伊勢すずめのすずろある記

伊勢雀の漫歩…。
 伊勢の山々から志摩の海までの、自然史スポット&とっておき情報など…。
  感性の趣くままに-。

志摩から奥志摩にかけての海の絶景 ~ その2

2017年05月30日 | 伊勢志摩国立公園の自然と風物

浜島から眺めた英虞湾のサン・ライズ

 よく晴れわたった志摩の海は、四季を通じて様々な表情を見せてくれる。サンライズ(日の出)の夜明けの海やサンセット(日没)の夕映えの海は、朝紅(あさくれない)や夕紅(ゆうくれない)、さらに条件によっては茜雲(あかねぐも)や紫雲(しうん)が漂い、感無量の海景を見せてくれる。
 各地に設備された特定の展望台以外にも、当地には隠れた絶景ポイントが数多くある。


西山(半島)の「慕情ヶ丘」から眺めた英虞湾~対岸は賢島


登茂地から眺めた英虞湾のサン・セット


 真昼においても、入り江や岬の地形、リアス式海岸や多島海のマリン・ブルー、有湾台地のグリーン・ヒルなどが織り成す志摩の海景は、自然美そのものである。
 志摩の風景・風物などを追って走ってみると、その日の天気や時間帯によって表情がかなり異なり、時々刻々と移り変わってゆく様子がよく解る。


磯波の打ち寄せる、真昼の和具の広浜海岸


磯波のぶつかる、真昼の甲賀の城ノ崎の岩場


御座の日和浜の南端から眺めた岩井崎


 志摩地方から奥志摩にかけての海岸は、東西に広がっている場所が多いので、太陽との位置関係によって海の色が全く変わってしまうし、月齢による大潮・中潮・小潮の違いや、波浪、うねり、凪、引き潮、満ち潮などの潮時(しおとき)の差によっても、微妙に変貌してしまう。
 それに、荒磯や砂浜の渚に打ち寄せる磯波(寄せ波や砕け波、大波・小波、漣など)の表情を入れると、全く同じ風景は皆無と言って良い。


名田漁港の突堤より、明神島を前に海女漁を撮影


浜島海岸から眺めた、英虞湾口の外洋~左に突き出した山は御座岬


片田の大野浜から眺めた、真昼の麦崎


 昨今は、暴風時の高潮や津波の対策で、入浜となっている漁村等の海岸には、波消しブロックがぎっしりと積まれ、防波堤も補強され随分高くなった。
 海岸に人造の地物(じぶつ)が多いと、海景の自然美が半減してしまうので、志摩の海景写真を撮る時は、自然の風景の美しさと共に、なるべく昔ながらの素朴な風物のみを念頭に、各地を探索している次第である。


伊勢町の阿曽浦大橋から眺めた、贄湾の湾奥


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伊勢志摩 ~ 奥伊勢地方の「紋様石」(もんようせき) あれこれ

2017年05月03日 | 石のはなし

紫雲石の研磨面に露われた、夜景のような紋様~一之瀬川産


砂質岩表面の残存石英脈が示す、女性の紋様~藤川産

 伊勢志摩から奥伊勢地方(度会郡内と旧多気郡宮川村)にかけては、県内屈指の水石の産地でもある。
 既に、このブログで紹介したように、三重県を代表する銘石「鎧石」をはじめ、昭和年代の半ば頃より、伊勢古谷石や七華石、紫雲石、龍眼石、梅林石、五色石など、数々の名石を世に出して来ているが、支流を含む宮川水系とその流域が、西南日本外帯地質区の三波川変成帯~秩父累帯に属し、結晶片岩類や石灰岩の他、中・古生層を構成する各種の堆積岩が豊富に産する事による。
漂礫の表面に偶然に浮き出た「蝶の紋様」


 水石には、山水景石や形象石、色彩石などと共に、「紋様石」という石がある。石面に花模様や樹木等の植物、鳥、獣、魚類、昆虫などの動物、人物の姿や顔、地物(じぶつ)や建物、船舶、風景などの形姿が、紋様となって表れた自然石である。


岐阜県根尾谷産の銘石「菊花石

 その最もたる銘石は、「菊花石」と「梅花石」であろう。菊花石は、輝緑凝灰岩などに含まれる、方解石などの放射束球顆状の鉱物の破断面が、正に菊の花が開いたように岩石中に露われた紋様石である。
 梅花石は、石灰岩などに含まれる、ヘテロクリニディ属のウミユリの化石の断片である。


