アバウトなつぶやき

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細川護熙 数寄の世界展

2008年03月07日 | かんしょう
 昨日、マックスバリュの入り口で偶然見つけたチラシ。
 ちょっと気になったので、仕事の帰りにパラミタ美術館へ寄ってきました。


▲これがそのチラシ(表)

 今回足を運んだのは「細川護熙 数寄の世界展」。
 みなさまご存知、元総理大臣の細川氏です。
 政界人として好感度の高かった細川氏ですが、功績と言うとちょっと思いつきません。どちらかと言うと細川家の出身という印象が強いのです。
 どんな作品かと思ってチラシの裏を見たら、なかなか良い。ちょっと紹介されているものだけでも趣のある雰囲気が伝わります。
 興味が湧いてしまいました。



 細川氏は60才で政界を引退した後、湯河原に工房を構えて「晴耕雨読」の生活を実践しているのだそうですが、本格的に陶芸を始めたのはその頃からだそうです。
 陶芸家の辻村史郎氏に師事し、3年後に一度個展を開催しているそうですが、今回は約10年目にしての展覧会のようです。

 何が感心したって、どれも品良く出来上がっていること。
 生業じゃなくても陶芸家に師事して10年間こればっかりやってれば上手になって当然なのですが、やはり作り手というからには出来上がりを思い浮かべられなければ作れませんよね。
 その点、さすが細川家の末裔。
 現代に生きるお殿様。
 幼い頃から本物に囲まれて暮らしてきた人ならではの、しっかりした美意識を感じられる作品ばかりでした。
 そして、楽しんで、作りたくて作ってるのがよく分かります。
 だって、作品が多岐に渡っているんですもん。
 高麗を焼くとなれば韓国から土を取り寄せ、時には現地へ赴くらしいので、伊賀や信楽もまた然りでしょう。
 今時、商売で作陶してる人は純粋にその土地の土だけをつかうわけではなくて、他所の土もブレンドして使っているのが普通です。
 作家さんならこだわりもあるでしょうが、趣味でそれだけの本格的な事が出来る人はそういません。
 写真で紹介されていた工房(=閑居)は本格的な窯を構えており、趣が深く建築も個性があり「私もそんなところに住めたら…」と、思わずうっとりしてしまうような悠々自適な生活です。
 成金(過激な言葉?)がそんな生活してたらやっかみたくもなるのですが、細川氏は血筋や歴史を感じるので、資産があっても「別世界」という感じでやっかむ気になれませんわ。

 基本的に趣味でやっているという姿勢がハッキリしています。
 パラミタの方がおっしゃってましたが、ご本人は親しい友人に贈るのは構わないのだけれど、作品を売るために作るのはイヤなのだそうです。
 しかし、つきあいが広いので「どうしても作品を譲って欲しい」という方が後を絶たず、仕方なくどこかのデパートの画廊(?)で作品を譲る機会を設けところ、1週間の会期なのに3日で完売してしまったらしいですわ。さすがやねぇ^^;

 陶芸の他には漆が数点と、書がありました。
 ワタクシ、書の良し悪しが分かるわけではありませんが…書は「よくまとまってる」という印象を受けました。
 選ぶ詩や言葉は分かりやすいものが多く、料紙までご自分で染付けするこだわりようだし、装丁も美しい。見栄えはかなりのものです。
 でも、力強さとか豪胆さなどに欠ける気はします。趣味でやってる人にとやかく言うつもりは全くなく、趣味としたら素晴らしい出来栄えです。
 ただ、そんな細川氏は陶芸も含め書も、色んな人から作品を作って欲しいと頼まれるそうです。(ご本人も、そういうものは気が乗らないと書いてらっしゃいます。)
 趣味でやってる人に作品を作って欲しいと頼むのって、人情としては分かるけど、本人がそれを望まなければ無粋なことなんだなぁと作品に見え隠れする人間のしがらみを感じてしまいました。こういう風に、その人の背景が見えてしまうのが作家の作品を観るのと違う点かな。
 その点を含めて面白かったのですが、その点がなければなかったで、立派な作品を観たと思える展覧会でした。

 全然関係ない話ですが、細川氏ってご自宅は東京にあるんですね。
 熊本に住んでるのかと思ってた…。
 まぁ、住まいと呼べる場所が別宅や工房含めて5ヶ所もあるらしいです。昔の大名の事情は知らんけど永青文庫のある東京に住んでるのが自然なのね。(永青文庫は細川家に伝わる文化財を所蔵しています。今の理事は護熙氏のはず…?)