第26章「大日本帝国」はこちら。
「大日本帝国」とは違う意味で、愉しめない作品です。脚本笠原和夫、監督舛田利雄コンビの東映大作だから「二百三高地」「大日本帝国」と同じくくりということにはなっている。
背景は日露戦争、東郷平八郎に三船敏郎、山本権兵衛に丹波哲郎という布陣だから誰だってそっちのラインを期待する。
全然違いました。
まず、笠原さんは軍神である東郷平八郎をそのまま描いても仕方がないだろうと、今回はお偉いさんたちのドラマを抑えて、軍楽隊の青年を主人公にすえた。軍楽隊が戦闘に参加したのは日本海海戦だけだったので面白そうだと考えたのだそうだ。
そのラッパ吹きを演じたのは沖田浩之。彼の恋人が三原順子(いまの三原じゅん子)。この金八出身コンビ(その人気をあてこんだキャスティングであることは確実)がとにかく画面で映えないの。華がない、というか。
もちろんそれは沖田がどのような末路をたどったか、三原じゅん子が極右な国会議員になっていることを知っているからそう見えるのかもしれない。でもあの三原じゅん子が
「なんで国のためになんか死ななきゃいけないの!?」
というセリフを吐くとは、というお楽しみがありつつ、しかしはずまない。
戦艦三笠の人間関係も妙に陰惨。暴力的な砲員長が陰で金貸しをやっていて、同時に同性愛者だという設定も、いかな佐藤浩市とはいえ、しんどかったのではないか。
「坂の上の雲」と同じことをやっても意味がないと笠原さんは考えたのだろうが、こちらとしては秋山真之(横内正)の苦悩を期待したところだったのに。
わずかに見応えがあったとすれば、海軍のさまざまなルールがうかがえたことと、やはり三船敏郎がいるだけで画面が光り輝くということだった。前二作との最大の違いは、きっと製作費だったろうというのがうかがえる出来。あ、平幹二朗の明治天皇役は、異様に迫力ありました。
第28章「ヘラクレス」につづく。
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