伊勢すずめのすずろある記

伊勢雀の漫歩…。
 伊勢の山々から志摩の海までの、自然史スポット&とっておき情報など…。
  感性の趣くままに-。

ロシアへの隕石落下被害から…。

2013年02月20日 | 科学エッセイ
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 先日、ロシアのチェリャビンスク州を中心に、白昼、隕石の落下があり、猛スピードで大気圏に突入し、通過後に上空で爆発した。その際の衝撃波が複数の都市に被害を及ぼした。隕石の落下に伴って生じた、このような空振による間接的な被害は、近年希に見る現象で、紛れも無く天災そのものであった。死者こそ出なかったが、建物の損壊と共に、多数の怪我人など人的被害も少なく無く、写真や映像によって、全世界に大きく報道された。 現地一帯に落下した隕石のかけらも、幾つか発見された。 そもそも隕石の落下現象は、我が国においても、昔から数年~10数年に一度はあった事であり、屋根に穴が開いたなど、被災らしき例も数10年に一度の割合で記録されている。それゆえ、さほど驚く事でもないのだが、小惑星起源の隕石が少しばかり大きかったのと、丁度、別の小惑星が、観測史上最も近くまで地球に接近した日時と重なってか、国際的に話題を呼んだ。 もし、日本の大都市だったらとの憶測もはたらき、おりからの原発施設内の活断層の問題や、北朝鮮のミサイルの発射問題、そして最悪だった先の関東・東北大震災や、その後の除染問題等々もあってか、日本中に衝撃が走った。このような被災現象は、全くの「想定外」だと、為政者や原発関係者からは、お決まりの文言も飛び出した。  地球上には、目撃例こそ少ないが、10分間に一個は、ソフトボール大の隕石が落下しているとさえ言われている。その多くはだだっ広い海洋と大陸なのだが、数年に一度は日本列島にも落ちている。 ところで、我が国は世界で一番数多くの隕石保有国であり、その殆どが南極大陸の雪氷原で採集された「南極隕石」である。その数現在では優に10,000個を越えている。国内で発見されたものや、各地に落下した隕石についても、数10個が国立科学博物館等に保管され、一部は展示されている。 そのほか、歴史上の過去に拾得された隕石も幾つかあって、各地の神社仏閣の御神体や寺宝として、人目に触れる事無く秘蔵されていると言う。
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 我輩もコレクションとして、海外の隕石を数個持っている。いずれも東京にて開催された国際ミネラルフェア等で購入したものだが、海外では隕石ハンターやバイヤー、それに集積した標本を取り扱う標本商も多数いて、我が国とは大きく事情が異なる。 今回のロシアの隕石も、拾得者は既にオークションに出品していたり、酒代として売却するなど、アカデミー当局の採集量より、商品となったものや個人の所有物となったものの方が多いとみられる。 隕石の種類は、大きく分けると「石質隕石」と「鉄質隕石」(隕鉄)、そしてそれらの入り混じった中間的な「石鉄隕石」である。ロシアへの落下隕石は、どちらかと言うと鉄を一割ほど含んだ「石質」のようだ。 石質隕石の特徴としては、大気中での燃焼皮殻と母斑(粘土を親指で押したような表面の窪み)が見られ、又、内部組織の特徴として、コンドリュールと呼ばれる輝石などから出来ている小さな「球粒」を有する事である。Mitouroku_inseki_02
 このような組織のあるものが多くて、一般に「コンドライト」と呼ばれているが、中には小球粒の全く見られない非コンドライトや珍しい炭素質隕石もある。 隕鉄の方は、殆どがニッケルを含む一種の鉄合金であり、強い磁性と共に比重が大きくて重さがあり、切断した研磨面には、「ウィドマン・ステッテン模様」と称する独特のモザイク状の模様が現われる。Gibeon_intetu_02
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 中間的な石鉄隕石には、ニッケル鉄などの含有比率や、含まれる鉱物の種類や組み合わさり方などで、様々なタイプがあるようだが、一番珍しくて貴重なものは、「パラサイト」と呼ばれる、半透明の橄欖石(オリビン)の結晶とニッケル鉄より成るタイプだ。非常に高価な隕石である。おそらく、地球内部の奥深いマントル下層(外核付近)には、たくさんあると思われる物質なのだが・・・。
Sekitetu_inseki_00
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 日本では、落下した隕石や新発見の化石など(遺跡から出土の埋蔵文化財としての遺物を除く)が話題となると、かつては、研究用の名目で大学の大先生や博物館等の研究機関が、保管証一枚を残して引き取って行ったり、特に子供の場合は、取り上げ同然に、寄贈をよぎなくされたりするのが慣例であった。 中には私物としてこっそり持っている秘蔵家もいるようだが、この「天の恵」の貴重品に対して対価を払わずに、発見者(拾得者)にはその名誉だけを与え、いつの間にか公共物?に化けてしまった例が、数知れずにあるのだ。新種の恐竜の化石などもしかりであろう。 そんな話しを聞く度に、地方公共団体にしろ国家にしろ、何て国なんだ・・・ と、よく思ったものだ。 砂漠や大草原、裸氷よりなる氷床原などのある大陸の国家などでは、落下の確率も高くて、隕石ハンターらが多数くいる。金属探知機はもちろんの事、ヘリコプターなども繰り出し、上空から日夜探索をしていると言う。 特に北アフリカの砂漠で見つかった隕石は、最近、鉱物標本として業者により国内に輸入され、鉱物標本商を経て首都圏などに出まわっている。海外の例に倣って、グラム単位で計って幾らの売り買いが多い。 さて、隕石の落下に関連して気になるのは、我輩の居住地の伊勢市の界隈や、三重県下における過去の落下例である。伊勢市では、子供の頃に聞いた話として、戦前だったか戦時中だったか昭和の初期に、尾上町の「虎尾山」に隕石らしき物がぶつかった、との言い伝えを記憶している。
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 又、鳥羽市では生浦湾(おうのうらわん)の湾口にある大村島だったか麻倉島(おぐらじま)だったかにも、隕石が落下したとの話を聞いた事があった。真偽のほどは定かではなく、いずれも眉唾ものの話ではあるが、地元民の一部に伝承されている事も事実である。 三重県下となると、もっと数多くある話だと思うが、記録も記述も無くては調べようが無い。 ただ、昔からの地名に、「星」にまつわるものが幾つかあって、興味をそそられる次第だ。そのひとつに、「星落石」(ほしおちいし)と言う場所が櫛田川中流の香肌峡(松阪市飯高町作滝)にあるし、「星合」という地名も三雲町(松阪市)にある。他には「星川」が、桑名市と名張市にある。 地名については、昔からの伝承でもあり、別に学術的に検証する気はないが、隕石の落下に由来しそうな地名なので付記した次第だ。やはり地名の研究は、その土地の郷土史家に委ねるのが一番である。 さて、このブログを締め括るにつき、我が国では、隕石についての物珍しさはあったが、市井においては商品としての価値観が未だに乏しく、庶民が「隕石ハンター」や埋蔵金探しのような振る舞いを社会生活の中ですれば、即「気印」(キじるし)と思われかねない。 学校の先生ならともかく、学者を装ってもそれ程真剣に相手にされないであろう。巷の何々博士(はかせ)や自称研究者、そして石キチガイ的なコレクターらは皆、我が日本では特殊な人種なのであろう。
 ? ブログに掲載した隕石(隕鉄)は、全て「伊勢すずめのコレクション」です。




