伊勢すずめのすずろある記

伊勢雀の漫歩…。
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  感性の趣くままに-。

伊勢・志摩・度会の石紀行 その4  伊勢市前山町 「式部塚の御神石」

2016年09月30日 | 伊勢・志摩・度会の石紀行


前山町の道路際にある式部塚

 9月初めのブログで、前山町の「養命の滝」について記し、その入り口付近の道路際に「式部塚」がある事に少し触れたが、この小じんまりした樹林の中に、形の良い庭石サイズの大きな石が3個鎮座している。
 大・中・小と別々に注連縄を纏い、それぞれが白石の敷かれた石積み囲い中に、御神石として祀られている。

3個の御神石を祀る、遊具のある樹林の敷地


 石の祀ってあるこの樹林は、小学生の頃からここが式部塚だと教えられてきた場所なのだが、実際の「塚」は、この目前の石段を上った地山の上にある、養命神社の境内だとも言われている。

養命神社に上る石段

山上にある養命神社の境内


 これらの石の由来や、いつの頃からあるのかなどは良く解らないが、庭石や水石を眺めるような感じで、3石共明らかにすぐ前を流れる亀谷郡川(かめたにごがわ)から揚石された、現地性の転石のように思われる。

 明治期に記された著名な郷土誌である「伊勢名勝志」(明治22年11月10日 出版、著者 宮内黙蔵)には、度会郡の「古墳」の項に、

 和泉式部塚 ~ 前山村字亀谷郡ニ在リ今、林地タリ藤原保昌ノ裔建立スト云フ後、塔ヲ山田吹上町光明寺舊地ニ移セリ 〔宮川夜話〕

 とだけ記述されている。


富士山形をした一番大きな御神石


 さて、これらの御神石の形状や石質であるが、一番大きな富士山形の尖峰を成す巨石は、石英片岩で、独立して祀られ、サイズは裾の幅が概ね1m、高さは底が地面に埋没しているので1.2 m以上はある。

隣り合わせに祀られた中・小の御神石

 他の二つは、隣り合わせて祀られており、右側の中サイズの立石形の巨石は、かなり苔むしているが、後述の左側の一番小形の餅を重ねたような、鎧状の平べったい石と同じ岩質である。最大幅は約 70cm、高さは底が少し埋没しているが概ね1m 強である。

立石形の中サイズの御神石


 3個の内の最小サイズの石は、茶褐色のサビを噴いているが、朝熊山上や朝熊川でよく見る「朝熊石」と同じ石質で、明らかに蛇紋岩化した橄欖岩又は斑糲岩である。外観は段石風の丘陵形を成し、サイズは見かけ上、幅約 60cm、高さは 40 ~ 50cm 程度である。

段石風の丘陵形をした、一番小さな御神石


 ちなみに、敷地には子供の遊具である鉄棒や滑り台、ブランコが設置されているが、殆ど遊びに来る子供らはいない。
 又、式部塚の事や、鎮座するそれぞれの神石の謂れなどを記した立札等も無い。



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残暑の中に秋の気配を感じ、「養命の滝」へ …。

2016年09月03日 | 随筆・雑感・回想など

伊勢市の名所「養命の滝」

 酷暑の続いた8月が過ぎ、9月に入り初秋となった。今夏は7月の終わりに、一度小萩川の渓流に行ったきりで、暑さに閉口していたせいもあり、8月は殆ど遠出はせずじまいで、海にも山にも行かなかった。
 例年のように、探石にも鉱物採集にも行く気にならなかったのは、歳のせいだろうか。

 ひと月も、自宅で毎日変化の無い生活に明け暮れていると、体は鈍ってくるし、脳細胞は硬化してしまう。 適度な運動と新鮮な野外での刺激によって、心身のリフレッシュをしない事には、老化が促進するだけである。
 どこかに行こうと思っても、適当な場所が思い浮かばない。それならと、9月になったのを機に、自宅に最も近い伊勢市内の名所、「養命の滝」に行ってみる事にした。

前山橋手前の道標

滝への登り道 ~ すぐ先に「養命神社」がある


 9月の初日は、早朝には涼しくて心地よい秋風のような、やや強目の西寄りの風が吹いていたが、日が昇るに従って真夏さながらの陽射しとなり、午後は厳しい残暑に見舞われた。
 昼食をとってから車に乗り、御木本道路を丸山橋の所で右折し、岡本から旭町、藤里を通り前山町に向かう道路を走る。2 km半程行くと、前山橋手前の道路の右側に「1.2 km 養命の滝」と記した立派な道標があり、道路を挟んだ目の前に「式部塚」の木立ちの繁みがある。すぐ先の前山町の交差点の角には、「宮本地区コミュニティセンター」がある。

道路際の式部塚

 道標に従って左折し、車一台がやっと通れる程の狭小な仮舗装の山道を登って行く。何軒かの民家や柿畑の間を通り抜けると、やがて藪道となり二又の分岐路に至る。ここにも道標があり、左の道を少し進むと伊勢自動車道(高速道路)の上を横切るコンクリートの跨道橋に至る。

高速道路を横切る跨道橋

橋を渡って返り見た跨道橋

 この橋を渡った所で狭い車道は終わり、この先は鼓ヶ岳に登る細い尾根道と、滝に下る羊歯の覆い繁る薄暗い草分道となる。
 以前に比べて、散策する人が増加したのか、滝へ下る小径はかなり整備され、今は散策路のようになっている。

山道の滝への分岐点 ~ 左が鼓ヶ岳に登る尾根道

滝へ下る小径

 ここに来たのは随分久しく、20数年ぶりぐらいである。滝からのせせらぎに雑じり、ツクツクボウシとミンミン蝉が夏を惜しむかのように鳴き競う中、蛇行した細谷に沿って山林を200 m程下ると、大・小二つの小規模な滝の懸かる谷奥の滝壺に至る。
 こじんまりとした目暗谷のような現地には、滝音が響くだけで、誰もいない。傍らに小さな祠があり、左側の大きな方の滝には注連縄が張られている。

注連縄の架かる「養命の滝」と、左手の小さな祠

流れのきれいな小滝

 滝の高さは目測で4mぐらいである。右手の小滝の方は約3mと言ったところか…。こちらは造瀑岩である石墨千枚岩の侵食がはっきりと解り、滝の流路が実にきれいである。
 滝壺からは細い谷川が流下し、亀谷郡川(かめたにごがわ)となって前山町を流れ、辻久留町あたりで宮川に合流し注いでいる。

滝壺から流下する細い谷川


 ちなみに、この谷川の転石は、殆どが石墨千枚岩や石英片岩、角閃岩で、これらの河床礫に雑じり、蛇紋岩、斑レイ岩など朝熊山系の塩基性深成火成岩類が少し見られるだけである。



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