伊勢すずめのすずろある記

伊勢雀の漫歩…。
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「 季節感のある水石 」 についての雑感

2022年02月13日 | 石のはなし


雪山の情景を呈する 「遠山石」( 横幅約11cm の珪質石灰岩・彦山川産 )

 水石の趣味を始めてから数十年が経ち、健康維持の為もあって、今も時々伊勢市近郊の山や川、海岸などへ探石に出かけている。 昨今は、目を見張るような見事な山水景を呈する転石や、奇抜な形状の奇形石などには、滅多に出くわさないが、それでも自然の真っ只中で、時を忘れていろんな石を見回るのは、趣味者ならではの又とない楽しみである。

 ここ1~2年は、新型コロナウイルスの蔓延もあって、遠出は控えているが、市内には五十鈴川と宮川が流れ、伊勢湾の南岸には二見浦から神前岬 ( こうざき ) にかけての砂利浜や荒磯がある。 このうち宮川は、川原がだだっ広くて丸っぽい転石ばかりなので、滅多に行く事はないが、少し遡った支流の横輪川や一之瀬川には、これまでに何度も出かけている。

 最近は、自採石の水石コレクションの整理をしながら、四季折々に合うような名石を吟味し、座右に持って来て置き、しばしば眺めるようにしている。 そんな中で「季節感のある水石」をいろいろと、以下のように考えてみた。
栗原鉱山跡産の 「桜マンガン石」( 研磨水石 ~ 左右幅約10cm )

 春から初夏にかけては、何と言っても桜のシーズンがメインなので、「桜マンガン石」を筆頭にし、新緑を彷彿とするような「ヨモギ石」や淡緑色の「遠山石」などがあげられる。
 夏はと言えば、まず見応えのある涼しげな景観の「滝石」を置いてみたい。 さらに複数の滝筋を伴う峻険な嶺峰や連峰の山水景の「遠山石」( 古谷石や伊勢古谷石など )、さらに程良いサイズの「溜り石」があれば、柄杓などの添配を添え、水盤に置いてみるのもよさそうだ。
伊勢市南方産の名石 「伊勢古谷石」( 珪質石灰岩 ~ 左右幅約14.5㎝ )
 秋は何といっても、全国的な銘石である「菊花石」が究めつけであるが、残念ながら三重県下では産出しない。 しかるに、類似の花柄模様の入った紫雲石などの「紋様石」で我慢をするか、購入水石の「菊花石」があれば、引っ張り出して眺めるしかない。
 他に取り上げるとすれば、晩秋の紅葉に合わせた「五色石」や「錦紅石」、侘び寂を感じさせるような「茅屋石」( くずやいし ) も、石によっては晩秋向きかも知れない。

スライスカットをした一之瀬川産の 「梅林石」( 研磨水石 ~ 左右幅約15cm )


 初冬から初春にかけては、季節感のある紋様石として「梅花石」や「梅林石」があるが、頂峰や嶺峰に白雪のかかった情景の「遠山石」や、残雪の景観を呈する「山水景石」の他、霜の降りたような「土坡」や「段石」「島形石」なども捨てがたい。


厳冬の季節にふさわしい積雪を呈する 「山水景石」( 横輪川産の蛇灰岩 ~ 左右幅約15cm )


 そして新年 ( 新春 ) の年頭には、その年の干支にちなんだ「姿石」( 形象石 ) や「紋様石」があれば、是非とも玄関や床の間など、部屋飾りの「置物石」にすべきであろう。
 本年は「寅年」なので、水石としては、著名な滋賀県・瀬田川産の「虎石」なのであろうが、三重県下では、類似の「黄鎧石」しか産しない。
奥伊勢・藤越え付近の小谷産 「残雪景の遠山石」(「紫雲石」 の化け石 ~ 横幅約17㎝ )

 さて、最後にいろんな名石の中で、季節感の難しいのが、三重県産では「那智黒石」と「鎧石」で、他にも「龍眼石」や「朝熊石」「巣立ち石」などがある。
 この他にも、付記をするとすれば、近年に志摩の海岸で筆者自らが見つけ出した、稲妻模様の紋様を呈する「断層石」があるので、これは夏季の水石にしてみたいし、「七華石」のきれいな研磨水石などは、哀愁の漂う黄昏暮色の夕映え空に見立て、夏から秋への水石にはと思いつつ、さらに多種・多様の県内産の「紫雲石」( 層状岩 ) の研磨水石に至っては、夜明け前の東雲 ( しののめ ) に見立ててみたい。



加工をした 「造形の菊花石」( 母岩は伊勢市南方産の珪質石灰岩 ~左右幅約18cm )

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