事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

グリーンハウス再建計画 ページ14 ~ 佐藤久一リプライズ

2008-03-20 | 映画

Greenhouse02 ページ13佐藤久一特集、事務職員部報版はこちら。
今度はメルマガバージョンです。

グリーンハウス再建計画」の一環として、この本にふれないわけにはいかない。酒田だけでなく、県下で大ベストセラーになっている。それどころか、北海道に住んでいる義姉が妻に「すごい本があるのよ!宅急便で送るから!」いや亭主が既に買ってますから。

 部報でふれたように、世界一の映画館→酒田グリーンハウス、日本一のフレンチレストラン→ル・ポットフー&欅をつくりあげた男、佐藤久一と、酒田という街のあまりの相似にたじろぐ。

 小都市の映画館を(世界一はオーバーにしても)一流の社交場に変貌させ、東京に移り住んだことをきっかけに料理の世界に耽溺。貪欲に吸収した知識と舌で、今度は酒田に当時としてはきわめてめずらしい存在だったフレンチレストランを、何はともあれ定着させた男。

 しかし反面、佐藤は女性関係のもつれから酒田を逃げ出したのであり(このあたりは、酒田出身の某経済評論家の経緯と似ている)、ル・ポットフーが赤字続きだったのは佐藤に“経営”という発想も才能もなかったからだ。その意味で、長男である久一に跡を継がせなかった蔵元「初孫」の選択は正しかったのだろう。次第に彼は酒に溺れ、高い理想と健康を失っていく。

 冷たい言い方をすれば、佐藤の一生は放蕩息子の典型だと言える。しかしその放蕩は、興行主、マネージャーとしてのあふれるセンスと背中合わせでもあった。だから彼が忘れ去られたのだとすれば(年長の酒田人たちは決して彼のことを忘れてはいないが)、それは街として彼の放蕩を受けとめきれなかった酒田の方に非がある。酒田には、そんな器、そんな活力がもう残っていなかったのだ。

 しかし、世界一の映画館と日本一のフレンチレストランが存在したという事実は消えない。回転扉の向こうにきらびやかな映画の世界があったという記憶はわたしのなかに今も鮮明だし、離反したとはいっても、佐藤とともに酒田に一流のフランス料理をもちこんだシェフは今も後進に指導をつづけている。街の力とはそんなものではないだろうか。名が失われたとしても、佐藤久一が残したものは、街のいたるところに今も息づいている。

もちろんページ15に続きます。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« グリーンハウス再建計画 ペ... | トップ | 「華氏911」( Fahrenheit9/11... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画」カテゴリの最新記事