きわめていかがわしいセミナーの主催者のもとへ、差出人不明の封書が届く。
「1000以下の数字のひとつを思い浮かべろ」
その人物は658という数字を選択する。
封書にはもうひとつ小さな封筒が同封されていて
「お前が選んだのは658だ」
驚愕。彼は恐れおののき、名刑事として勇名をはせた大学時代の同級生に相談する。彼はまだ若いが、すでにリタイアしており、しかもその主催者とは卒業以来まったくコンタクトをとっていなかったにもかかわらず。
今度は犯人(男の声か女の声か判然としない)が直接電話をかけてくる。もう一度数字当て。正解が玄関先に投函してある。
……はい、みなさんこの謎が解けますか?マジック好きの人なら、瞬時に言い当てることができるかもしれません。わたしも最初の数字当てはすぐに「あの手だよなあ」と思いました。
しかし、この主催者がまもなく殺されてしまうという段になって困惑。わたしが考えた解はそれだと成立しないので。
そしてこの殺人の現場には不可解な足跡が。雪の上に残されたこの足跡は、途中で忽然と消えてしまうのである。犯人はどこへ?
正直に申し上げます。めちゃめちゃに面白かったっす。こういう不可能犯罪を現実に落とし込むという、要するに本格ものって西欧で今でも成立してたんだ。ひとつひとつのトリックは、稚気あふれるものだけど、だからこそすばらしい。現代にシャーロック・ホームズものを甦らせるために、高齢の作者は実はたくさんの滋味あふれる設定を用意している。
どんなときもつきつめて考える性格(つまりは名探偵だ)のために、夫婦関係に不安を抱える男。彼は明晰きわまりないのに、妻の心だけは推理できないとか。
シリーズ第1作。はやく続きをお願いね文春。
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