伊勢すずめのすずろある記

伊勢雀の漫歩…。
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続・長年仕舞い込んでいた 「 水 石 」の再吟味

2023年03月26日 | 石のはなし


彦山川産 「紫雲石の山水景石」 ~ 左右幅約30cm ~ 左右幅約10cm

 先月は、長年仕舞い込み放ったらかしにしていた荒石の中から、標準サイズの手ごろな水石を幾つか取り出し、再吟味をしてみましたが、彼岸が過ぎ桜のシーズンを迎えた今月も、いつの間にか下旬となった。伊勢の街路にも桜が開花し、春らしくなったものの雨天が続き、今月も引き籠もりに終始し、どこへも出ずじまいの内に、このまま4月を迎えそうである。

 例年なら温暖な志摩の海辺行き、春の日射しのもとで海浜を歩くのだが、高沸した車のガソリン代の高止まりと共に、加齢のせいもあってか、体がおっくうになっているみたいである。仕方がないので、もう少し暖かくなるまで、蒐集した水石の再吟味を続ける事にした。

 今回は、少し大型の水石を幾つか紹介しよう。大型の水石となると普通は60cm以上であるが、土間に積まれているのはせいぜい20cmから60cm程度のものであり、それ以上のサイズの石は「庭石」として扱われるので、いくら名石でも保管場所に困る次第である。

 大型の水石で誰しもが思い浮かべるのは、自然石なら自然美の凝縮された「山水景石」であろう。詳しく見れば、遠山石、滝石、土坡、段石、溜り石、雨宿り石、洞窟・洞門石などであるが、この他、ピカピカに研磨された色彩石や紋様石、自然石のままの形象石や化け石( 奇石・オブジェ石 ) にも見事な秀石がある。それに加え鉱物の大きな群晶なども、「美石」として鑑賞の対象となるケースが少なくない。
 水石ブームの昭和年代の半ば頃には、旅館やホテルのロビーには大型の銘石が幾つか飾られ、座敷の床の間にも立派な水石が置かれていたものである。

 伊勢志摩から奥伊勢や奥志摩地方にかけての水石としては、これまでに数々の鑑賞石が世に紹介されているが、銘石としての筆頭は、何と言っても「伊勢古谷石」と「鎧石」の自然石であろう。それらと共に、奥伊勢産の研磨された大型の「七華石」の美しさも格別である。
 残念ながら大型の「七華石」は手元には無いが、手つかずのままにしていた幾つかの当地方の「大型水石」の中から、鑑賞に値するレベルのものを取り出し、再吟味がてらそれらを紹介させて頂こう。

小萩川産の 「伊勢古谷石」 ~ 左右幅約24cm~ 左右幅約10cm


1.伊勢古谷石の 「遠山石」
 この石は、小萩川上流の沢谷より揚石した芯出し状の自然石で、左右幅は約24cmです。底面をカットし、仮台をあてがった処、深山・仙境を彷彿とする嶺峰の「遠山石」になりました。

彦山川産 「紫雲石の滝石」 ~ 左右幅約25cm


2.紫雲石の 「滝石」
 この石は、彦山川の上流にて揚石した現地性の転石で、左右幅は約25cmです。貫入した一条の方解石脈が中央に程よく懸垂し、趣きのある山水景を呈し、「滝石」としての景観は絶景です。底面をカットし、仮台に据えてみました。

伊勢路川上流産 「黒鎧石の山水景石」 ~ 左右幅約30cm


3.黒鎧石の 「山水景石」
 この石は、伊勢市南方のサニー・ロードの鍛冶屋トンネルの南口を出たすぐ下の谷川 ( 伊勢路川上流 )の産で、谷川岸の互層岩の露頭から破り出した岩盤の一部です。左右幅は約30cmです。
 節理や割れ目を充填する複数の方解石の白脈が、黒鎧石を形成する珪質岩 ( チャート ) と輝緑凝灰岩の互層岩の表面に、程良い差別溶食を受けて露われ、あたかも岩山から滴る滝流れのような景観となり、見飽きる事がない程見事な「自然美」を呈しています。
 右側の破断面と底面のみ少し擦ってあります。 仮台の台板は、欅の輪切り材を加工した市販の化粧板です。

4.紫雲石の 「山水景石」
 本稿の冒頭に掲載した写真のこの石は、彦山川の上流にて揚石した現地性の転石で、左右幅は約30cmです。嶺峰を成すチョコレート色の紫雲石 ( 輝緑凝灰岩 )のみの一枚岩ですが、貫入した複数の方解石脈が前面に3列の白滝となり、遠山形の山水景を呈しています。底面のみカットをし、仮台に据えてみました。

小萩川産 「小萩青石の滝石」 ~ 左右幅約20cm


5.小萩青石の 「滝石」
 この石は、小萩川に広く見られる緑色准片岩の薄型の転石で、 左右幅は約20cmです。「小萩青石」は仮名です。石質は剥離破れしやすく脆弱で、鑑賞石として良質とは言えませんが、割れ目や節理を充填する大小の純白の方解石脈が豊富に貫入しており、この筋脈が差別溶食によってきれいな「滝石」を形成しています。
 殆どが「鉢巻滝」ながら、小萩川は当地方きっての「滝石」の多産地であり、時には惚れ惚れする程のきれいな名石レベルの「滝石」も揚がります。
 この石の台座は、平石に合わせた彫込みの仮台で、荒石のまま据えてあります。

彦山川産 「珪質岩 ~ 珪質石灰岩の滝石」 ~ 左右幅約20cm


6.伊勢古谷石系の「山水景石」
 この石は、彦山川にて揚石をしました。左右幅は約20cmです。おむすび形の頂峰の前面中央の右寄りに、一条の小滝が程良く中腹まで流れ落ち、孤峰を成す山体の形状も佳いので、台座を彫り込み荒石のまま据えてみました。石質は、風化が進行すれば「伊勢古谷石」となる良質の珪質岩 ~ 珪質石灰岩で、方解石脈を伴うこのタイプの転石には、遠山形の名石が少なくありません。


 以下に掲載の写真は、展示用の花崗岩ペグマタイトの晶洞の一部で、昭和40年代に、岐阜県恵那郡蛭川村田原の採石場にて採集をさせて頂いて来ました。煙水晶や長石類の群晶を、「美石」として鑑賞出来ると思います。


岐阜県産の美石「観賞用ペグマタイトの晶洞」 左右幅約20cm

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