10月3日、安倍政権は、
「日本環境安全事業株式会社法の一部を改正する法律案」
を国会に提出した。新聞記事よれば、この法律は、
福島県内の汚染土壌を保管する中間貯蔵施設の関連法案で、
使用開始後30年以内に県外での最終処分を完了させる、と書かれている。
福島県民のみならず国民にとって意義深い法案である・・・・ように、一見、見える。
法案の大問題。
汚染土壌を「30年以内に福島県外」で最終処分する、と決めた。だが、どこで最終処分するか、何も書いてない。
常識的に考えて、他県で最終処分場を作りたいと言っても、受け入れるところがあるとは考えられない。福島に作る以上に難しい。
歴史は繰り返しつつある。
(1)鳩山由紀夫・元首相の「最低でも県外」発言。
鳩山は、2009年の政権交代時に、普天間吉の移転先について、何の当てもなく大見得を切った。今も、この問題は混乱状態のままだ。
あの時は、嘘がばれるのが早かったが、今回は嘘と確定するには30年の時間がかかる。
しかし、何の見通しもないのに約束してしまった点で、嘘の程度は鳩山発言と同じだ。
(2)六ヶ所村の使用済み核燃料の再処理施設。
原発で生じた使用済み核燃料を預かって、再処理してそれをまた原発に戻して再利用する・・・・という建て前(約束)になっている。
しかし、仮に再処理を止めると言うと、それなら今六ヶ所村にある使用済み核燃料をすぐに全部引き取れ、ということになる。むろん、各原発の使用済み燃料プールは満杯に近く、それは不可能だ。だから、破綻しているとわかっているのに、核燃料サイクルのプロジェクトは止めることができない。
これから、数十兆円をつぎこもう、というとんでもない話になって行く。
今回の法律で、何の当てもなく「県外」最終処分を約束するのは、誠実でない。
これまでの自民党の前科を考えれば、30年間はたちまち過ぎ去る。
その後、毎年福島県に多額の資金を「迷惑料」として払い続ける。「嘘」をついたのだから、「慰謝料」込みとならざるを得ない。
今の沖縄のような不幸な状態を生み出す可能性が高い。
この法律の罪深さは、他にもある。
「日本環境安全事業」という会社は、ポリ塩化ビフェニール(PCB:発癌性のある有害物質)廃棄物を全国で処理する事業を行う特殊会社だ。この事業が終われば、この会社は廃止できる。
しかし、それだと困る人がいる。天下りしている環境省関係者ら3人のポストが一度になくなるのは、官僚にとってあってはならないことだ。
もともと「日本環境安全事業」は、平成28年に終わることになっていた。それをどんどん遅らせて、今年6月には、平成34年以降にまで引き延ばされた。
そこへ降って湧いた中間貯蔵問題。PCBとは何の関係もないが、この事業を行えば寿命は一気に30年後まで延びる。
さらに、今回の法改正で、医術開発など、かなり広範囲に事業を拡大できる条文まで追加した。
政治家たちは30年後のことなど、おかまいなし。
官僚たちは30年後の自分たちの生活のことまで考える。
結局、何があっても官僚だけはしっかり焼け太る。
原発事故も、官僚にかかれば利権拡大の絶好の機会なのだ。
□古賀茂明「中間貯蔵施設で官僚焼け太り ~官々愕々第127回~」(「週刊現代」2014年10月25日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~」
「【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~」
「【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器」
「【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ」
「【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~」
「【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~」
「【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~」
「【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~」
「【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~」
「古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ」
「【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」」
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」
「日本環境安全事業株式会社法の一部を改正する法律案」
を国会に提出した。新聞記事よれば、この法律は、
福島県内の汚染土壌を保管する中間貯蔵施設の関連法案で、
使用開始後30年以内に県外での最終処分を完了させる、と書かれている。
福島県民のみならず国民にとって意義深い法案である・・・・ように、一見、見える。
法案の大問題。
汚染土壌を「30年以内に福島県外」で最終処分する、と決めた。だが、どこで最終処分するか、何も書いてない。
常識的に考えて、他県で最終処分場を作りたいと言っても、受け入れるところがあるとは考えられない。福島に作る以上に難しい。
歴史は繰り返しつつある。
(1)鳩山由紀夫・元首相の「最低でも県外」発言。
鳩山は、2009年の政権交代時に、普天間吉の移転先について、何の当てもなく大見得を切った。今も、この問題は混乱状態のままだ。
あの時は、嘘がばれるのが早かったが、今回は嘘と確定するには30年の時間がかかる。
しかし、何の見通しもないのに約束してしまった点で、嘘の程度は鳩山発言と同じだ。
(2)六ヶ所村の使用済み核燃料の再処理施設。
原発で生じた使用済み核燃料を預かって、再処理してそれをまた原発に戻して再利用する・・・・という建て前(約束)になっている。
しかし、仮に再処理を止めると言うと、それなら今六ヶ所村にある使用済み核燃料をすぐに全部引き取れ、ということになる。むろん、各原発の使用済み燃料プールは満杯に近く、それは不可能だ。だから、破綻しているとわかっているのに、核燃料サイクルのプロジェクトは止めることができない。
これから、数十兆円をつぎこもう、というとんでもない話になって行く。
今回の法律で、何の当てもなく「県外」最終処分を約束するのは、誠実でない。
これまでの自民党の前科を考えれば、30年間はたちまち過ぎ去る。
その後、毎年福島県に多額の資金を「迷惑料」として払い続ける。「嘘」をついたのだから、「慰謝料」込みとならざるを得ない。
今の沖縄のような不幸な状態を生み出す可能性が高い。
この法律の罪深さは、他にもある。
「日本環境安全事業」という会社は、ポリ塩化ビフェニール(PCB:発癌性のある有害物質)廃棄物を全国で処理する事業を行う特殊会社だ。この事業が終われば、この会社は廃止できる。
しかし、それだと困る人がいる。天下りしている環境省関係者ら3人のポストが一度になくなるのは、官僚にとってあってはならないことだ。
もともと「日本環境安全事業」は、平成28年に終わることになっていた。それをどんどん遅らせて、今年6月には、平成34年以降にまで引き延ばされた。
そこへ降って湧いた中間貯蔵問題。PCBとは何の関係もないが、この事業を行えば寿命は一気に30年後まで延びる。
さらに、今回の法改正で、医術開発など、かなり広範囲に事業を拡大できる条文まで追加した。
政治家たちは30年後のことなど、おかまいなし。
官僚たちは30年後の自分たちの生活のことまで考える。
結局、何があっても官僚だけはしっかり焼け太る。
原発事故も、官僚にかかれば利権拡大の絶好の機会なのだ。
□古賀茂明「中間貯蔵施設で官僚焼け太り ~官々愕々第127回~」(「週刊現代」2014年10月25日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~」
「【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~」
「【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~」
「【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器」
「【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ」
「【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~」
「【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~」
「【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~」
「【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~」
「【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~」
「【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~」
「古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ」
「【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」」
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」