伊勢すずめのすずろある記

伊勢雀の漫歩…。
 伊勢の山々から志摩の海までの、自然史スポット&とっておき情報など…。
  感性の趣くままに-。

今年の正月も、晴天に誘われて "探石の川歩き" でスタート!

2018年01月25日 | 石のはなし

犬の形をした「伊勢古谷石の姿石」~ 昭和年代に旧大宮町で入手・左右幅約8cm

 昨秋の台風後に、伊勢市近郊の水石の産地である河川の様子がずっと気になっていたので、正月の三箇日は、その見回っていなかった一之瀬川の川原を重点に探査する事にした。
 冬日和の内にと、小寒い川風に晒されながら、昨年に続き今年も探石目的の川歩きでのスタートとなったが、さすがに年始から川や山に入る人は誰もいない。


新年の一之瀬川 ~ 度会町畦地付近にて元日に撮影


 正月休みを利用し、海外旅行や温泉旅行に行く人、スキーやゴルフ、魚釣りに行く人、初詣に出かける人、郷里に里帰りし実家で家族らとのんびりと過ごす人、等々は極く当たり前であり大勢いる。
 仲間と共に正月休みを世間一般社会の中で楽しむか、独りで我が究極の趣味を自然界の中で楽しむかは、人それぞれであっていいし、かつて島倉千代子さんが歌ってヒットした歌謡曲にあったように、「人生いろいろ、男もいろいろ、女も… 」 だと思う。


 そんな事を思い浮かべつつ、今年は戌年なので、犬の「紋様石か形象石」でもあればと考えながら、極端に水流の減った一之瀬川の浅瀬を渡り歩き、ブッシュに遮られていて沿道や橋からは見えないような、隠れた川原に期待を寄せた。 だが、残念ながらそのような「名石」には巡り遭えなかった。
 しかしながら、感じの良い梅林石や滝石等は何石か揚石出来た。


二見町にある真言宗の山寺「潮音山 太江寺の本堂」


 ちなみに、犬の紋様石と言えば、二見町にある真言宗の山寺「潮音山 太江寺」の境内に、動物供養の「愛受院」という寺院があって、その傍に愛犬の守り石なる「お犬石」という霊石が安置されている。 横にはこの霊石の由来を記した立札があり、格子窓越しに覗き見る事が出来る。

「お犬石」を安置した祠


 高さ・幅が数10cm程のひと抱えもある石面祠の中の霊石「お犬石」
に、残留石英脈の白い筋模様が、正座した格好の犬の紋様をくっきりと浮き出しに描いている。
 かつて、よく目にした日本ビクターの看板犬さながらである。
 石好きには、一度見たら忘れようの無い超名石(霊石・銘 「お犬石」)であろう。

二見町江の町道から上る、太江寺参道の入口


太江寺参道石段の中腹にある山門


 古刹・太江寺は、犬猫供養の墓地のあるお寺としてもよく知られているが、立派な山門や石段上の本堂、愛受院の他に、元興玉神社や稲荷社等もある。
 伊勢地方の西国巡礼・霊場の一番札所でもあるので、一度は拝観をされたい…。


彦山川にある、ロック・フィル堰堤の滝


 さて、一之瀬川支流の彦山川や小萩川にも足を踏み入れた処、新年早々にお宝級の名石は得られなかったが、鑑賞に値するレベルの水石を幾つか見つける事が出来た。 その内の珍しそうなものベスト4を、掲載画像の写真で紹介しよう。


1. 一之瀬川産の 「遠山形の梅林石の化け石」
 この石は遠山形ですが、表・裏で形状の一変する「きつね石」です。 芯出し研磨をした表側の面は、白梅の点在するごく普通の梅林模様の山水景石ですが、裏側は溶食窪がさながら中国の寿山石を加工した、「楼閣山水細密彫り」を眺めるような「溶食・化け石」となっています。 左右幅は約20cmです。
「遠山形の梅林石の化け石」~ きつね石表側の研磨面です
「遠山形の梅林石」~ きつね石裏側の溶食窪です
2.彦山川産の 「伊勢赤石の白糸滝のような滝石」
 この石は、赤鎧石を形成する互層に挟まれる層状岩由来の転石です。 当地方の赤色チャートの水石は、かつて「伊勢赤石」と呼ばれていましたが、時に、貫入し溶食を受けた方解石脈から成るきれいな滝石を形成しています。 特にこの石は、平行する節理に貫入した方解石の細脈が程よく溶食されていて、見るからに数条の白糸を垂らしたような景観を呈しています。 左右幅は約13cmです。

