Vol.44「攻撃命令」はこちら。
原題のTHE CONSPIRATORSは、策士とか、食わせ者という意味。複数形になっているのは、犯人と同時に、コロンボもまた食わせ者のひとりであることを強調しているのだろう。邦題に「結末」がついているのは、いわゆるコロンボの旧シリーズがここで完結しているから。
最終話だけに、やけにスケールの大きな話になっている。犯人はなんと詩人(クライブ・レビル)……とみえてその実体はアイルランドの過激派。裏切者を処刑したことで武器調達に詩人本人がかかわることになる。
アイリッシュが犯人なので、いかにもなセーターやブレザーがおしゃれ。アイリッシュパブもいい感じだ。だからおよそロスが舞台とは思えない(笑)。逆に、武器の密売人が過剰にヤンキーなのもみごとな計算。
被害者のそばに落ちていたボトルの位置、犯人のダイヤの指輪によってつけられるウィスキーボトルの傷、武器を故国に送るためにしかけたトリック……ことごとくコロンボによって謎があばかれるのだけれど、そのことに犯人は落胆しない。むしろ、好敵手の出現を喜んでいるかのよう。
そうなの。これはいわゆる名探偵VS名犯人の回。常にユーモアを失わず、しかし激情を内に秘める男ふたり。コロンボと犯人のかけあいは
「人にはふさわしき贈り物を」
「シン・フェイン(われらのみ)」
などの名セリフが楽しい。
そして最後に
「ここまで、ここを過ぎず」
これ以上飲まないようにとのボトルの傷を説明することばであると同時に、長大なシリーズの幕引きの意味もこめている。でもやっぱりアイリッシュウィスキーはおいしいので新シリーズも開始することになる。だいぶ、時間はあいたけれども。
ということで新シリーズのレンタル開始まで、「刑事コロンボを全部観る」もしばらくお休みです。お暇な方はVol.1から読み返してみてね。