事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「止められるか、俺たちを」(2018 若松プロダクション=スコーレ)

2019-02-21 | 邦画

凶悪」「孤狼の血」の白石和彌監督の新作……ということでこの映画に駆けつけたわけではない。とんがった日本映画には必ず登場する井浦新主演作だから、というわけでもない。「八重の桜」では地味な娘役だった門脇麦が、近ごろ大化けしたらしいからでもない。

若松孝二、足立正生、大和屋竺、沖島勲、田村孟、小水一男、松田政男、荒井晴彦たちがモデルとなった群像劇なんて、いったい誰が観るのだろう。これはもうわたしのような世代の、わたしのような映画好きが観なければおよそ客など入るまい、と責任をとろうと思ったからです(笑)。

1969年の原宿。ピンク映画の製作プロダクションである若松プロは、すでに「胎児が密漁する時」「犯された白衣」などの問題作で知られていた。やくざ上がりの若松孝二を中心に、とんがった連中が集結している。そこへ、助監督志望の女の子が現れ……

映画界が舞台だけれども、出演者で著名な存在は若松(あの端正なルックスの井浦新が演じているのがおかしい)、大島渚(高岡蒼佑)、赤塚不二夫(音尾琢真)ぐらいだろうか。あとは長いこと映画雑誌を読んできた(「キネマ旬報や映画芸術じゃだめなんだ」というセリフもあります)マニアにしか……

「若松プロの作品が、(思想のない)エロばっかりでいいのか!」

と大和屋竺(大西信満)は絶叫するけど、彼はその後「ルパン三世」のメインライターになるのだし、沖島勲は「まんが日本むかしばなし」の脚本を二十年近くにわたって書き続けた。荒井晴彦は脚本家として名声を獲得しながら監督たちとケンカ三昧。そして「映画芸術」の発行人となる。左翼への傾倒を隠さない足立正生(山本浩司)は日本赤軍に合流し、筒井康隆から

「あんなむずかしい文章を書く人」

と言われた映画評論家の松田政男(おしゃれな渋川清彦が演じています)は、その後キネマ旬報で精力的に書き続けることになる……そりゃ、こういう事情を知らなくても面白い映画ではあったけれども(門脇麦は、まさかあそこまで濡れ場をやってくれるとは思わなかったし)、知っていればもっともっと面白いんで、ちょっと紹介してみました。

若松はその後、大島渚の「愛のコリーダ」をプロデュースし、「突入せよ!あさま山荘事件」(原田眞人)が、警察側からあの事件を描いたことに激昂し、「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」を撮る。

田村孟は長谷川和彦のデビュー作「青春の殺人者」を書き、その長谷川はいまに至るも連合赤軍の企画を実現できていない。ああこんな話をしてたらきりがない。音楽はなんと曽我部恵一!

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