監督フランシス・フォード・コッポラ、主演マーロン・ブランド、アル・パチーノ、ダイアン・キートン……超豪華スタッフ&キャスト、に見える。今なら。
でも製作された当時は違った。ブランドのキャリアは下降線の一途をたどっており、パチーノとダイアンはまったくのど新人に近く、コッポラは一本もヒット作を撮ったことがなかった。彼が監督することになったのはイタリア系だったからにすぎない。
なにより、マフィアの存在がまだ一般的ではなかった。すべて、この「ゴッドファーザー」が“ファミリー”的なるものを観客に知らしめ、ブランドをふたたび名優の地位に押し上げ、パチーノ、ダイアンをスターに、コッポラを大監督にしたのである。
でも、作品評価自体は公開当時(特に日本では)高いものではなかった。長男ソニー(ジェームズ・カーン)がマシンガンでハチの巣にされ、ベッドの上に馬の生首が置いてあるというような残虐な描写が、特に東映やくざ映画を毛嫌いしていた“良心的”評論家に否定されたので。
現在、この作品は文句なく名画のひとつにカウントされている。久しぶりに見たらわたしも興奮。完璧な映画とはこれだ、とすら。弁護士トム・ヘイゲン(ロバート・デュバル)の物語としてもみごとなものだし。
Godfatherという名がしめすように、作品は『告解』『洗礼』といった宗教的イメージに縁取られており、凄惨な暴力シーンとの対比があざといくらい。
製作者ロバート・エヴァンスが言うように、コッポラは例によって途中で作品を放り出したのだとしても、「カサブランカ」と同様、期せずして傑作が生まれてしまったのだとしても「ゴッドファーザー」がすばらしい映画であることに疑問の余地はない。裏事情はともかく、いまも激しく心をゆさぶる名画だ。
そして、今度は最初から名画をつくろうと画策したコッポラが完成させたのが、あの「ゴッドファーザーPARTⅡ」。んもう全然違うタイプの傑作なのです。
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