伊勢すずめのすずろある記

伊勢雀の漫歩…。
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  感性の趣くままに-。

夏の終わりに、久しぶりの探石行

2017年08月26日 | 伊勢志摩~奥伊勢のフィールド・ワーク

この日何年ぶりかで、横輪川で揚石した「蛇紋岩の名石」~ 左右幅約26cm

 今夏は、七月の下旬からお盆過ぎの八月の中旬まで、真夏らしくない天気が続いた。例年に無く天候不順のままに、ひと夏が過ぎゆこうとしている今頃になって、ようやく残暑の厳しい夏らしい陽射しの晴天となってくれた。 ここ2~3日の真夏日につられて、25日になってやっと探石に出る気になった。 6月以降、丸2ヶ月の間、自家用車の不調もあって遠出はしていない。
 この間に各地に風水害をもたらせた、迷走気味の夏台風(5号)が本土へ上陸した事もあって、川原の姿もかなり変わっているに違い無いと思われた。

 奄美諸島に襲来した後、鹿児島県から高知県の沿岸をかすめるように北上し、和歌山県に上陸したこの台風は、勢力を保ったまま和歌山県から奈良県へと進み、予想では三重県の中勢~北勢地方を直撃するはずであった。
 しかし、なぜか奈良市付近を通過した後、北方へと進路を急転し、直撃とはならなかった。ホッとしたものの、三重県を避けた事に当てが外れて少し残念でもあった。
 探石者にとっては、川原など河川の石の巣が荒れ、転石がごそっと動かない事には佳い水石は得られ無い。


角閃岩の表面に浮出た、残存曹長石脈の呈する紋様石 ~ 横輪川の転石・左は左右幅約7.5cm、右は左右幅約5.8cm


 昼前と夕方の買い物程度の外出だけで、真夏なのに室内に籠りっきりでは、心身両面の健康にも良いはずはない。 やはり夏の灼熱の太陽のもと、海や山・川など、熱射の厳しさや多少の日焼けを被っても、フィールドに出て思いきり好きな事に熱中しないと、夏が来た感じがしない。
 今の子供達は、炎天下で遊ぶ事はしなくなり、虫網を手に蝉採りやトンボ採り、カブトムシやクワガタ探しなどに熱中している姿は殆ど見かけなくなったが、心のどこかにそのような頃の郷愁と楽しさの記憶があってか、毎年のように夏の到来がフィールドへと気持ちを誘う。

 目指す探石先は、まずホームグランドとも言える奥伊勢の一之瀬川、小萩川、彦山川である。 最初に入った小萩川の渓流は、殆ど転石が動いていなく、かえって泥まみれの土砂の流出で狭い川原がかなり埋まっていた。 少し覗いただけで切り上げて、付近の小谷に入った。
 この辺りの小谷は、伊勢古谷石や龍眼石、雀石等の良石が落ちていることがある。 現地の地山(じやま)の表土にまみれて、特異な形状の山石が採れる。 付近一帯は、かつての名石の産地の一つである。
 しかし、ここも空振りであつた。


親子連れの遊ぶ、火打石の天祥橋直下の一之瀬川の川原


 次に、火打石の天祥橋の横から下の一之瀬川の本流に降り、下流方向の浅瀬を幾つか渡りながら、右岸や左岸の川原を布バケツを片手に見て回った。 鑑賞に値するレベルの水石となると、なかなか見つからない。 それでも捨てて置きがたい、そこそこの小型の転石数個を揚石し、車に戻った。

残存石灰岩の突出した、伊勢赤石の小物水石 ~ 左右幅約10.5cm

紫雲石の滝石 ~ 左右幅約12.5cm


 この日は、小萩川を見た事で支流の彦山川はパスをし、ずっと下(しも)の横輪川に立ち寄る事にした。 丁度沼木中学校の裏手に当たる横輪川左岸の川岸には、蛇紋岩体の露頭があって、川原には現地性の転石が転がっている。 ここの蛇紋岩には、方解石脈が貫入していて、程よく溶食を受けた白脈はきれいな滝石となっている。
蛇紋岩の小物滝石 ~ 左右幅約12cm


 もうどこに行っても、これはと言うような絶品は得られないなと思いつつ、500m程遡った大きく蛇行するカーブの所で折り返した処、少し大きいものの、山形の突出岩の裾に、程よく溶食された方解石の白脈の貫入した、幅広い川流れのある見事な山水景の蛇紋岩の転石があった。 行きには、全く見落とした岩塊である。
 この一石との遭遇で、いっぺんに川歩きの疲れが吹っ飛んだ。 近年希に見る程の申し分の無い名石である。 (冒頭に掲載の写真参照)

 とにかく早く帰ろうと、まだ2時を少し過ぎた程の昼下がりなのに、横輪川の上流には入らずに、早々と探石を切り上げた。

 ( 掲載写真の水石は、全て8月25日に揚石して来たものです。)

 

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