んもう近ごろ色んなことがいっぱいいっぱいなので、何でもいいから映画が観たいと鶴岡まちキネに飛びこむ。
時間がちょうど「アジョシ」にぴったり。「冬の小鳥」のキム・セロンが出るやつね。相手はウォンビンか。弟キャラ、息子キャラ全開のあいつだな。すげー顔がよかったことしか……とりあえず観ましょうって。
ぶっ飛ぶ。
「スマグラー」とは違う意味の暴力描写満載。安藤政信のアクションは一種の記号だったし、それがスマグラーの魅力。しかしウォンビンがくり出す暴力は、明らかに情念がこもっていて、サブミッションを主体にして敵を無力化するあたり、どんな目的で体技を会得してきたかがうかがえてまっとうだ。
ソミ(キム・セロン)は、麻薬中毒の母親に育てられる孤独な少女。心をよせるのはとなりに住む質屋の青年テシク(ウォンビン)だけ。「アジョシ(おじさん)」とソミに呼びかけられてもテシクは一度も微笑むことはなかった。ソミの母親が麻薬がらみで組織とトラブったためにソミは誘拐され、テシクは運び屋に仕立てられる。しかし、テシクの隠された過去が明らかになったとき、組織は最悪の人間を選択したことに気づかされる……
キム・セロンはフランスに渡って映画監督になったんでしょう?まだ韓国をうろうろしているからまたこんなひどいことに(T_T)。誰からも愛されることを知らないために
「おじさんも私が恥ずかしくて知らんぷりしたんでしょ?でも嫌いにならない。おじさんまで嫌いになったら、私の好きな人がいなくなっちゃう」
そりゃこんなことまで言われたら、命をかけて救いに行かなきゃな。
それまで、鬼太郎ヘアで表情を隠していたウォンビンが、組織に立ち向かうために武装開始。パキパキに割れた腹筋を観客に披露し、髪はバリカンで刈り上げ(そのままモヒカンにしてトラヴィスになるのかとハラハラ)、臓器売買に手を染める悪辣な兄弟と、テシクの強さのために侠気さえ見せる殺し屋に挑む。
ウォンビンがとにかく魅せる。過去を白、現在を黒の衣装で統一。木村拓哉と斉藤和義を足して2をかけたぐらいかっこいい。対戦相手になる殺し屋も平井堅ばりのルックス。
兵役を不本意な形で終えたウォンビンにとって、この映画はファンへのマニフェストでもあるのだろう。これからは、誰かに頼るのではなく、頼られるウォンビンでいくのでよろしく、と。だからこそラストシーンのルパンとクラリスのような別れが効く。ちょっと、元気でました。
場内は韓流ファンのおばさんがけっこういる。「甘い人生」のときはどんびきしてたけれど、今回は残虐描写こみで受け入れているようだ。韓流おそるべし。そして、韓流ファンおそるべし。