今年7月、モニタリング検査で、中国産の生鮮タマネギから、基準値超のチアメトキサム(農薬)が検出された。
二度、基準値を超えたので、8月8日に検査命令(全ロット検査)が出された。
チアメトキサムは、EUが昨年全面的に使用・販売を禁止したネオニコチノイド系農薬3種類のうちの一つだ。世界各地で発生しているミツバチ大量減少の原因ではないか、と推定したからだ。
日本や米国などでは、因果関係が特定されていない、として規制されていない。
日本では、野菜には幅広く使われているが、タマネギには登録されていない農薬だ。よって、タマネギの残留基準値は0.01ppmだ。ちなみに、
ほうれん草・・・・10ppm
小松菜・・・・5ppm
レタス・・・・3ppm
今回検出された量は0.07ppmと0.03ppmなので、直ちに健康に大きな影響があるわけではない。
問題はしかし、検査命令が実施された8月、中国産生鮮タマネギから、1か月間で17回も違反品が出たことだ。もっともい値は0.06ppmだったので、大幅な基準値超えではなかったが、検査命令になった途端に大量の違反品が見つかった。
日本ではタマネギに使えないことは、中国側も百も承知だ。
昨年は、届け出件数10,299件中123件についてチアメトキサムの残留農薬検査を行ったが、違反件数は0だった。
これは何を意味するか。
原因が特定できているのは、7、8月の19件のうち1件で、「隣接したサツマイモ畑からのドリフト(飛散)による汚染」だという。
ドリフト汚染でこんなに大量のタマネギが汚染されるだろうか。仮にドリフト汚染のせいなら、昨年1件も違反がなかったことが不思議だ。
日本に輸出する食品は、中国側でも検査している。その検査体制にも問題はあるが、日本の検査体制にも根本的な問題があるのではないか。
モニタリング検査は、届け出のあった総件数の7~8%(検査命令などを含めれば10%)程度を抜き取って検査するにすぎない。
届け出の件数についての話で、総量に係る話ではない。<例>1件の届け出(届出書類)が1,000箱の10トンだったとしても、そのうち1~2箱から500gか1kgを抜き取って検査するだけだ。
10トンのうち1kgでは、重量換算すると、1万分の1の検査量にしかならない。しかも、残りの約93%はまったく検査されない。数量からすると、ほとんど検査していないことになる。
これではすり抜ける違反品が多くても当然だ。
アイスランド産ベトナム加工の子持ちシシャモに汚物や殺鼠剤が混入していた事件は、箱さえ開ければ簡単に見つかっていた。
いかに検査されていないかの証明だ。
検査命令になれば全ロットの検査になるが、1ロットが10トンであれば、その1kg程度しか検査されない。
それでも格段に検査数量は増える。
根本的な解決は、政府が食の安全にどれだけの予算を投入するかだ。
中国製毒ギョーザ事件の時には検査体制にもっと金をかけろ、という声もあったが、今は公共工事優先で、本当に食の安全に関心があるのか、疑問だ。
国民の命・財産を守るのが国の責任だ。
せめて今の2倍程度の予算を食の安全に投入すべきだ。
□垣田達哉(消費者問題研究所代表)「もっと手間とお金をかけるべき 輸入食品の検査体制」(「週刊金曜日」2014年9月19日号)
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二度、基準値を超えたので、8月8日に検査命令(全ロット検査)が出された。
チアメトキサムは、EUが昨年全面的に使用・販売を禁止したネオニコチノイド系農薬3種類のうちの一つだ。世界各地で発生しているミツバチ大量減少の原因ではないか、と推定したからだ。
日本や米国などでは、因果関係が特定されていない、として規制されていない。
日本では、野菜には幅広く使われているが、タマネギには登録されていない農薬だ。よって、タマネギの残留基準値は0.01ppmだ。ちなみに、
ほうれん草・・・・10ppm
小松菜・・・・5ppm
レタス・・・・3ppm
今回検出された量は0.07ppmと0.03ppmなので、直ちに健康に大きな影響があるわけではない。
問題はしかし、検査命令が実施された8月、中国産生鮮タマネギから、1か月間で17回も違反品が出たことだ。もっともい値は0.06ppmだったので、大幅な基準値超えではなかったが、検査命令になった途端に大量の違反品が見つかった。
日本ではタマネギに使えないことは、中国側も百も承知だ。
昨年は、届け出件数10,299件中123件についてチアメトキサムの残留農薬検査を行ったが、違反件数は0だった。
これは何を意味するか。
原因が特定できているのは、7、8月の19件のうち1件で、「隣接したサツマイモ畑からのドリフト(飛散)による汚染」だという。
ドリフト汚染でこんなに大量のタマネギが汚染されるだろうか。仮にドリフト汚染のせいなら、昨年1件も違反がなかったことが不思議だ。
日本に輸出する食品は、中国側でも検査している。その検査体制にも問題はあるが、日本の検査体制にも根本的な問題があるのではないか。
モニタリング検査は、届け出のあった総件数の7~8%(検査命令などを含めれば10%)程度を抜き取って検査するにすぎない。
届け出の件数についての話で、総量に係る話ではない。<例>1件の届け出(届出書類)が1,000箱の10トンだったとしても、そのうち1~2箱から500gか1kgを抜き取って検査するだけだ。
10トンのうち1kgでは、重量換算すると、1万分の1の検査量にしかならない。しかも、残りの約93%はまったく検査されない。数量からすると、ほとんど検査していないことになる。
これではすり抜ける違反品が多くても当然だ。
アイスランド産ベトナム加工の子持ちシシャモに汚物や殺鼠剤が混入していた事件は、箱さえ開ければ簡単に見つかっていた。
いかに検査されていないかの証明だ。
検査命令になれば全ロットの検査になるが、1ロットが10トンであれば、その1kg程度しか検査されない。
それでも格段に検査数量は増える。
根本的な解決は、政府が食の安全にどれだけの予算を投入するかだ。
中国製毒ギョーザ事件の時には検査体制にもっと金をかけろ、という声もあったが、今は公共工事優先で、本当に食の安全に関心があるのか、疑問だ。
国民の命・財産を守るのが国の責任だ。
せめて今の2倍程度の予算を食の安全に投入すべきだ。
□垣田達哉(消費者問題研究所代表)「もっと手間とお金をかけるべき 輸入食品の検査体制」(「週刊金曜日」2014年9月19日号)
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