◆ 安濃郡美里村(現在は津市美里町)桂畑のペグマタイト
笠取山(海抜828m)の東麓に位置する桂畑は、かつて良質の石墨(地元の俗名はオンニャク)を採掘した場所として知られているが、当地は花崗岩ペグマタイトの鉱産地でもある。 桂畑の村落より奥は、南長野川が西方に深い河谷を形成し、アスファルト舗装の林道が谷川沿いに通じている。この林道を進むと、村落から約1kmの地点に簡易水道の水源地があるが、この手前辺りから林道右下の南長野川に流下する小谷が現れ、土石流で埋まりながらも押し出された土砂が、時には林道にまで達している。
小谷に散乱する角礫は、殆どが縞状黒雲母片麻岩であるが、この中に石英、カリ長石等より成るペグマタイトの岩脈由来の礫があり、黒雲母や電気石、鉄礬石榴石などの結晶を含み、特に小指大程の柱状結晶の電気石が目を引く。
途中で小橋を渡り、左岸沿いに進むと、積算距離2.5kmの地点に、右手の長野城址に登る新設林道(高狭ヶ野線)があり、その登り口の崖面に幅数mにわたって、片麻岩相の中に珪化帯がある。 この中に片状~レンズ状の石墨脈を含む幅数10cmのペグマタイト脈がある。 脈内からは、黒墨色の電気石や白雲母の結晶が採集出来るし、他にも同程度の脈幅のペグマタイト質石英脈があり、晶腺~晶洞を成すので、小粒ながらきれいな水晶の群晶が得られる。 この付近には、かつての石墨の採掘坑が残存するはずであるが、その場所は今は埋没し、既に消滅したと聞く。
舗装された林道は、さらに奥へと続き、随所の小谷に花崗岩ペグマタイト脈やスカルンを含む転石を見るが、積算距離5.5kmの地点で、笠取山に登る瀬戸林道へと接続する。 当地で産出が記録されている鉱物種は、次の通りである。
石墨、磁硫鉄鉱、黄鉄鉱、水晶(石英)、木蛋白石、氷長石、カリ長石、曹長石、電気石、鉄礬石榴石、ジルコン、紅柱石、珪線石、褐簾石、白雲母、黒雲母、鉄雲母、灰鉄輝石、燐灰石、菫青石
( 注:本文は平成初期に記述したものです故、現状はかなり変わっていると思います )