伊勢赤石の白糸滝風の「滝石」です


3.一之瀬川産の 「青玉石化した葉層のむき出した紫雲石系の化け石」
 この石は、歪な方形をした紫雲石系の化け石です。 介在する青玉石化した濃緑色の葉層がむき出し皮殻状なっていて、極めて珍しい形状を呈していたので、この箇所のみ艶出し研磨をし、台座に据え付けてみました。 当地では彦山川の上流が原産地で、そこから流下したものと思われます。 左右幅は約14cmです。

青玉石化した箇所を研磨した、「紫雲石系の化け石」です


4.鍛冶屋トンネル付近の沢で見つけた 「糸掛石」 (糸巻石とも言う)
 この石は、網目状を成す葉片状の石英脈が突出し、白色系のチャートと思われる母岩は、全てボロボロに腐植土(黒ボク)化していたので、これを全部抉り落とした処、きれいな糸掛石になりました。 現地性の沢落石ですが、山肌の風化帯由来の土中石(どちゅうせき)になります。 表面の黄色は自色では無く、水酸化鉄による汚れがへばり付いているもので、本来は白色です。 左右幅は約12cmです。

沢落ちの土中石の風化土を抉り落とした、「糸掛石」です


 新年早々、水石の探石三昧で正月を堪能し、早くも下旬となった。 暦の上での20日の「大寒」が過ぎたとたん、南岸低気圧が発達しながら四国沖から遠州灘を通過した事もあって、22日の月曜日は伊勢市内も一日中大雪となった。 翌朝には路面の雪は殆ど融けていたものの、日陰には積雪が残り、23日以降もずっと寒気に覆われ、例年に無い程の底冷えの厳しい 「おお寒い日々」 が続いている。



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昨年末から新年「戌年」の初頭にかけて …。

2018年01月15日 | 随筆・雑感・回想など

初冬の国府白浜海岸の海景 ~ 昨年末(12月29日)に撮影

 新年が明けて、平穏のままに松の内が過ぎ、一月も中旬に差しかかった。 ここ4~5日は、日本海を通過した低気圧の後で、日本列島は冬型の気圧配置となり、伊勢の町は好天が続いているが、寒気に包まれて例年に無い程の冷え込みである。
 9日から10日にかけては、冷い雪風が舞っていたものの、幸い冬季の季節風による北風は意外と弱く、冷え冷えとはするものの、日本海側の大雪に比べれば、不思議な程穏やかな冬日和に恵まれている。

 今年は戌年になるが、干支の動物は「犬」である。 犬についてまず最初に連想した言葉は、昔のいろは… に始まる「犬棒ガルタ」の冒頭にあった「犬も歩けば棒に当る」であった。
 人によっては「介護犬」や「警察犬」、渋谷の「愛犬ハチ公」を連想する者も居れば、かつてのテレビの名画「愛犬ラッシー」や、古い漫画の「のらくろ」等々…と、いろいろであろう。
 我輩は、犬~棒のフレーズの後、鮎川哲也の推理小説で、三重県が出てくる「戌神は何を見たか」(講談社文庫・他)と、何度か映画化された「犬神家の一族」(横溝正史 著、角川文庫・他)を思い描いた。


春先に咲く犬のふぐり(オオイヌノフグリ)


 そう言えば、巷の草花に「犬のふぐり」と言うのがあり、近頃よく耳にするが、「ふぐり」と言う語を辞書で調べてみると、「陰囊(いんのう)の事」とあり、字例に「松ふぐり→まつかさ」「犬のふぐり→ゴマノハグサ科の二年草」とあった。
 春先になると淡紅紫色の小花が咲くらしいので、多くの若い娘さんらはおそらくこの言葉の意味(イヌのキンタマ)を知らずに、単にきれいな春の草花の名前、ないしは初春の挨拶用の季語などとして、ごく気軽に使ってみえるのではないかと思うのだが…。

