中華人民共和国13億8千万、米国3億2千万、日本1億2千万……人口が国力を示すものではないにしろ、中国(とインド)の人口は圧倒的だ。でも映画に関して言えば、ハリウッドはこれまで市場としては日本を重視してきた。北米をのぞけば最も大きなマーケットだったからだ。
でもいまは違う。あの、偉大な人民たちが、所得増もあってアメリカの反革命的な作品も映画館で観るようになり、世界有数のマーケットがいきなり出現したのである。中国人が米帝の映画を見るなんて(笑)。
ということで「MEGザ・モンスター」。ワーナーとグラヴィティ・ピクチャーズ(引力影視だっけか)の米中合作。内容も中華味が濃い。巨大な鮫が襲来するのは中国、ヒロインは麻生祐未似の中国人(リー・ビンビン)、海底から鮫が浮上する理屈はこれまた中国資本のレジェンダリー・ピクチャーズが製作した「パシフィック・リム」と同様で……
この映画をとりあげた(そのセンスがすばらしい)読売の編集手帳では「この映画には『日本人』も登場する。その役回りは、今の日本を象徴しているのだろうか」と憎い紹介の仕方になっている。日本人を演じたのはマシ・オカで、彼は仲間を救うために自らを犠牲にするのだ。
まあ、こむずかしい話はともかく、この映画のとりえは鮫の巨大さだ。とっくに絶滅していたはずの体長25メートルにもおよぶメガロドンが、海中のラボに忍び寄るあたりの描写にわくわく。
このとんでもない敵に立ち向かうのがジェイソン・ステイサム。いつものように少し困ったような顔で、みごとな肉体と泳ぎを見せてくれます。さすが元飛び込み選手。
悪徳資本家が策に溺れるなど、ストーリーはひねりも何にもないけれど、そんなものを鮫映画にアメリカ人も中国人も求めちゃいない。白鯨もびっくりのラストに向けて一直線。少なくとも画面のなかで米中は仲良しです。鮫退治に関税はかからない。