこの新道は、拡幅・補修が行き届いていて走りよい。近年になって、対岸に渡るのに野田原橋や金輪橋、若瀬橋が架かり、大紀町の藤川界隈(旧七保村)も交通至便になった。


「西の瀬橋」の少し下(しも)にある堰堤


 数分走って最初に降りたのは、藤(ふじ)の在所の「西の瀬橋」の少し下(しも)にある堰堤である。この下(した)に石墨千枚岩の岩盤があって渓流を成し、ここのちょっとした石溜りに、かつては石墨千枚岩やチャート、石灰岩などの転石に混じって、鎧石や七華石の良石が揚石出来たが、今は殆ど見当たらない。

 西の瀬橋すぐ上(かみ)の藤川右岸のリバーサイドに、「西の瀬小公園」(親水公園)があるが、ここは当地きっての桜の名所でもある。この日は、春休みの真っ只中なのに、平日ゆえか遊歩の人影はまったくない…。が、薄日が晴れて時折注ぐ眩しい陽射し中に、どの木も桜花は満開に咲きほこり、今が正に見頃である。


「西の瀬橋」直下の川原


 車を止めて西の瀬橋直下の川原を散策してみた。散策といっても石拾いである。この川原も転石の集積場であり、以前は立派な七華石や鎧石を産したが、公園が整備されてからは人の行き来が頻繁なせいか、良い石は殆ど見当たらない。少しましな小物石を3個見つけた。

川原で拾った「七華石(左下)と赤鎧石」~ 最長幅約10cm


 藤の在所を通り抜けて、少し走ると墓地の先に成谷橋がある。ここからは、2km程先の板取橋まで、藤川を挟んで右岸に旧道が並走していて、左岸の県道(46号線)からは見下ろす恰好になっている。
 旧道に入って少し走ると、コンクリートで修復された堰堤がある。このすぐ下(しも)の川原にも、かつては質の良い白鎧石や七華石があった。立ち寄ってみたが、やはり白チャートなどの岩塊と転石ばかりで、水石になるような良い石は転がっていない。一通り見回っただけで、この先の板取橋に向かった。


成谷橋 ~ 板取橋間にあるコンクリートの堰堤


 板取橋のすぐ上(かみ)に、東方の谷より流下する板取川が合流する。板取の在所から分け入るこの谷の奥には、かつての七華石の採石場(七華山採石場)の跡がある。この谷奥から藤川に質の良い七華石や赤鎧石が流出し、供給されているようで、これより上流の藤川には、白鎧石はあっても七華石は見当たらない。


板取橋から眺めた藤川の川原と、岸辺の桜の木

藤川に合流する板取川の河口


 橋を渡った所に車を止めて戻り、きれいに咲いた岸辺の桜の木の横から橋の下に降りた。昨秋以来、大水が出ていないので川原の石も変化が無くて、以前のままのようである。七華石の破片や小石が幾つか散らばってはいたが、水石として鑑賞出来るレベルの石は残っていなかった。ここの川原は、藤川産の名石の大宝庫であるが、川が荒れた後でないと揚石はまず無理である。
 残念ながら、本日も手にする程の石はゼロで、写真を撮っただけであった。

藤川上流の最奥にある「木屋」の村落


 板取の先には、こじんまりしとした木屋(こや)の村落があるだけで、藤川はここで二手に分かれて源流の谷間へと遡って行く。村内に架かる久保橋から眺めると、左岸に石灰岩の岩盤が露頭を成していて、川岸に小さな鍾乳洞が開口している。「木屋の蝙蝠穴」(こうもりあな)である。

久保橋から眺めた対岸にある「木屋の蝙蝠穴」


 これから先は、石灰石鉱山のある国見山の「藤坂峠」を経て、南伊勢町(旧 南島町)の河内や村山・神前(かみさき)浦に至る県道(46号線)と、左折して林道さながらの県道(151号線)に入り、藤越え(大紀町と度会町を境する峠)を経て南中村(度会町)に至る山路があるが、この日は、木屋まで行ってリターンする事にした。


県道際にある「神の口延命地蔵」から湧出する名水

 帰りには、木屋の手前の県道際にある「神の口延命地蔵」から湧出する名水を、ペットボトル満杯に取水した。

藤川産の研磨した名石「七華石」~ 左右幅・高さ共に約10cm
藤川産の名石「白鎧石」~ 左右幅約13㎝、高さ約10cm

コメント
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