You must promise me...to just survive. You won't give up...no matter what happens...no matter how hopeless.
(約束するんだ、生きるって。たとえ何が起こっても、どんなにつらくても、君はあきらめない)
……ラスト近く、レオナルド・ディカプリオが演じるジャックは、ローズ(ケイト・ウィンスレット)にこう言い残して死んでいく。
酒田の映画館(シネマ旭)においてひとりでこの映画を観ていたのはわたしだけ。この瞬間、女性たちはいっせいに隣の男の肩に頭をあずけたのだった。とっくに恋愛において現役ではなかったわたしは「んなろー」と思ったのでした。いわれなき反感。
この映画がうまいのはここからで、生き抜くことを決意したローズは、ディカプリオの手を離して、冷たい海に浮かんでいる死体からホイッスルを奪ってくちびるに当てる。
身体が凍っているものだから最初はほとんど音が出なかったが、次第に力強く鳴り響き、救助のボートが気づいて……
この時点で、なんでディカプリオの手を離すんだこの薄情女!という意見もあるらしい(笑)。とっくに死んでるってば。そこまでひねくれた見方をしなくても、この映画のラストにはもっと大きな論議がある。ラストで、ローズは死んだのかだ。
わたしは何の疑問も抱かずに「ああ、死んだんだな」と思った。
碧洋のハートという、忌まわしい沈没事故と、一瞬しか過ごしていなくても深く愛した男の想い出がからんだ宝石を、本来あるべきタイタニックのもとに返し、目を閉じた彼女に見えるのは、あの船に乗っていて、そのときに死んだ人たちの姿。
わたしは気づかなかったけれど、背後に見える時計は、タイタニックが沈んだ午前2時20分をさしていたのだとか。こりゃ、鉄板だよな。
ところが、映画の思い出話をしていたとき
「あのばあさんが死んだときさぁ」と安易に映画好きに話したら
「……死んだ?!死んでないでしょうローズ!」
え?以下次号。