文豪である以上に、経営者・編集者としての才能があったと思われる菊池寛(それ以上に性豪としてもすごかったみたい。ウィキペディアで調べたら小森のおばちゃままで愛人だったとは)。文藝春秋社を興した彼の最大の“ヒット作”が芥川賞と直木賞。1月と7月という雑誌が売れない時期に確実に注目を集めるコンテンツを生み出したセンスは、二つの賞が七十年以上も続いていることで証明されている。
で、この芥川賞と直木賞が近ごろちょっと変だ。
村上春樹、よしもとばなな、高橋源一郎、島田雅彦……そうそうたる面々。日本の文学界を背負って立ち、同時にアイドルでもある彼らの共通点は『芥川賞を受賞していないこと』。
横山秀夫、飯嶋和一、伊坂幸太郎……「この1冊」で何度も特集した彼らは『直木賞を辞退、あるいは拒否している』。
どうして彼らは賞を逃し、辞退するようなことになったのか。まずは二つの賞がどう決まるかを調べてみると、文藝春秋社の社員たちが下読みを行い、候補作を選定する(だから文春がからんだ作品が圧倒的に多い)。その上で選考委員が激論の末に○、△、×で投票し、受賞作が決定する……問題はこの選考委員たちにある。列挙してみよう。
芥川龍之介賞
池澤夏樹 石原慎太郎 小川洋子 川上弘美 黒井千次 髙樹のぶ子 宮本輝 村上龍 山田詠美
直木三十五賞
浅田次郎 阿刀田高 五木寛之 井上ひさし 北方謙三 林真理子 平岩弓枝 宮城谷昌光 渡辺淳一(津本陽が去り、宮部みゆきが加わることになっている)
……一流の文学者たち(例外もあるけどさ)である彼らは、はたして評価者としても一流なのか。こんな問題提起で喝采(と非難)を浴びているのが“読みの達人”である大森望と豊崎由美のコンビによる「文学賞メッタ斬り!」シリーズなのだ。以下次号。
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