事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

文学賞メッタ斬り!3

2008-11-06 | 本と雑誌

4891947543 PART2はこちら

 候補作を読まずに“選考する”ことで有名なのは渡辺淳一。長いものは読まないんだ、と自ら宣言している。天童荒太の「永遠の仔」のときは、編集者に口立てでストーリーを解説してもらって選考会に参加したとか。
 この人については石田衣良が爆笑のエピソードを披露している。

石田:去年の冬かな、新潮社のパーティで渡辺(淳一)さんと立ち話をしていて、「石田君、今度の直木賞の候補作なんだけど、ほんとに困ってるんだよ。君、想像できるかね。鹿がしゃべるんだよ」って(笑)「そんな本はないだろう!」って言われて「いやー、どうでしょうかね、渡辺さん」みたいな話だったんですけど、案の定、その本はダメでしたね。
豊崎:「鹿男あをによし」(万城目学)ですね。テレビドラマにもなったのに。しかしそんなことをどんどんバラしてしまう石田さんの今後が心配です。
石田:え、僕ですか?僕、バトンを渡されたんですよ。ある直木賞のパーティのときに渡辺さんと話していたら「なあ、石田くん。僕の後の作家はみんなモテないやつばっかりなんだよ」と。ポンと肩を叩かれて「君が頑張りなさい」と言われたんです。
大森:おお!!渡辺淳一を襲名するんだ。
石田:で、あまりに面白かったので、その場にいた北方謙三さんをつかまえて「北方さん、北方さん、渡辺さんが今こう言っていたんですけど」と言ったら、「おれはモテない作家か!」

……文壇ってば(^o^)。まあ確かに、芥川賞の場合は文芸誌や同人誌に載った短篇や中篇が対象なので選考委員の負担もそう大きくはない。でも直木賞の場合は単行本が対象だし、枚数制限もないから読み通すのがしんどいってのもわからなくはないけどね。でも、ちょっとびっくりするぐらいの報酬を受け取っているらしいんで、とりあえず読めよ渡辺。

 直木賞の方では、ミステリやSFではとりにくい状況にあるのもさみしい。横山秀夫の「半落ち」事件は前に特集したとおりだけど、選考委員のなかでミステリ作家が北方謙三ただひとりというのも偏っている。だから次回からの宮部みゆきには期待大。何度も何度も候補に挙げられながら、落選が続いている北村薫の処遇などは改善されるだろう(もう候補になることもないかなぁ)。

 なんだかんだ言って芥川賞と直木賞は文壇における最大のイベントだ。受賞作がその時代の小説を代表していることも事実なのだ。才能豊かな新人を発掘しろとは言わない。せめて邪魔はしないでくれ(^o^)

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文学賞メッタ斬り!2

2008-11-06 | 本と雑誌

89194741 ……PART1はこちら

 村上春樹が芥川賞をとれなかった経緯について、当時の選評を引用してみる。候補作は「風の歌を聴け」

丸谷才一:村上春樹さんの『風の歌を聴け』は、アメリカ小説の影響を受けながら自分の個性を示さうとしています。もしもこれが単なる模倣なら、文章の流れ方がこんなふうに淀みのない調子ではゆかないでせう。それに、作品の柄がわりあい大きいやうに思ふ。

と英文学者である丸谷が激賞しても

瀧井孝作:外国の翻訳小説の読み過ぎで書いたような、ハイカラなバタくさい作だが……。このような架空の作りものは、作品の結晶度が高くなければ駄目だが、これはところどころ薄くて、吉野紙の漉きムラのようなうすく透いてみえるところがあった。

と、当時は丸谷才一よりももっと文壇で力のあった(いまでは信じられないことだけれど)瀧井の発言で蹴散らされている。

 同じようなことが現在でも行われている、と大森望と豊崎由美のコンビは主張している。選考委員のなかで、たとえば芥川賞の場合は石原慎太郎は常に世迷い言で若い世代を威嚇し、ポストモダンな作品をまったく認めない宮本輝によって(小川洋子や山田詠美が必死でフォローしても)真に“新しい”作品が受賞できない状況にあるではないか、と。それに、選評を批評するというネタもメッタ斬り!ではおなじみ。田中康夫によって「てにをはも満足に使えない」と酷評された石原慎太郎の選評はこうだ。

創作とは作家はあくまで己の感性で主題を捉えて表現する作業だが、それが作品として発表される限り読者という他者との何らかの関わり、それは感動や共感であったり反発であったりもしようが、今回の候補作品の大方は読者の代表の一人たる私にとっては何とも退屈、あるいは不可解なものでしかなかった。

……何を言いたいんだか。てにをはも間違いだらけだし。だいたい都知事やりながら選考委員をやり続けているあたりを都民も怒れよ。仕事しろ仕事(笑)。つまり大森~豊崎コンビが主張する選考委員の問題点は

・任期がなく、辞退するまで永遠に続けられる
・実作者だけの評価なので、文壇以外の論理が入りこみにくい
・数が多すぎるのでとんがった作品が評価されにくい

くわえて“候補作を読みもしない”委員の存在が話をややこしくしている。以下次号

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