岩手県道又産の銘石「菊寿石」~別名、黄金菊花石とも称した(放射束針状の鉱物は、頑火輝石である)


 伊勢志摩~奥伊勢地方では、同質の岩石はあっても、これらの紋様石は産出を見ない。類似品に放射束針状の霰石や、方解石の結晶粒の集形脈が、研磨によって花柄模様のように浮き出た、擬似梅花石があるぐらいである。


紫雲石の研磨面に露われた、方解石の「白花の紋様」~彦山川産


 当地方の紋様石の代表は、かつて「宮川梅林」とか「宮川桜」と呼称した水石であるが、最近になって、栗原鉱山跡の珪酸マンガン鉱や炭酸マンガン鉱の研磨石の中には、錦蛇の模様ような「蛇の目風の紋様」を呈する、かなりきれいな鉱石がある事がわかった。

栗原鉱山産のマンガン鉱石を研磨して出現した、「花柄の紋様石」


 紋様石には、岩石中に点在する杏仁状の方解石粒などや、斑晶を成す鉱物質、さらに堆積岩に見られる特殊な堆積構造や、鉱化作用、変形、変質、圧砕などよって二次的に生じた紋様等、最初から岩石中に含まれていて必然的に露われたものと、風化、溶食(溶解侵食)、温泉水などの染込み、海水による塩かぶれなど、二次的に生じた模様が、偶然に石の表面に露われた紋様石がある。
 後者は、殆どが唯一無二の産出品である。

小菊のような紋様を成す、半深成岩の研磨石~一之瀬川の転石


 後になったが、タイトルに従って、我輩が当地方を探石する中で見つけた秘蔵の石や、揚石後に研磨によって露われた紋様石を、珍石・奇石も含めて幾つか紹介しよう。

栗原鉱山産の桜マンガン石(左)と、白花の浮き出た南伊勢町河内産の紫雲石(右)


 1.梅林石~岩石は主に杏仁状輝緑凝灰岩であり、宮川本流の他、支流の一之瀬川、藤川、横輪川など、伊勢市の南部から奥伊勢の各地に産する。

当地方に多産する「梅林石の研磨石」~一之瀬川産」


 2.花柄模様の浮き出た紫雲石~伊勢市横輪町から南伊勢町の伊勢路川上流にかけてと、南伊勢町(旧、南島町)河内の採石場の他、彦山川や藤川の上流にも希に産する。


溶食を受けてサバ花状になった、紫雲石中の方解石脈~藤川の源流付近産


 3.志摩の海岸産の稲妻模様の浮き出た紋様石~志摩市大王町名田の大野浜などに産する階段状の層内断層を伴う現地性の漂礫で、珪質岩(チャート)や泥質岩(主に頁岩)のほか、砂質岩(砂岩・硬砂岩)や葉層を挟む互層岩にも見られる。

稲妻模様の浮き出た、志摩の海岸の漂礫~名田の大野浜産

艦船のような模様の浮き出た、志摩の海岸の漂礫~名田の大野浜産


 4.栗原鉱山跡産の「蛇の目錦石」(仮称)・他~珪酸マンガン鉱や炭酸マンガン鉱の研磨石に見られる、錦蛇の模様のような、蛇の目模様の紋様石である。マンガン鉱物の生成に起因した、複数の鉱物の共出した集合体である。


最近見出した、栗原鉱山産の研摩した「蛇の目錦石」


栗原鉱山産の研磨した「桜マンガン石」


 5.偶然に生じた紋様石~転石を成す角閃岩などの表面に、曹長石等の溶食残脈が残存し、偶然に紋様となったもので、五十鈴川の川原や横輪川の下流によく見つかる。


角閃岩表面の残存曹長石脈が示す、特異な紋様~五十鈴川産


角閃岩表面の残存曹長石脈が示す、「乙女の祈り像」~横輪川産


 他に、宮川の川原では、石英脈の一部が紋様を示すものや、チャート中の分泌石英質脈の筋模様等が、転石の表面に露われ、いろんな紋様を呈する石が産する。

赤色チャートの転石に露われた、樹枝状の珊瑚模様~一之瀬川上流産


白チャートの破れ目に皮膜を成す、動物模様のアロフェン?~一之瀬川産


方解石の筋脈の綺麗な「紫雲石の研磨石」~彦山川産
アルファベットの「文字石」~左のV字模様は五十鈴川産の転石、右のWは小萩川産の転石片

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