 ついでに調べてみたが、他にも「犬何々」と言う名前の植物はかなりたくさんあった。 「犬黄楊」(いぬつげ)、「犬山椒」(いぬざんしょう)、「犬蓼」(いぬたで)、「犬サフラン」、「犬薄荷」(いぬはっか)等々。
 ちなみに「犬ハッカ」は英語の「Cat mint」の和訳らしく、日本語に「猫ハッカ」と言う言葉は無いので、和訳によって「猫」が「犬」に化けてしまっているのは、摩訶不思議で実におもしろい。
 最後には、「犬猿の仲」と言う言葉も思い浮かべたが、両者にまつわる語例を2~3辿ると、「犬は人に付く」とも言い、「犬死に」や「犬の遠吠え」があり、猿については「猿芝居」だとか「猿まね」、そして「猿も木から落ちる」とあった。

 さて、昨年末は、昨秋の水害により故障を繰り返し、もうダメだろうと諦めていた愛車のラシーンが奇跡的に直り、何とか動くようになって、クリスマスの前に戻って来た。 この間、知人のモータース(修理店)には大変お世話になり、合掌を禁じえずに感謝の極みである。
 不具合箇所の精密な検査や修理にひと月半は優にかかり、二ヶ月分の生活費が吹っ飛んだが、良く直ったなと、久しぶりに乗る愛車に感極まった次第だ。

 年の瀬は、大晦日(12月31日)の小雨を除いて、クリスマスから正月の三箇日過ぎまでは、ずっと好天が続いていた。 伊勢の町も、高速道路からの進入規制で、外来車が殆ど無く、宇治山田駅と外宮前、猿田彦神社前から内宮前にかけての参詣客の混雑を除けば、外気は冷たいものの実に静かである。


開通した新バイパス入口の「土橋」の交差点 ~ 昨年末(12月29日)に撮影

開通した新バイパスの直線道路 ~ 昨年末(12月29日)に撮影

開通した新バイパスの直線道路 ~ 昨年末(12月29日)に撮影


 年末の29日には、好天の朝から久しぶりに志摩の海岸に行ってみた。 伊勢道路から磯部町の町街地を迂回し、磯部トンネルを潜りぬけて鵜方に至るバイパス道路を通り、国道167号の土橋の交差点に向かった処、昨年はずっと建設中であった、鵜方の町街地を迂回して志摩方面に向かうバイパス道路が、交差点から先へとまっすぐに開通していた。

パールロード手前の新バイパスの下り道路 ~ 昨年末(12月29日)に撮影

 この道路はパール道路の下をくぐり、10分もかからずに国府・安乗方面と波切・先志摩方面への新道バイパス(国道167号)の交差点に達した。


国府白浜海岸の海景 ~ 昨年末(12月29日)に撮影


 左折をし、まず国府白浜を眺めに行った。 遠州灘の大海原を照らすまぶしい程の陽射しが、伊勢よりはずっと暖かくて、海風も冷たさを感じさせない潮風となってそよぎ、広々とした志摩の沿海はいち段と群青を増していた。 さすがに年末の冬の海には、サーファーは一人もいなかった。
 北端の海食崖は、昨秋の台風の爪跡が土砂崩れとなって荒磯の岩盤を覆っていた。

昨秋の台風の爪跡が土砂崩れとなって残っている海食崖 ~ 昨年末(12月29日)に撮影


 しばし時を置いた後は、点在する沿岸の村落を結ぶ海岸道路(県道21号線)を南下し、漁船の係留する甲賀漁港と、その続きの城の崎に寄って海景を眺め、いつものように小狭い名田漁港に立ち寄った。

漁船の係留する年末の甲賀漁港 ~ 昨年末(12月29日)に撮影

甲賀漁港から続く城の崎の海景 ~ 昨年末(12月29日)に撮影


 丁度昼時なのか、漁から戻って来たウエットスーツをまとった海女達を乗せた海女船(あまぶね)に出くわした。 冬場は鮑は禁漁と聞いているので、海女漁の獲物はサザエの他、ウニやナマコ、他にはテングサ等の海草採りなのであろうか…。

ウエットスーツの海女達を乗せて、名田漁港に帰港した海女船 ~ 昨年末(12月29日)に撮影


 ひと通り名田漁港の渚を歩いてみたが、小石も程良い流木も、きれいな貝殻や珊瑚のカケラなども、目当ての目ぼしい漂着物は打ち上がっておらず、この日は写真を数枚撮っただけで戻った。


初冬の陽射しのまぶしい国府白浜の海景 ~ 昨年末(12月29日)に撮影

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