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開館40周年特別企画展 知られざる古代の名陶 猿投窯

2018年08月24日 | かんしょう
 愛知県陶磁美術館で開催中の開館40周年特別企画展「知られざる古代の名陶 猿投窯」を観てきました。




 2013年に愛知県陶磁資料館から改称して現在の名称になった、愛知県陶磁美術館。もう5年も経ってたんですね。
 今回の開催概要を読んでいて、陶磁資料館が開館した経緯を知りました。
 全国有数の窯業地である瀬戸だから陶磁器を紹介する場所があることは当然のように思っていましたがそれは現代の産業としての視点であって、本来、というか開館当時はこの場所の古窯である「猿投窯」の研究が目的だったんですね。
 今でこそ考古に分類される古い物にも美術的価値があるとされていますが、そういった価値観は戦後以降の考え方であり、それまでは工芸品という観点だけで美術的価値は認められていませんでした。縄文土器はその良い例で、1950年代に岡本太郎がその価値を唱えたり、海外で紹介した際に高い評価が得られたことで美術的価値が認められました。
 最近はそういう考え方が中国の富裕層にも広がってきて、大陸の古い焼き物から日本の仏像まで高値で取引されているのはご存じの通りです。
 とにかく、瀬戸焼や常滑焼、美濃焼などの源流に当たる「猿投窯」が学術的にも美術的にも価値のある窯であるのは間違いなく、その全容を名品の紹介による美術的観点と変遷を紹介することによる歴史の観点からという両面から理解できる構成になっていて、たいへん興味深い展覧会と言えます。
 私の住んでいる三重県も遺跡から猿投窯製の須恵器(野焼きに代わって窯で焼かれるようになった陶質の土器)が出土します。東海圏とは言え交通機関の存在しなかった時代にわざわざ運んだのか、すごいな、と思っていたのですが、同様に猿投の焼き物は全国で出土しており、九州や東北まで流通していたことに驚かされます。
 また、展覧会用にピックアップされているとは言え非常に美しい姿をした名品が多いことにも驚きました。
 特に自然釉(窯の中で降りかかった灰がガラス質の釉になる状態)が意図したかのようにバランスよくかかっていたり、ゆがみが一切なくてピシッとした口縁や流れるような胴部を持っていたりして、非常に高い技術を持った集団が窯を営んでいたことが分かります。後で学芸員さんがおっしゃっていましたが、この自然釉も経験によって窯の中のどの位置に置けば美しく灰がかかるかを計算して配置していただろうとのことでした。
 博物的な視点でいわゆる考古遺物のひとつとして捉えていた須恵器や瓷器(初期の陶器)でしたが、この展覧会を見たことで価値の多様性に気付けた気がします。

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