アバウトなつぶやき

i-boshiのサイト:「アバウトな暮らし」日記ページです

没後50年 河井寛次郎展

2018年01月06日 | かんしょう
お正月明けの5日のこと。パラミタミュージアムで開催中の河井寛次郎展を観てきました。





河井寛次郎は明治23年生まれの陶芸家で、柳宗悦や濱田庄司と共に、民藝運動を推進したことで知られています。
大正時代後期に、芸術品と対照的に「下手もの」と軽んじられていた身の回りの工芸品を「民衆的工藝=民藝」と名付け、価値を見出そうとしたのです。
実は私、民藝という言葉から河井寛次郎には泥臭いイメージを持っていました。
特に作品を観たこともないのにどうこう言うのも失礼な話で、これを機に河井寛次郎を知れたらと思い足を運びました。

5日の午前中に行ったのですが、冬休みなのに空いてること言ったら。のんびりまったり出来たので私としては大満足です。お正月明けって狙い目かも。
まったく予備知識がない状態で観に行ったので、新しい発見がたくさんありました。
まず、河井氏が天才肌で若いころから注目されていたことを知りました。
当初は中国や朝鮮の古陶磁の手法を再現するかのような技術の高さで注目されます。釉薬の研究が非常に高度で、天才の呼び声が高かったそうです。
その後、そういった自ら作陶の手法に疑問を抱きます。民藝運動を始めた頃のことで、実用を重んじた力強い作風へと変化します。
戦争を経て、戦後は独自の作風を確立し、独創性のある造形表現を展開しました。

さて、この晩年の「独創的な造形」なんですが、「卓抜した芸術性」ということで高い評価を得ているそうです。
が、、、私には正直「妙な形」と思ってしまう作品が結構ありました。
もちろん「楽しい」「美しい」そして「実用的」な作品の方が多いと思ったので念のため。
造形としては、私にとって特別なものではありませんでしたが、色彩の豊かさという点で目を見張るものがありました。
 
釉薬の研究で名を馳せただけあって、色彩表現が多彩です。
特に私が気に入ったのは、二彩、三彩といった黄色と緑の柔らかな美しさでした。三彩というと唐三彩のような作品を思い出す私は黄色に赤みを帯びた茶や鮮やかな緑が入るのをイメージしがちなのですが、河井氏の三彩は茶色の部分は締めとして扱っていて、黄色に混じる緑が柔らかで、全体の雰囲気がとても明るいのです。※リーフレット右下の《二彩双竜耳壺(山口大学蔵)》を参照。後期の「三色」はイメージが違います。

また、《青瓷鱔血葉文花瓶(リーフレット左上)》や《紅壺》のように辰砂の赤と青瓷の薄青緑のバランスが絶妙な作品も目を引きました。
青の表現も多く、いわゆる青瓷(青磁)のほかに、呉須釉のような黒味がかった深い青の美しい作品数が多いのが良かったし、碧釉は澄みきったセルリアンブルーが美しかったし、海鼠釉という青瓷とは違う温かみのある水色の釉薬が素晴らしいと思いました。特に海鼠釉に鉄釉で渦が描かれた《海鼠渦巻鉢》は、色も好きだけれどデザインも洗練されていてとても気に入りました。

同時期の作家である濱田庄司・富本憲吉と三人展を開催した時の作品録に「富本は模様を選び 河井は色彩を引き受け 濱田は形を擔(にな)う」という言葉があったそうです。
まさにその通り、彼らの作風を表現する言葉だと思い感心しました。

こうなると、少し前に開催されていた濱田庄司展を見逃したのが悔やまれます。。。
河井氏も濱田氏もそんなに好きでもないし、と思っていたけれど、じっくり見るとやはり感心するし心惹かれる作品にも出会えます。
近場で開催される展覧会は、ちょっとでも気になったら行っておかないと後悔するんですね。次は逃さないよう気をつけねば。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