伊勢すずめのすずろある記

伊勢雀の漫歩…。
 伊勢の山々から志摩の海までの、自然史スポット&とっておき情報など…。
  感性の趣くままに-。

伊勢・志摩・度会の石紀行 その1 「乙女岩」~ 度会町川上

2014年04月16日 | 伊勢・志摩・度会の石紀行


県道151号線より眺めた、川上村落上方の「乙女岩」

 伊勢志摩国立公園の自然は、リアス式湾入の織り成す海岸美の景観と、伊勢神宮界隈の濃緑(こみどり)に包まれた、千古の神々しい深山幽谷から成り立っていると言っても過言ではない。又、当地方には独特の風習や文化があって、古来当地方を訪れる人々を魅了し続けてきた。
 古文書にも色々と地誌や歴史、民俗の事などが自然物と共に記され、由緒ある寺社仏閣から史跡、名勝、山、川、原野、濱海、池泉、樹石、洞窟、古墳、邑里の事などが、詳述されている。その文献のひとつに「伊勢名勝志」があり、他にも「勢国見聞集」や「伊勢参宮名所図絵」、「南勢雑記」などがある。

乙女岩の上からの眺望

 さて、我輩は以前からこれらの古文書に出ている、謂れのある石や名物岩に興味を持って、それらの所在地を探訪して来たが、見過ごして来たものも幾つかある。
 当地方には、二見ヶ浦の夫婦岩をはじめ、五十鈴川の上流には「鏡石」があり、「鸚鵡石」(志摩市磯部町恵利原、並びに度会郡度会町南中村)や葛籠石(伊勢市古市町)、獅子岩(伊勢市横輪町)、燧石(度会郡度会町火打石)、乙女岩(度会郡度会町川上)など、チェックをして行けば切が無い。これらの中には、伊勢神宮や倭姫伝説にまつわり、神聖視されたものも少なく無い。
 「勢国見聞集」によれば、当地には鏡石、葛籠石、鸚鵡石など「勢州八奇石」と言うのがあると書かれている。とにかく、伊勢志摩から奥伊勢(度会郡)にかけては、数々の鎮座石や巌(いわお)があって、その伝説や伝承が絶えない。

 四月も半ばとなって、好天が続いているので、一之瀬川に沿って度会町の南中村まで県道22号(伊勢南島線)を遡ってみた。南中村からは、林道のような藤越えの県道151号(度会大宮線)が分岐している。この道は頻繁に通っているが、ついつい見過ごして来たのが、川上の村落の真上に見えている「乙女岩」である。 藤越えに至る途中には、倭姫ゆかりの「川上の清水」(ブログのバックナンバー・2013年11月12日参照)があって、地元民には良質の名水として庇護されている。
 4月14日、昼少し前のうららかな日和の中、村内の案内板に従い、思いきって乙女岩に行ってみた。

村道奥の「乙女岩への登り口」

 村道を奥に入った道沿いの山裾に、登り口の案内表示があった。登山道のような急坂の細道が続き、周囲には白チャートの露岩やガレ石が散乱している。歩く事約5分、岩場にたどりついたが、久しぶりの山歩きに体は汗ばみ、一気に登りきったせいか息切れがした。岩によじ登るのにチェーンが垂れ下がっていた。
乙女岩に登るのに取り付けられているチェーン 露岩の上は、小広い方形の畳敷きのような平台で、この白チャートの一枚岩からの眺めは、倭姫の休息地の一つと言われているだけあって、眼下の田畑や里山(さとやま)が一望できた。広さは目測8m×6mぐらいであろうか。
 勢国見聞集 巻十六(名石之部)によれば、「乙女岩 倭姫命、皇大神宮の御宮所を尋歩行給ふ時、御遊覧の岩なり。巓場(てんば)甚広くして、畳を敷きたる如くかの筋あり。又、一段低き所あり。是は料理を仕て、倭姫命に献じ奉りし跡と云。滝川某、此所にのぞみ一見せしが、誠に珍敷岩なりと被(注:レ点入る)語ける。」とある。

畳敷きのようになった「乙女岩の上面」

岩の上に咲いている「山ツツジ」

 ちなみに、度会町の脇出に隣接する和井野(わいの)と言う所にも、倭姫の休息地とされている「ほこら」があって、参道に鳥居が立てられている。ここの地名は、「侘び野」の転化とも言われている。




 

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四月に入って、桜花爛漫の中、新年度がスタート

2014年04月06日 | 随筆・雑感・回想など

対岸より眺めた宮川堤の桜

 二月に続き、今年は三月も足早に過ぎてしまい、アッと言う間に四月となった。目下桜花爛漫であり、桜の名所はどこもかしこも、花見の人出で賑わっている。官公庁などでは、年度末の人事を経て、新体制のもと新たな一年が始まった。 この三月は、雑用に追われてブログをパスしてしまった。パソコンも、土壇場になって中古の機種を探し求め、何とかWindowsXPからWindows7に乗り換える事ができたが、小生一人ではどうしようもなくて、志摩のパソコン教室の大先生のお世話になった。T先生には感謝の極みである。

 さて、我輩の住む伊勢市内で、桜の名所と言えば、「日本のさくら名所百選」にも指定されている宮川堤の桜並木であろう。その他、五十鈴公園や外宮・内宮の神苑、御幸道路の並木、徴古館、豊宮崎文庫跡、桧尻川の土手、二見の音無山、離宮院公園(小俣町)なども、昔ながらの桜の名所である。最近、宮川ラブリバー公園(御園町)の若木の桜と、横輪町の「風輪」周辺に植えられた「横輪桜」が、桜の新名所としてクローズアップされるようになった。

宮川ラブリバー公園の桜


 ほのぼのとしたのどかな春の「銘石」を選ぶとすれば、何と言っても桜にちなんだ「桜マンガン石」であろう。この石は菱マンガン鉱やバラ輝石などから成る、ピンク色をした美しい色彩石である。当地方では、度会町の栗原鉱山跡の山栗原鉱山産の「桜マンガン石」~ 鑑賞用の研磨石(ソフトボール大)中などから良質の塊鉱が採れる。
 現地に転がっているのは、二酸化マンガン鉱の皮膜に覆われた真っ黒なズリ石であるが、割ってみると中身は実にきれいなピンク色で、磨けば観賞用の水石にもなるし、カット石にすれば装飾用の貴石にもなる立派なものだ。横輪町の風輪の店内に、栗原鉱山産の見事な研磨石が飾ってある。
 他に、桜にちなんだ石(鉱物)としては、泥質ホルンフェルス(接触変成岩)に伴って産する「桜石」と言う再結「桜石」の小さな結晶 ~ 京都府亀岡市湯ノ花産、径約0.5㎝晶鉱物があり、京都府亀岡市などで産出している。これは花崗岩質マグマの熱変成作用によって生じた変成鉱物(菫青石の仮晶を成す絹雲母や緑泥石)で、断面が桜の花びらのように見えるのでその名前が付けられた。

 時折、寒の戻りのような日もあるが、花吹雪の舞う春暖の時節となったので、籠もり勝ちの生活を刷新し、遠くに霞む奥伊勢の連山を眺めながら、又、「水石」の探石に川歩きをしたいと思う次第だ。目標は、まずは今のシーズンにふさわしい、残雪を冠した「遠山石」(とおやまいし。山水景石)の逸品である。

一之瀬川産、伊勢赤石の「遠山石」~ 左右幅約23㎝





 

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