伊勢すずめのすずろある記

伊勢雀の漫歩…。
 伊勢の山々から志摩の海までの、自然史スポット&とっておき情報など…。
  感性の趣くままに-。

午年につき、「馬」にちなんだ話題をひとつ ~「絵銭」のはなし

2014年01月11日 | 趣味・骨董・古道具・古書など
左は「唐人駒曳き」、右は「馬子駒曳き」の絵銭

 日本の絵銭(えせん、えぜに)は、江戸時代に庶民の間で作られた、当時の通貨をまねた私鋳の玩具銭貨(おもちゃのお金)の事である。なんだ模倣のビタ銭かと一笑する人もいるが、現在でも縁起物や厄除けの「福銭」(ふくぜに)や、「呪い銭貨」(まじないせんか)として鋳造されている。
 古銭に魅了され、病み付きになったコレクターは、古今あとを絶たず、希少価値や骨董的な道楽の楽しみもあって、古銭を集める趣味者は意外と多い。その人達の中には、特に「絵銭」(主に年代物の古い絵銭)に魅力を感じ、それだけにこだわって集めるマニアックな収集家も少なくない。 絵銭の発行は、主に寺社仏閣や大店(おおだな)を構える商人(あきんど)達が、信仰や祝い事に用いたのが始まりだったようで、縁起物や御守り、魔除け・厄除けの授与品、サービス的な恵贈品として、信者や参詣者、お得意様向けに製作し、頒布や配布したものが民衆に広まったらしい。又、死者に手向ける「六文銭」の代わりに作られたとも言われているが、絵銭の大半は、財布入れたり、根付けのように煙草入や印籠、矢立など、懐中物にぶら下げて携えられるように、六文銭サイズ(ほぼ10円玉大)の穴あき銭である。  さて話は、この古い絵銭によく見られる、米俵を載せた馬の絵柄が鋳出された「駒曳き」(こまびき)と呼ぶものについてである。裏面(背)は無柄の事も「唐人駒曳き」(上載写真左)裏面の「寶」の字あるが、普通は「一」や「寶」、「宝」、「玉」等の一字が穴の上に入っている。他に「和銅開珎」など、さらに古い時代の鋳造銭や渡来銭の文字を、模して入れたものも作られている。 「駒曳き」にもいろいろな種類があり、馬だけのもの(例:跳駒・はねごま、勇駒・いさみごま)から、人や猿が俵を積んだ馬の手綱を曳いている姿を表現したもの、小槌や瓢箪などの道具類と馬がセットになったもの等々。  俵を積んだ同じ図式でも右曳きと左曳きがあり、背負っている米俵も一俵から数俵と多岐にわたる。 馬の曳き手も色々と違っていて、小僧のような馬子(馬子曳き)の他、「唐人駒曳き」や「猿駒曳き」「吉田駒曳き」などが主たる絵柄である。 ついでに、絵銭の材質をみると、古い物は青銅などの銅合金や鉄であるが、新しい物には真鍮や銅のほか、白銅や洋銀などの通貨用の合金も使われており、さらにメッキ品もあれば、希に純金や純銀製の貴金属もある。  形も、一番多い穴あき銭の他に、小判型や丁銀形、天保通宝を真似たもの、両替秤量の繭形分銅タイプと、様々絵銭の貴重品である「鍵稲荷」(カギいなり) ~ 鍵は金藏の鍵をあらわしているである。中には、お盆のような特大サイズのものもあるが、このての物は店先の「引き札」や何かの目印、あるいは風鐸(ふうたく)のように、軒先の飾りとして使われたのかも知れない。 絵銭の中には、絵柄や図形が無くて、「南無阿弥陀仏」や「大日如来」、「大福」のように、鋳出された文字だけのものもある。絵銭の裏面の文字も含めて主な銭文を調べてみると、   七福神、恵比寿、大黒、商売繁盛、成田本山、仙台、信州善光寺、  日光、出雲福神、伊勢大神宮三社、雪月花風、伏見稲荷、萬民豊楽、  不動明王、梅松天神、八幡太神 などであるが、神仏に拘ったものや縁起文字、豊穣富貴の祈願文字が多く見受けられる。文字の多くは漢字の四文字であるが、仮名だけのものもあり、お経やお呪い、梵字(阿字)や変体仮名、くずし字、さらに若い人達が使っている今日の絵文字のようなものまである。  現在も絵銭は製造されており、招き猫や布袋、福助、干支の動物などは、江戸時代からずっと作られ続けている。全国各地の神社の中でも、春日大社の福銭(「発祥至福」の文言入り)は、袋に入れて毎年授与されており、他でも独自に誂えた絵銭を供納金の返礼や、ご利益あらたかな御符札や御守に添えて頒布している所がある。「伊勢大神宮三社」の絵銭(裏面) 「伊勢大神宮三社」の絵銭(表面)
 我輩も、駒曳きや鍵稲荷(カギいなり)など数枚の絵銭を所持しているが、地元伊勢に縁の絵銭は、「伊勢大神宮三社」と「伊勢朝熊岳」の2種類しか持っていない。 絵銭は、ネット・オークションなどでは、古銭の中でも人気商品であり、「吉田牛曳き」など、特にきれいでレアなものは、プレミアムがついて高値を呼んでいる。大変珍しい「伊勢朝熊岳」の文字絵銭(表面) 「伊勢朝熊岳」の文字絵銭の裏面(背)


「志摩半島」の大きな観光絵銭 ~ 発行元は志摩市内と思われるが、発行年共に詳細は不明 「志摩半島」の観光絵銭の裏面 ~ 五円玉となっている(サイズは直径3.8㎝) 
 
 注)掲載画像の絵銭は、全て我輩こと、伊勢すずめの所蔵品である。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする