遅れ気味だった紅葉が、見ごろとなった途端に師走となり、当地伊勢地方も強烈な寒気に包まれた。暖冬どころか、四国は大雪に見舞われ、凍死者もでる始末…。四国を吹き抜けてきた冬将軍が紀伊山地を乗り越えて、伊勢平野にまでやってきた感じである。
東紀州から伊勢志摩にかけては、今のシーズンとしては、珍しい気象現象である。天気図は、等圧線が縦じま模様になっていて、いわゆる西高東低型の冬型となっている。日本海側(裏日本)なら豪雪も例年通りと言える現象が、雪こそ降らなかったものの、表日本の東海地方にまで寒波が及んだこのようなケースは、師走の初めとしては大変希である。
寒さには閉口するが、このところ好天が続くので、寒風をついて志摩地方から南伊勢町を経て、奥伊勢の度会町へと車を走らせてみた。
志摩の海は真っ青であったが、外洋は波浪が怒涛となって海岸に打ち寄せていた。阿児町の市後浜から名田の大野浜を経て、先志摩半島の先端「御座」へと向かった。途中、和具の広浜に寄ってから、一気に御座岬の裾に位置する日和浜の南端へと向かう。御座の白浜も今は誰もいない。ウミネコの群れが渚に遊んでいるだけだ。真夏の賑わいが嘘のようである。
外洋側に出ると、中生代白亜紀の地層がそそり立って海食崖を形成し、崖面に褶曲構造や断層を見る事が出来る。砂岩・泥岩などの互層が実にきれいな縞模様(層理)を呈している。
午後は、英虞湾を回る国道260号線を走り、浜島から宿田曽、そして五ヶ所湾を周り、約1時間半ほど走って、旧南島町の贄湾まで行く。こじんまりした大衆食堂で昼食をとって、南島大橋、阿曽浦大橋を渡り、阿曽浦漁港へと行ってみた。入り江となった海は、中潮(なかじお)のせいか、昼下がりであるのにあまり潮が引いていない。
うすら寒い海風にさらされて海景を見渡すと、奥まった入り江だけに波は静かである。時折、水道を走る小型漁船のシュプールが、大波となって岸辺にぶつかりしぶいている。
冬至に近づいた太陽は、はるか南の空の中ほどに燦燦と輝き、青空を背景にやたらとまぶしい。ここ、旧、南島町の海景は、志摩地方や紀州の海とは又違い、異国情緒を醸して「南国」を思わせる感がある。
帰りは、道方から新能見坂トンネルを抜けて、奥伊勢の度会町へと入り、一之瀬川左岸の県道を伊勢市内へと向かった。途中、畦地付近の紅葉のきれいな川原に下りてみたが、色づいてはいたものの、寒波のせいかかなり葉を落としていた。
川原の転石も、このあたりは「ごろた石」ばかりであり、冷たい川風に晒されては探石する気にもならなかった。