第26回「明日なき暴走」はこちら。
登場人物が古今亭志ん生で、今回のタイトルが「替り目」。落語ファン狂喜。
「替り目」がどんな噺かてえと、車引きと無茶なやりとりをしております飲んべえの亭主が、女房に亭主関白なことを言いながら、実はベタ惚れであることがわかるというお話。
つまりは志ん生の私生活そのもの。彼の代表作はこれだとする人も多い。女房が美人であることを得意がりながら、おでんを買いに行った女房に「まだいたのかっ!」と狼狽するみごとなサゲ。その女房がお香々もなんもかんも「食べちゃった」という可愛さを志ん生は絶妙に演じた。
まさしくそのとおりに、長男(馬生)が誕生したのに産婆さんに払う金もなく、師匠からは例によって破門されている(兄弟子を柄本時生が演じているのがうれしい。柄本家からは今度は安藤サクラも出てくるんじゃないか。「ゆとりですがなにか」つながりで)。
彼はおりんさん(夏帆)に叱咤されて納豆売りをやるが、売り声もか細く、商売にまったくならない。このあたりは「唐茄子屋政談」そのまんま。で、反省した志ん生がぶつぶつ妻への感謝を語ったら「まだいたのかっ」な展開に。そして落語と違って奥さんはこう返して泣かせてくれる。
「あんたに、高座にあがってほしいから」
田畑政治は相変わらず精力的に動いていて、神宮にプールをつくらせることに成功。時代は金栗四三から田畑に移り変わっていく。ふたりで語り合いながら、出て行った四三のことを「まあ、なんだかんだ言ってもあの人は……まだいたんですかっ!」
「替り目」というタイトルがどちらの意味合いなのかといえば、もちろん「タイガー&ドラゴン」と同様に“どっちも”です。加えて、水泳界のスターも、旧世代から前畑秀子に移るというトリプルミーニングになっている。ため息がでるほど宮藤官九郎はうまい。
そしてそして、今回はなによりも泣かせの宮藤の真骨頂でしたよ。
兄の実次(中村獅童)が急逝。彼がこれまで四三に支援してきたことがフラッシュバックされ、大竹しのぶがみごとに……そうか、熊本の代替わりという意味もタイトルにはこめられているのか。すごいな第二部。いやしかし娘も帰省しているのに涙が止まらなくて往生しました。わたしは兄弟の物語に弱いんです。
第28回「走れ大地を」につづく。
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