事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

文学賞メッタ斬り!2

2008-11-06 | 本と雑誌

89194741 ……PART1はこちら

 村上春樹が芥川賞をとれなかった経緯について、当時の選評を引用してみる。候補作は「風の歌を聴け」

丸谷才一:村上春樹さんの『風の歌を聴け』は、アメリカ小説の影響を受けながら自分の個性を示さうとしています。もしもこれが単なる模倣なら、文章の流れ方がこんなふうに淀みのない調子ではゆかないでせう。それに、作品の柄がわりあい大きいやうに思ふ。

と英文学者である丸谷が激賞しても

瀧井孝作:外国の翻訳小説の読み過ぎで書いたような、ハイカラなバタくさい作だが……。このような架空の作りものは、作品の結晶度が高くなければ駄目だが、これはところどころ薄くて、吉野紙の漉きムラのようなうすく透いてみえるところがあった。

と、当時は丸谷才一よりももっと文壇で力のあった(いまでは信じられないことだけれど)瀧井の発言で蹴散らされている。

 同じようなことが現在でも行われている、と大森望と豊崎由美のコンビは主張している。選考委員のなかで、たとえば芥川賞の場合は石原慎太郎は常に世迷い言で若い世代を威嚇し、ポストモダンな作品をまったく認めない宮本輝によって(小川洋子や山田詠美が必死でフォローしても)真に“新しい”作品が受賞できない状況にあるではないか、と。それに、選評を批評するというネタもメッタ斬り!ではおなじみ。田中康夫によって「てにをはも満足に使えない」と酷評された石原慎太郎の選評はこうだ。

創作とは作家はあくまで己の感性で主題を捉えて表現する作業だが、それが作品として発表される限り読者という他者との何らかの関わり、それは感動や共感であったり反発であったりもしようが、今回の候補作品の大方は読者の代表の一人たる私にとっては何とも退屈、あるいは不可解なものでしかなかった。

……何を言いたいんだか。てにをはも間違いだらけだし。だいたい都知事やりながら選考委員をやり続けているあたりを都民も怒れよ。仕事しろ仕事(笑)。つまり大森~豊崎コンビが主張する選考委員の問題点は

・任期がなく、辞退するまで永遠に続けられる
・実作者だけの評価なので、文壇以外の論理が入りこみにくい
・数が多すぎるのでとんがった作品が評価されにくい

くわえて“候補作を読みもしない”委員の存在が話をややこしくしている。以下次号

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 文学賞メッタ斬り! | トップ | 文学賞メッタ斬り!3 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

本と雑誌」カテゴリの最新記事