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奥志摩・冬の風物詩

2013年02月11日 | 奥志摩
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 年が明け、1月が過ぎ、2月に入って早や立春も過ぎた。春間近な寒梅の季節である。伊勢の街は今が一番寒々とし、底冷えがする。しかし、奥志摩に行くと、北西の季節風が紀伊山地から続く奥伊勢の山々にさえぎられてか、少しは暖かいはずなのだが、今年は南からの海風も何故か冷たい。 道端には、枯れ果てた浜木綿の球根がむき出しになっており、海岸道路から少し奥まった山あいに入ると、こじんまりとした谷地いっぱいに築かれた棚田も乾燥しきっており、周囲には葉を無くした冬枯れの雑木が居並び、殺風景なこの季節をひっそりと物語っている。野鳥もヒヨドリだけが盛んに鳴いている。
 やはり、冬の風物となると、まず荒磯から眺める真っ青な奥志摩ならではの海原であろうか。 浜島から宿田曽に辿っても、岬角間の砂浜には誰もいない・・・。コンクリートの防波堤に干してあるワカメが、冬の奥志摩ののどかさを示してはいるが、真夏のような観光客など一人としていない。あの真夏の賑わいがウソのようである。 二月の上旬、好天に誘われ冬の奥志摩へと車を走らせた。
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 田曽浦漁港の外れの防波堤には、磯釣りの天狗たちが何人か釣糸をたらし、磯の大ものを狙ってか、気長に糸先の浮を眺めている。誰もが完全武装の防寒着である。大潮前の中潮(なかじお)ゆえ、魚類も根魚ぐらいで、余り動かないのか、半時間ほど車中から眺めていたが、いっこうにかからない。今の時期はメバルかアイナメぐらいであろうか。餌取りの小っぱグレ(メジナの小魚)では仕方が無い。余り釣果はなさそうだ。
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 ここは、年間を通して磯釣りの本場、著名な大物磯魚のメッカであり、平日でも釣り人たちが車を乗りつけている。我が輩もかつては、磯釣りに興じた事もあったし、素もぐりで魚を突いたり鮑を採ったりした事もあった。
 冬の風物詩としては、まあこんなところであろうか・・・。
 ここ田曽岬に続く荒磯は、山地の崖崩れが一段と進行し、海食崖形成の進行現場でもあるのだ。
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